9.虹別(2) 夫婦木への道

(ここは、8.虹別が好き!からの続きになっています。)

たかだか、木を見に行くだけなのに、意を決しなければならないのには、
少しばかり訳があった。
自分の愛車VFR400は、バリバリのレーサーレプリカだ。ダートを走るのがちよっと
苦手なのである。出来ることならダートは走りたくないのだ。
だから、ダートに入るときは少し覚悟がいるのだ。

問題の夫婦木へは、少なくとも2方向からのアプローチが可能なのだが、
今回は、開陽台から多和平(開陽台も、多和平も、そのうちに紹介します。)
に抜ける「裏道」から、アタックしてみることにした。

その日は、朝方まで降った雨も上がり、晴れていて、11月にしては、まあまあ暖か。
アタックには、絶好の日だ。

「裏道」をしばらく行くと例の看板があって、その看板の先には、
比較的整備されたダートがまっすぐにのびている。
これくらいのダートなら楽勝だな・・。そう思いながらダートに入った。

それにしてもミズナラ夫婦木ってどんなふうなんだろうか・・・。
思うに、大草原のなかに二つの大木が仲良くならんで立っている。
おそらくそんな光景に違いなかった。
遠くからでいいから、その光景を見てみたい。そう思った。

やがて、少し広い道にぶつかった。この道もダートだ。
例の看板を探してみたが、見あたらない。この道をはさんで、前方に
かなり荒れた道がのびている。まさか、あの荒れた道をいくのだろうか・・・。
たぶんそうだ。10秒ほどひきかえそうかどうか悩んだが、とにかく
行けるところまで行ってみることにした。

その道は、最悪だった。朝方まで降っていた雨のせいか、ところどころ
水たまりがあって、おまけに少しぬかるんでいる。
どうにかこうにか、いくつかの水たまりをクリアしたのだが、 今度ばかりはただじゃすみそうにないような、大きめの水たまりが、あらわれた。
これは、越せないかもしれない・・・。
しかし、せっかくここまで来たのに、引き返すなんてできなかった。

え〜いっ!ままよ〜!!

まさに意を決して水たまりに突っ込んでいった。

水たまりは、ぬかるんでいて、あっと言う間に前輪が滑って右に倒れ込んでいった。
右足で踏ん張ってみるも、倒れかかったバイクを支えきることはできない。
逆に反動でとばされてしまった。
ヘルメットのシールド越しの視界いっぱいに水たまりが広がる。
泥まみれなんていやだー!!
そう思った次の瞬間、水たまり脇の土の上に右肩から突っ込んでいた。
あわてて、起きあがって自分の「被害」状況を確認してみる。
ヘルメットのシールドの半分に泥がついてるのと、
右肩に土が付いている他は、濡れている箇所もない。いや、左足が少し
湿っぽい。左手もだ・・。でも、それほどでもない・・・。
信じられない、被害状況は、軽微であった。

バイクはっ!
振り向いた自分の目の前に、泥の中で横たわる我が愛車があった。
急いで引き起こして泥の中から引きずり出した。
バイクの被害は、これも比較的軽微で・・・、でも、
ピカピカだったカウルの一部が艶消しになってしまった・・・。

周りを見渡すと、すぐ近くに牛たちがいて、素知らぬ顔をしながらも
こっそりとこちらの様子をうかがっている・・・。
まさか、この水たまり、牛の糞尿まみれじゃっ!
あわてて自分の右肩についた泥の臭いを嗅いでみる。
とりあえずは、臭わないみたいで、ほっとする・・・。
こんなところで、転倒するとは、自分らしいな・・。
それにしても、なぜ、濡れずに済んだのか不思議でならない・・・。

少し落ち込んだ気持ちのまま、再びバイクを走らせた。
そこから100mほど走ると、壊れかかった少し大きめの看板があって、
「町指定木(ミズナラ)・・云々・・・」と書いてある。
目的地に着いたようだ。

看板によると、ミズナラ夫婦木は、樹齢400年らしいのだが、
あたりには、それらしい木が見あたらないのだ・・・。
ただ、看板の横に道のような物があり、わだちらしき物もついている。
その道は、100mほど先の林の中にのびている。

どうやら、夫婦木は、林の中にあるらしい・・・。

多大な犠牲を払ってたどり着いたのだから、引き返すわけにはいかない。
バイクを置いて、歩いて林の中に入ることにした。

この後は「道東の自然に思う」の、 9.ミズナラ夫婦木 につづく・・・。


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