特定の行為への特化と指定訪問介護事業について
一いわゆる介護タクシーの取扱い一

平成13年2月14日に開催された全国高齢者保健福祉・介護保険関係主管課長会議 の資料として発表されたものです。要点は次の2点です。

タクシー会社が指定訪問介護事業を行う場合、身体介護や家事援助の行為を幅広く行っているのであれば問題はない。
この場合、移送(運転)そのものは訪問介護に該当しないため、介護報酬の算定対象にはならないが、乗車前・降車後の介助については介護報酬を算定できる(乗車前・降車後の介助時間を合算して取り扱う)。
通院介助等移送のための介助に特化している場合には、運営基準違反として改善指導等の対象となる。
ただし、保険者の判断で、基準該当サービスとして保険給付の対象とすることが可能。

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1.趣旨

○介護保険によって費用を賄うべきサービス範囲に関しては、介護保険制度が40歳以上の国民の保険料負担と公費負担によって運営されるものであるという制度の性格、保険給付の対象となる者とならない者との間の公平などに鑑み、厳に適正を期することが必要である。
○今般、指定訪問介護事業者の指定を受けたタクシー会社(いわゆる介護タクシー)について実態把握を行ったところ、通院介助等移送のための介助に極端に偏ったサービス提供を行っている実例が見受けられたところである。
○介護タクシーの例に限らず、指定訪問介護事業者でありながら、サービス提供内容が身体介護や家事援助のうち特定の行為に特化するような場合については、指定訪問介護事業の適正な運営の確保を図る観点から、以下のように対応することとする。

2.指定訪問介護事業の指定の取扱い


○介護保険における訪問介護については、介護保険法上、在宅の要介護者等に対し、その者の居宅において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行うサービスと規定され、それに対する介護報酬は、訪問介護に含まれる行為を身体介護と家事援助に大きく二分し、それぞれに含まれる様々な行為を総合的に行うことを前提として設定されており、制度上、総合的なサービス提供が求められる。また、かかる趣旨から、運営基準第4条において、「生活全般にわたる援助を行うものでなければならない」旨が基本方針として規定されている。
○したがって、指定訪問介護事業者にあっては、総合的なサービス提供に対応できる体制、事業運営が必要であり、指定訪問介護事業者が身体介護や家事援助のうち特定の行為に特化したサービス提供を行うことは想定されておらず、また、身体介護や家事援助のうち特定の行為に特化することが容易に想定される申請に対して、都道府県知事が指定を行うことも適当ではない。
○こうした観点から、近日中に、指定訪問介護事集の運営基準を改正し、特定の行為に特化するような事業運営を行ってはならない旨を明確にすることとしているので、各都道府県にあっては、指定申請時の審査や、そのような実態にある指定訪問介護事業者に対する指導監督につき、適切に行われるようお願いする。

3.基準該当サービスとしての取扱い


○前記のように身体介護や家事援助のうち特定の行為に特化することは指定訪問介護事業としては認められないが、一方、地域におけるサービス基盤整備の状況、二一ズの特性などによっては、特定の行為に特化した形態でのサービスを活用する必要があることも考えられる。
○そのため、2の運営基準の改正に際しては、併せて、保険者が、地域の実情に応じて、特定の行為に特化した事業者によるサービス提供を基準該当サービスとして保険給付の対象とすることができるよう、所要の省令改正を行うこととする。

4.介護タクシーの対処方針


以上のような指定訪問介護事業の取扱いに基づき、実態把握の結果も踏まえつつ、介護タクシーについて整理を行うと、
@タクシー会社が指定訪問介護事業を行う場合において、身体介護や家事援助の行為を幅広く行っているのであれば問題はない。
A通院介助等移送のための介助に特化している場合には、運営基準違反として改善指導等の対象となるが、保険者の判断で、基準該当サービスとして保険給付の対象とすることが可能となる
が、その概要は以下のようになる。
なお、今般の指定訪問介護事業の取扱いに関連する所要の通知、事務連絡(Q&A)等については、別途発することとしている。

(1)介護タクシーによるサービスの取扱い ○介護タクシーによる通院介助等を行う際、自宅から病院等までの運転中は、運転に専念することとなり、また、移送(運転)そのものは訪問介護に該当しないため、従来どおり介護報酬の算定対象にはならないが、乗車前・降車後の介助については、他の事業者による指定訪問介護と同様に、要介護者等にとって真に必要な介助が行われているのであれば、介護報酬を算定できる。
○また、通院介助等のサービス提供の実態に照らし、保険の対象となるサービス(乗事前・降車後の介助)と保険の対象外となるサービス(運転)とは一連性を有するものであり、乗車前・降車後の介助時間を合算して取り扱うべきものである。
(2)介護タクシーに係る指定の取扱い ○タクシー会社が指定訪問介護事業を行う場合において、移送を伴わないようなサービスも幅広く提供するなど、身体介護や家事援助の行為を幅広く行っているのであれば問題はない。
O一方、通院介助等移送のための介助に特化するような申請については、指定の対象とならない。
○指定後のサービス提供が実態として特化している場合には、サービス提供内容の多様化等所要の改善指導を行い、その後も改善が見られない場合には、指定の辞退の勧奨や指定の取消を行う必要がある。
(3)基準該当サービスとしての取扱い ○特化の理由によって指定を受けられない場合や、一旦指定を受けたものの特化により指定の辞退又は取消があった場合であっても、保険者の判断によって、特定の行為に特化した事業者によるサービスを、基準該当サービスとして特例居宅サービス費の支給対象として取り扱うことができることとする。
○介護タクシーによるサービスを基準該当サービスとして保険給付の対象とする場合であっても、移送(運転)中は保険給付の対象とならないこと等サービスの取扱いは、(1)と同様である。また、基準該当サービスとしての支給額については、各保険者において定めることとなるが、例えば、運転手兼訪問介護員の稼働時間のうち訪問介護員としての稼働時間等を勘案して定めることが考えられる。
(4)その他 ○以上は介護保険による訪問介護としての整理であるので、介護保険による訪問介護とは別に、要介護者等に対する移送サービスを、介護予防・生活支援事業や、介護保険の市町村特別給付の対象として実施することは可能である。

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