ある日のメニュー


○ケンタッキーフライド マンボウ?

ある日、落石漁港に生きの良いマンボウが上がったと父からの電話、いるんだったら一緒に取りに行こうと言う、トラックに同乗し一路漁港へ・・・
市場の中には でっでーんと横たわった「マンボウ」様が・・・こっ こんなにデ・カ・イ・とはったじろぐ私に係の青年は構わずフォークリフトでトラックへと積み込む。  帰りの車中、父は刺身が良いと言い、私はどうやってサクに切るのか記憶の糸を辿っていた。
父の加工場に着き、フォークリフトで降ろしてもらったがどう見てもデカイ、先ずは子供と記念撮影、次に解体に入る頭は意外と小さく全体を覆う皮は3cmほど有りプラスチィッキーな軟骨状の皮膚で簡単にナイフが入る、肉質はクリーム色で水っぽいホタテを思わせる感じだ。
案の定、骨も軟骨で、臓物が非常に重たい、ヒレも使い道が解からないので、解体してみると歩留まりは悪く、重さの割には食せる部分が少ないのが欠点だった。
早速、持ち帰り、その夜に試食会を開いた。  五種類ほど、試作をしたがフライドチキンのように料理したものが一番の好評で、鶏よりもヘルシーなマンボウは唐揚げに限ると某新聞の支局長さんから御褒めの言葉を頂いた。

此処で作り方を説明しましょう。
まず、一口大に切った「マンボウ」を軽く、湯通しして、水気を切ります。  次に数種類のハーブと塩・コショーをし、ホンの少しのオリーブオイルを回しかけ、軽く揉みます。 少しおいて味と香りを含ませ、小麦粉を軽く叩いて、解き卵にくぐらせて、適温の油で揚げます。
揚げたてにレモンを絞って、さあ召し上がれ。
因みに、最初で最後の試食会だったので、「マンボウ料理」がお客様の食卓に登ったことはありません。  ご心配なく。



○スモークサーモン

銀鮭の素晴らしいものが手に入ったので、スモークサーモンを仕込んでみました。
鮭を三枚に下ろし、脇骨とヒレ等を切り取り整形した後、軽く塩をしておきます。  
その間にソミュールと呼ばれる漬け込み液の仕込をします。  
湯を沸かし、数種類のスパイスと香草・香味野菜を加え天然の塩で調味します。
ソミュールが冷えたら、塩を洗い落とした鮭を漬け込み、一晩冷蔵庫で寝かせます。
時折、鮭の上下を変えて味付けのムラが出来無いように注意します。
一晩ソミュールの中で眠った鮭は一段と身が引き締まり、良い香りが全身から立ち昇っています。
漬け込み液から、取り出して流水の中で軽く塩出しをします。  
これは表面と深部の塩分濃度を均一にするために必要なことです。  
この作業で大事な事は、塩出しの時間です。  
時間が長すぎると塩分が抜けすぎたりして、仕上がりも良くありません。 
この見極めが中々難しく、昔はよく失敗もしたものです。
この頃ようやく納得の行く仕上がりになりましたが何時やっても、緊張する時間です。

次に風乾の作業に入ります。
良く水気を切ったら、網に載せ特注の乾燥台にならべます。
虫などがつかないように、また、風とうしの良いように作ったもので、
一夜干等にも重宝しているもので、ここで二日ほど乾燥させます、

いよいよ、スモークに取り掛かります。
古いロッカーを改造した通称「燻製くん」で燻し始めます。
燻製くんは、優れもので、一度に骨付きの豚モモ肉なら四本、鮭なら一度に二十枚も、
仕上げることが出来るんですが残念なことに風が強い日には時々倒れてしまうという
欠点がたまに傷なのですが。
網棚に鮭を並べ、桜のチップに火をつけます。 
徐々に煙が増してきたら、ここでヒッコリーのチップと月桂樹の葉っぱを少し足して
一晩じっくりと燻していきます。
ここで気をつけなければならないのは、けっして炎を上げては成らないという事と
庫内の温度を上げすぎない事です。
温度が上がりすぎると折角の燻製が台無しになってしまいます。

一晩たって、ようやく出来上がり。
扉を開けるまで、ワクワク ドキドキ 緊張の一瞬です。
今回も無事仕上がりました。  安堵の時です。
こうして出来上がったスモークサーモンが食卓に登るのです。