居宅介護支援事業所業務実施状況アンケート結果の概要について

 担当課長会議の資料として出された、岩手県実施調査資料です。岩手県に限らず、全国的に共通する問題が指摘されています。


1 居宅介護支援事業の現況(平成12年4月24日現在、5月24日現在)
(1) アンケートの回収状況
   4月:188事業所(73%)5月212事業所(81%)

(2) 介護支援専門員一人当たりの利用者数


 平均34件であるが、標準(50件)を超える事業所は28事業所(13%)で、100件を超える事業所が2か所あった。4月調査時には、平均35件、標準(50件)を超える事業所が39か所、100件を超える事業所が3か所であったのでやや平準化しつつある。


(3) 課題分析の実施状況


 個々の利用者の特性に応じたケアプランを作成するため、プラン作成に先立ち課題分析を行うこととなっているが、4月調査時には、制度施行までに課題分析が間に合わないため暫定的に作成したケアプランが12,193件中5,861件(48%)あった。これらの暫定的なケアプランは見直しをする必要があるが、5月調査時でも暫定的ケアプランが13,578件中5,878件(43%)で課題分析に基づくケアプランの作成が進んでいないことが伺われる。


(4)ケアプランの実施状況の把握及び評価(複数回答。4月調査のみ)

介護支援専門員は利用者やサービス事業者との連絡を継続的に行いケアプランの実施状記を把握し、プランの変更や連絡調整をすることとなっているが、利用者には主に面接(91%)、電話(49%)により、サービス事業者には電話(93%)、ファックス(25%)、面接(24%)で連絡をしている。なお、プラン変更時の事業者への連絡が「不正確」(19か所)、「変更が多い」(6か所)と連絡の際に問題も生じている。


(5) 居宅介護支援事業所とサービス事業者との関係(5月調査のみ)


 ケアプランにはサービス事業者を位置づけることとなっておリ、利用者の多様な選択が可能なように複数サービス事業者との連携が望ましい。調査結果では、「6〜10事業所」(40.0%)、「11〜15事業所」(27.2%)、「5事業所以下」(18.5%)、「16−20事業所」(9.2%)、「20事業所超」(5.1%)の順となっている。


(6) 相談・苦情への対応


 5月調査では、相談・苦情がある場合の対応方法について書面で説明している事業所が184か所(93.9%)あり、利用者から相談・苦情を受ける内容は、居宅介護支援では「ケアプラン」(74.3%)、「モニタリング(継続的管理)」(19.7%)が多く、居宅サービスでは「サービス内容」(64.7%)、「利用料」(32.6%)が多くなっている。居宅サービスに関する相談・苦情を受けたときには、事業者の「窓口や訪問」(95.2%)により説明を行い、解決に当たっているが、県と国保連が作成した『相談・苦情解決システム指針』(平成12年1月)に基づき対応している事業所は、109か所(64.5%)に止まっている。(4月調査のみ)


(7) 居宅介護支援業務上の問題点(5月調査は複数回答)


4月調査では、「業務量過多・質の確保」(19.7%)、「自らの理解不足」(8.5%)、「利用者の理解不足」(7.4%)、「サービス事業者の理解不足」(5.3%)などが挙げられていたが、5月調査では、「介護報酬が低い」(24.9%)、「利用者が多い」(15.5%)、「国保連への請求事務」(13.2%)、「サービス事業者との連携」「利用者が少ない」(11.2%)、「主治医との連携」(10.9%)などとなっており、実務が落ち着いてきたものの、職務の評価や定例的業務に問題があるとしている。


2 問題点


調査結果から次のような問題点を分析することができる。


(1)利用者数の分極化
事業所には、民間法人、NPOなど多様な参入があったが、事業者指定の時期の遅速により、指定が比較的早かった特定の事業所に利用者が集中した傾向があり、介護支援専門員一人当たリ100件を超える専業所がある一方、皆無となっている事業所が16か所あるなど施行当初から数量的に分極化した。


(2)居宅介護支援業務の不徹底
介護支援専門員は、利用者に応じたケァプランの作成をするために、課題分析、サービス担当者会議(照会)、プランの説明・同意、プランの実施状況の把握・評価という一連の作業を行わなければならないが、@利用者が標準を超えてオーバーワーク、A月末〜月初の給付管理・請求事務のデスクワークで利用者に接触できない、B在宅介護支援センター併設などのため他業務が多忙、などの理由から、本来業務が停滞気味である。変更の連絡が不正確などというのも、サービス事業者との連絡調整不足が認識ギャップにつながっていると推測される。


(3)利用者へのサービス事業者情報の不徹底
ケアプランに位置づけられたサービス事業者数については、5事業所以下(18.5%)で、1−3事業所も20か所ある。このように、極端に限られたサービス事業者との関係でケアプランを作成している事例は、利用者への情報提供が不足し、実質的に利用者の選択幅を狭めていると思われる。


(4)相談・苦情への対応
相談・苦情のマニュアルとなる「相談・苦情解決システム指針』に基づき対応している居宅介護支援事業所が6割程度と低調であるが、利用者との契約関係に基づくサービス提供という制度の趣旨を踏まえ、浸透を図っていく必要がある。また、利用者からの相談・苦情が、ケアプラン、モニタリングと本来業務に関わっており、サービス内容についても多いことから、利用者への説明、理解、サービス担当者会議による事業者間の連携が十分に行われていないことも背景にあるのではないかと推測される。


3 今後の対応


(1)ケアプランの質の確保、モニタリングの必要性などから、介護支援専門員一人当たりの利用者数50とする現行の標準を遵守させるとともに、50を超えている事業所の管理者については、改善計画を立案させる。


(2)暫定的なケアプランの見直しの不徹底、課題分析の未実施、少数のサービス事業者の限定など不適切なケアプランについて改善していくために、ケアプランの評価方法をモデル的に検討し、また、介護支援専門員が自己評価を行えるように評価システムを普及する。


(3)介護支援専門員の職務倫理、質の向上を図るため、現任研修を実施し、制度理念に則した利用者本位リハビリなど医療、保健、福祉サービスの適切な利用、サービス担当者会議の開催による連携などの業務内容の理解を深める。


(4)施設併設や在宅介護支援センターでない独立した居宅介護支援事業所で、安定した運営が行えるよう国に要望する。

ホームに戻る