経営者必読

「負けない経営」のためのヒント

「基本五欲」を生かせば、ビジネスの原動力になる

「孫子の兵法」から学ぶ、ビジネスを生き抜く知恵


部下の欲望のエネルギーを掌握し、「勢力」に変える

我々人間のモチベーションをかきたてる最大のエネルギーは「欲望」です。戦争も経済活動も機縁となるものです。
その欲望は生来五つあるといわれています。
それは「睡眠欲・食欲・性欲・金欲・名誉欲」をさします。この基本五欲の特性をしっかり理解しなければ無益な戦争
を起こしたり、守銭奴になる恐れがあります。
しかし、この欲望のエネルギーを掌握し、それを部下に適切に用いることによって彼らは見違えるようにすばらしい
「勢力」に変身します。

孫子曰く、「無法の賞を施し、無政の礼を懸け、三軍の衆を犯(もち)いて、一人を扱うが如くす」。
「法外なる暑い賞を施し、非常措置の命令を掲げれば大群の大部隊を用いても一人を使っているのと同じように思いの
まま動かすことが出来ます。」  と孫子も言っているように、人類の歴史は欲望の歴史と言い換えてもよいでしょう。
また、自分自身がこの特性に気づき、それを有効に用いたなら、
人はあなたを憧憬の念で迎えるのです。

基本五欲の特性とは


さて、「基本五欲の特性」についてお話します。

:欲に「睡眠欲」と言われるもので、人は楽をしたい、動きたくないという心に支配されています。
  現に、贅沢をするというのは、その大半が、じっとするためやいつでも眠ることの出来る態勢のためにお金をかけることを
  言うのです。
  高級住宅、高級家具、高級車、グリーン車など、どれを取っても楽をするためのものばかりですね。
  この欲望のままに惰眠を貪り、楽を求めていると、人から「怠け者」の誹りを受け、社会的に阻害されます。

:「食欲」は、それ自体が生命の根幹をなします。人類の歴史は食との戦いでした。
  そしてそれを克服したとき,より旨いものを求め、食文化が育まれました。
  やがて現代の日本人は食べられなくて病気になる人はほとんどいなくなり、糖尿病や肥満体など、食べ過ぎによる病気
  が社会問題化しています。
  聴くところによると、日本人が一日に食べ残す食料の量と、外国からの食料の輸入量がほぼ同じと聞きます。
  アフリカなどでは、飢餓に苦しみ餓死者が出ているにもかかわらず「飽食の時代」なのです。

:「性欲」は、神が子孫繁栄のため、我々生物に与えた神秘の営みです。
  しかし、人びとがこの快楽におぼれ風紀の乱れが生じた時、いつも社会は混乱の様相を呈します。
  また、文明がこの欲望に注目し結託したとき、思いもよらないパワーが出てしまいます。
  ダイヤルQ2、携帯電話の出会い系サイトやAVレンタルビデオなどがよい例です。
  これによってものすごい早さでVTRの機械が普及したのも事実です。
  コロンブスの一行が西インド諸島より持ち帰った風土病「梅毒」が、ヨーロッパ中に蔓延するのにほんのわずかな時間しか
  かからなかったのも、性欲の凄まじいエネルギーを物語るものでしょう。

:現代社会において経済社会と名を変えた「金欲」は、あらゆるものを金本位制に変えてしまいました。
  「お金を持っていなければ人に非ず」と思っている人も少なくありません。
  お金は物欲を誘発し、物欲に溺れた者はその止め処を知りません。
  欲望に限りなしと言われる所以は、金欲からもたらされるのです。しかしお金はその性質上、使い方を知らない人間に渡ったなら、
  その人間の精神までも腐敗させてしまいます。
  宝くじに当たった人のその後を追った記事を読んだことがありますが、その大半が、家族の間でその金をめぐって争いが起きたとか、
  勤労意欲をなくしてしまって堕落したなどといった顛末です。

:以上にあげた四つの欲望は歳とともにだんだん消滅していきます。
  老人になると睡眠時間は短くなり、食の細く、異性に対しても鈍感になりがちです。
  また、物欲も体の衰えと共に失せていきます。
  しかし、「名誉欲」だけは、より一層増すようです。この世に生を受けたその痕跡を残したいという願望は、尋常なものではありません。
  特に、経済的に成功した人に、その特性は顕著に現れるようです。
  しかし、名誉は人びとから与えられるものであって、自分が欲してもどうなるものでもありません。
  それがわかっていてもそれを打ち消すことが出来ないのは、人間の悲しい性なのでしょう。

 「睡眠欲」は楽をしたい、動きたくないという心。
 「食欲」は生命を維持するための基本
 「性欲」は子孫繁栄のための神秘の営み
 「金欲」は無限の欲望を生み出す
 「名誉欲」は歳とともに増す欲望


