老企第59号
平成12年3月31日

各都道府県介護保険主管部(局)長 殿

厚生省老人保健福祉局企画課長

介護老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)について


 介護老人保健施設の運営については、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」(平成12年3月17日老企第44号)により、基準の趣旨及び内容を示したところであるが、この通知において、別に通知するものとしていたところである介護老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)については、下記のとおりであるので、御了知の上、管下市町村、関係団体、関係機関等にその周知徹底を図るとともに、その運用に遺憾のないようにされたい。


 介護老人保健施設入所者に係る医師たる保険医の往診又は保険医療機関への通院については、次のように取り扱うこと。

1 基本的考え方

(1) 介護老人保健施設は常勤医師が配置されるので、比較的安定している病状に対する医療については施設で対応できることから、入所者の傷病等からみて必要な場合には往診、通院を認めるが、不必要に往診を求めたり通院をさせることは認められないものであること。

(2) 介護老人保健施設が、介護老人保健施設入所者の診療のため保険医の往診を求めたり、保険医療機関へ通院させる場合は、施設の医師と保険医とが協力して入所者の診療に当たるべきであること。

2 介護老人保健施設の入所者の対診

(1) 介護老人保健施設の入所者を保険医療機関等へ通院させる場合には、提供している介護保健施設サービスについて必要な事項が記載されている入所者の健康手帳及び介護保険法第12条第3項に規定する被保険者証を携えて受診させること。

(2) 保険医療機関等においては、入所者の健康手帳等により、介護老人保健施設の入所者であることを確かめなければならない。

3 情報提供

 施設医師と保険医とが協力して入所者の診療に当たるためには、相互の情報提供が十分なされることが必要であることから、介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)及び老人保健法の規定による医療及び特定療養費に係る療養の取扱い及び担当に関する基準(昭和58年1月厚生省告示第14号)において次のように規定したものであること。

(1) 介護老人保健施設の医師は、入所者のために往診を求め、又は入所者を病院若しくは診療所に通院させる場合には、当該病院又は診療所の医師又は歯科医師に対し、診療状況に関する情報の提供を行うこと。(別記様式参照)

(2) 医師又は歯科医師である保険医は、施設入所者を診療する場合には、当該介護老人保健施設の医師から当該介護老人保健施設の診療状況に関する情報の提供を受けるものとし、その情報により適切な診療を行わなければならないこと。

(3) 医師又は歯科医師である保険医は、施設入所者を診療した場合には、当該介護老人保健施設の医師に対し当該施設入所者の療養上必要な情報提供を行わなければならないこと。

(4) 介護老人保健施設の医師は、入所者が往診を受け、又は入所者が通院した病院若しくは診療所の医師又は歯科医師から当該入所者の療養上必要な情報の提供を受けるものとし、その情報により適切な診療を行わなければならないこと。

4 老人診療報酬(老人保健法の規定による医療に要する費用の額の算定に関する基準(平成6年3月厚生省告示第72号))上の措置

(1) 保険医が介護老人保健施設の入所者を往診・通院により診療した場合、介護老人保健施設の医師への入所者の療養に関する情報の提供について情報提供料が設けられていること。

(2) したがって、介護老人保健施設で対応できる医療行為については、保険医からの情報提供により施設の医師が対応することとなるので、当該医療行為に係る保険請求は認められないこと。
 なお、介護老人保健施設で通常行えない医療行為については保険請求が認められるものであること。

(3) 介護老人保健施設に併設して設置されている保険医療機関等における保険請求は、それ以外の保険医療機関等と異なる取扱いとなっていること。

(4) 診療報酬算定の具体的取扱いは、別表のとおりであること。

5 診療報酬請求の取扱いについて

 介護老人保健施設入所者に対して併設医療機関の医師が、医療保険に対して請求可能な医療行為を行った場合には、診療報酬請求の明細書に、介護老人保健施設入所者である旨及び併設保険医療機関である旨を記載すること。

6 歯科医療について

 介護老人保健施設の入所者に対する歯科診療の適切な提供については、協力歯科医療機関からの歯科医の往診又は協力歯科医療機関への通院により確保されるものであること。介護老人保健施設の入所者に対して往診等を行う歯科医療機関からの歯科医は、介護老人保健施設の医師に事前に状況確認を行うなど、連携を図ることが必要であること。なお、歯科医療については、医科の場合のような往診、通院についての施設療養と保険診療の調整の措置は採られていないこと。

7 処方せんの取扱について

(1) 介護老人保健施設の医師は、保険医療機関における保険医ではないので保険薬局における薬剤又は治療材料の支給を目的とする処方せんを交付できないこと。

(2) 介護老人保健施設入所者を往診・通院により診療した保険医は、保険薬局における薬剤又は治療材料の支給を目的とする処方せんを交付してはならないこと。
 ただし、悪性新生物に罹患している患者に対し、抗悪性腫瘍剤を投与しる場合、人工腎臓又は腹膜灌流を受けている患者のうち腎性貧血状態にあるものに対してエリスロポエチンを投与する場合及び医科点数表の第2章第2部第2節の在宅療養指導管理料において算定することができるとされている特定保険材料及び当該指導管理料の各区分の注において加算として算定できる材料に係る費用はこの限りではないこと。


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