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染谷幸二・学級経営のページ44

入学式は出席番号1番を褒めよ
〜出逢いを演出する〜
 
 文中の生徒名は、すべて仮名です。

入学式が終わり30分間の学活が始まった。 
 教室の後ろには、父母の方々が立っていた。
 我が子の新しい生活に対する期待が、黒板を背にした私に強く伝わってきた。
 私は静に語り始めた。

 今日の入学式は百点満点です。
 花田秀樹君は真剣な目でステージを見つめていました。山田聡美さんは校長先生のお話を頷きながら聞いていました。
 皆さんの素晴らしい姿を見て、先生はとても幸せでした。
 先生は3月に別れた卒業生に「この学級よりもっと素晴らしい学級を作ることが、皆さんへの恩返しです」と約束しました。
 皆さんとなら、この約束が果たせそうな気がします。
 これも、最初に入場し、最初に大きな声で返事をした赤川弘貴君のおかげです。
 立派に責任を果たした弘貴君に拍手をお願いします。


 教室響き渡る大きな拍手の中、弘貴は恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
 4月7日、新しく中学生となる34名との出逢いがあった。
 私は自己紹介をした後、「先生をどこかで見たことがある人?」と聞いてみた。
 7名の手が上がった。
 亜里砂は兄が男子バレー部に所属していたこともあり、監督である私と大会の時に何度か顔を合わせていた。
 雄一と秀子は姉を3月まで担任していたこともあり面識があった。
 予想していた以上に、私を知っている生徒が多かった。
 中学入学は、期待よりも不安が大きい。
    「先輩は怖くないだろうか?」
    「担任の先生は優しいだろうか?」
    「勉強についていけるだろうか?」

 そのためには、生徒を具体的事実でほめることである。
 ほめることで、生徒と学級担任との間に信頼関係が生まれる。
 これに成功すれば、新しい生活への不安は1日でなくなる。
 生徒理解が十分でないこの時期は、出席番号1番の生徒をほめることから始めたい。
 「学級づくり」の第1歩は、ここから始めたい。
 
 出席確認をかねて、出席番号順に名前を呼ぶことにした。
 生徒には、次のように語った。

 入学式は、入場も新入生呼名も、このA組から始まります。
 A組がきちんとできればB組とC組はそれを見習えばいいだけです。
 A組が入学式成功のカギを握っています。
 その中でも、出席番号1番の赤川弘貴君の責任は重大です。
 弘貴君が大きな声で返事をすれば、C組最後の米川さんまで全員が大きな声で返事をするはずです。
 何事も最初が肝心です。
 先生は弘貴君に期待しています。
 弘貴君は、きっと大きな声で返事をしてくれるはずです。
 みなさんも、弘貴君に負けない大きな声で返事をしてください。

 
 弘貴の目は真剣であった。
 私は出席番号順に名前を読み上げた。 
 元気な声が教室に響いた。
 この声を聞きながら、私は「楽しい1年間が過ごせそうだ」と実感した。
 私は「全員合格です」と笑顔で言った。
 生徒の顔に笑顔があった。
 「誰の返事が1番良かったですか?」と尋ねた。
 「赤川君です!」という声が返ってきた。
 弘貴は私の期待に応えたのである。
 次のように話し、入学式の会場である体育館に向かった。

 入学式は約1時間です。
 中学校生活のスタートにふさわしい姿を見せてください。
 先生が皆さんにする初めてのお願いです。

 では、廊下に並んでください。
 
 入学式の翌日、1通の手紙をいただいた。
 昨日、仕事の都合で入学式に参列できませんでした。
 本来ならば、夫婦そろって先生に息子このことをお願いするべきところですが、申し訳なく思っています。
 主人が家に帰ってくるなり「今度の先生はいいぞ」を繰り返していました。
 大変失礼なお話で恐縮ですが、姉の入学式の時、担任の先生が「小学校では許されていたことも中学校では許されないことがある」という言葉を繰り返していました。
 それでなくても期待よりも不安を持って入学しているのに、これでは子供達の不安は増すばかりです。
 主人に学級で先生が話された言葉を聞き、安心しました。
 今、宿題として出された30秒スピーチの練習をしています。
 1年間、よろしくお願いします。


 「集団の力」は、生徒一人ひとりが安心できる教室から生まれる。
 「学級づくり」はそこから始まる。


  

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