基本五欲を「リーダー必携の五力」に


このように、五欲を本能のままのエネルギーとして行動すると、他人はあなたを亡者的に感じ、快く受け入れてくれません。
亡者とは、とめどない欲望を持った人間のことです。その人間は舵のない船のように彷徨し、他人とは貪り争うおろかさを犯します。
しかし、神が与えたもうた人間の性質に、無駄なものや邪悪なものがあるはずがありません。これら基本五欲についてちょっとした考察をする
だけで、一見心惑わせ汚そうに感じるこのエネルギーを、世のため人のために用いるすばらしいパワーに変身させることが可能なのです。
その秘訣は、これら基本五欲を目的思考を持って迎え入れることにありました。

●睡眠欲:憂さを忘れ「智力」をつくる
 寝ることによって、世の憂さをみな忘れてください。寝るときぐらい安らかで平穏な時間を自分のものとするのです。
 忘れてはならないものがあるなら、しっかりとメモをしておき、あなたの頭は何もない空っぽの状態を作るのです。
 人の<器>は、寝ている間に作られるといいます。器は、何も中に入っていないからこそ器なのです。
 もし、何か入っていたら、その名で呼ばれます。
 例えば、コップにミルクが入っていたら、それはミルクであってコップではありません。器とは、「空っぽにしておくこと」でその機能が果たされます。

 特に頭の中を空っぽにすると、固定観念や既成概念がなくなり、抱えている問題に対するすばらしい解決法が自然に出てきます。
 それが潜在意識の作用なのです。
 あなたが、例えその頭脳では忘れてしまっても、あなたにとって重要であると潜在意識が判断したなら、自動的に回答が見つかるように人間は
 出来ているのです。
 それを「智力」といい、知恵を湧き出させる唯一の手段なのです。
 芸術家や発明家のアイデアも、この状態から生まれます。
 眠るときは憂さを忘れ、器を大きくして智力を作りましょう。

●食欲:「体力」をつくり、信頼を得る
 人は食べることによって活動エネルギーを得ます。
 よって、食べたら動かなければ肥満になってしまいます。
 身体の肥満、こころの肥満は、共に思考よりも行動することを優先させてしまうことによって起こります。
 「食べてから何をするか考えよう、儲けてから何に使うか考えよう」とした時、その人間は怠惰になり、動きたくなくなるものです。
 だから、私は常に食べ物を前にしたとき、「これを食することによって、次の行動の糧とする」と自分に言い聞かせます。
 例えば「おい! トンカツよ、お前は次の講演の言葉となって、聴衆に感動を与えるのだよ」といった具合に、常に目的意識を持って食べるのです。
 行動する人間は、周りから慕われ信頼されます。そして体力が培われていくのです。
 食べたエネルギーで体力を作り、目標に向かって行動します。そして、その行為によって信頼を得ることこそ、<食>本来の姿なのです。

●性欲:愛を喚起し「精力」を高める
 人には思春期というものがあります。この頃、初めて異性に目覚め、愛するというすばらしい感情を芽生えさせます。
 「寝ては夢、起きてはうつつの幻の・・・」とうたわれるように、この時期に一人の人間に対する思いを、<集中>という形で体験するのです。
 そして自然の感性は身体に性欲を喚起し、「精力」となって放出されます。
 精力とは、夢幻を見るまでの想念の集中力のことです。このパワーが相互に働くのを<愛>といいます。
 ビジネスにおいても、愛社心のある人間は精力的に仕事をします。つまり、集中力が備わっているのです。
 単なる性欲のはけ口として異性を求めるのは、畜生道に生きる亡者です。
 真っ当なる人間の性欲は、愛を喚起し、集中力を高め、何事も精力的に挑んでいくのです。

●金欲:忍耐・辛抱が生まれ「気力」があふれる
 「お金はいくらあっても邪魔にならないもの」とは、お金を持たないものの想像に過ぎません。
 現に争いの原因の最も多くは、お金が絡んでいます。
 昨今の自殺の増加も、借金がその原因の大半を占めています。
 お金はその性質上、苦労の上に手に入るようにできています
 また、安易に手に入れたお金は古来より「あぶく銭」といい、すぐに散霧していくのも心の法則のなせる業でしょう。
 人のわがままの根本である「好き嫌い」を言っていては、大金を動かすことは出来ません。
 また、気の合う得意先だけに入り浸っていては、商売の拡充はおぼつかないでしょう。よって金儲けには「忍耐・辛抱」が必要です。
 辛抱することによって、人間には粘りが出来てきます。その粘りは、人間関係を円滑に動かす原動力となり、そこから目に見えないオーラが
 噴出し、気力なって現れます。気力あふれる人間は、利他的で活力に富み、周りの人間を巻き込んでいきます。
 「金は天下の回り物」・・・お金がほしければ忍耐力を養い、そこから人間の本質を習熟して、人間関係の円滑化を図ることです。
 それが気力活性なのです。

●名誉欲:社会に貢献する心が生まれ、「丹力」を発揮する
 三歳児の頃から褒められると嬉しいという心が表れます。これがやがて欲望に変身し、他を蹴落としてまでも世間に認められようといった、
 ゆがんだ感性に成長します。
 現代社会はこのゆがみが極大化し、誰も尊敬できない、誰にも尊敬されない社会になってしまいました。
 名誉は世間から与えられるものであって、勝ち取るといった類のものではありません。
 また、人は一人では生きていけない生き物です。そこで有機的に結びついた<社会>というものを構成しました。
 有機的とは、生活力と生活機能を持ったもの同士が互いに関係しあうことで、より良い生活環境を生み出す作用のことです。
 だから社会貢献なくしては、他人から認められることはありません。
 社会に貢献することは、形ではありません。まず、その心構えが大切なのです。
 言い換えると、目標思考ではなく「目的思考」が重要なのです。
 つまり、その人間が「何のために」その行為をしているかということです。
 それが明快に目標と合致したとき、人の集合体である社会機構のメカニズムが理解できるようになります。
 そして、あなたは「丹力」という、人に対する偉大な影響力を持つことになるのです。

<図表2>
欲望を目的思考で「力」に変える
基本五欲   変化   潜在意識の作用   五力
  寝 ⇒ 忘れる  ⇒    器      ⇒ 智力
  食 ⇒ 行動   ⇒   信 頼    ⇒ 体力
  性 ⇒  愛    ⇒   集 中    ⇒ 精力
  金 ⇒ 辛 抱  ⇒  人間関係   ⇒ 気力
  名 ⇒ 貢 献  ⇒  社会機構   ⇒ 丹力

孫子曰く「善く戦うものの勝や、智名無く、勇功無し」。

「戦い上手な人が勝っても、その知謀が優れているという評判が出なくなれば、武勇による功績もありません」と孫子が言っているように、
本当に仕事の出来る人は名誉など求めないし、名誉欲は帰って不名誉を呼び起こす原動力なのかもしれないのです。
ここに「、述べたように、「欲望」はそこに目的思考を持つことによって、「リーダー必携の五つの力」を培う媒体となるのです。
寝ることから「智力」を、食べることから「体力」を、セックスから「精力」を、金儲けから「気力」を、名を惜しむこころから「丹力」をそれぞれ養い、
自信あるリーダーシップの礎としてください。<図表2>

(※文中の「丹力」は社会に対する影響力である「巻き込みのパワー」の意味です。

そのエネルギーは「理性・感情・欲求」という自己に存在する三つのこころがひとつになり、真心である「仁」が現れたとき、それと共振するように
体の中心にある臍下丹田から発せられます。
「胆力」という言葉がありますが、これは度胸のことで、意味合いが違います。「丹力」は筆者の造語です。)

仕事が「天命」になる条件

さて、常にリーダーにとっては、孫子の言う「五事:道・天・地・将・法」筆頭の<道>の大切さがよくわかっていただいたと思います。
あなたは毎朝、出社前に一番気分の落ち着く場所(廟)で、自分の目標とそれを手に入れる心構えである目的が一致しているかどうか,
自分自身に問いかけること(算)を日課としてください。
目標と目的が一致し、その心構えが社会貢献に向いているならば、あなたの体と心からは精気みなぎり、オーラに覆われ、周りを巻き込む
すばらしいすばらしいエネルギーを放出されていることでしょう。
そんな感性に到達した人は、仕事<Buijiness>が、孔子の言う天命<Mission>へと変化します。
そこにある行為はすべてが「利他的」であるため、多くの人望を得、社会からも重く用いられます。
しかし、欲望のまま熟考せず目標にひた走った人間は、目標と目的が一致しない「我利的」行為に陥ります。
利他的人間も我利的人間も、その本質は同じく「人間」であるので、周りに自分と同じ賛同者を求めます。
「利他的人間」は、他と共存し、また援助することで自分も成功し豊かになり、多くの同じ性質の人間の賛同を得ます。

アリババ・シンドローム

一方、「我利的人間」は、利害関係が一致したもの同士が協力し合い、一見利他的こういにみえますが、そのじつ、
自分に利のあることしか手助けはしません。
詐欺にかかる人間などは形の上では被害者ですが、心情的には詐欺師と五十歩百歩、やはり我利的こころが支配していたのです。
ですから相手が詐欺師であることを見抜けないのです。
欲望の法則を知らず、<利>のみを求めている人間には、詐欺師の甘言も仏の言葉のように響くのでしょう。
彼らは言います、「必ず儲かります」と・・・・。我利的こころが存在すると、人間の持つ最初の超能力「他人のことはハッキリ分かる岡目八目パワー」ですら、
失われてしまうのです。
また、別の例がアラビアンナイトに出てくる「アリババと四十人の盗賊」の物語です。
四十人の盗賊は、盗みや強盗を働くときは一致団結し協力し合いますが、それは四十人の中だけのコミュニティに過ぎません。
四十一人目、すなわちアリババはすでに彼らの敵なのです。
そのうえ、四十人の盗賊がずっと仲良しということは決してありません。
欲望に限りなしの法則どおり、必ずいつか分け前争いが起きます。
桃太郎侍曰く、「この世に悪の栄えたためしはない!」のです。

このように、一触即発で仲間割れの危機に見舞われながら、
それに気づかない我利我利亡者の集団の栄枯盛衰のプロセスを「アリババシンドロ−ム」と名づけました。



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