驚くべき裁判官・調停委員の感覚
 裁判所は、貸金業者の最大の味方!

  私は、平成12年9月4日、多重債務者の相談を受けた。実直そうな夫は、警察官の息子として生まれ、これまで、自分でサラ金から金を借りたことなどなかったという。妻は、多少見栄っ張りなところがあり、交際費等で夫に『内緒』でサラ金からお金を借りていたという。

 平成10年9月ころ、夫は、クレジット会社から電話を受けた。車のローンの支払が遅れているという。驚いた夫は、妻に事情を聞いた。妻は、夫に多数のサラ金会社から金を借りていることを話した。サラ金会社の数は8社、クレジットは3社。夫名義のクレジット会社は2社。家族は、夫と、妻に、平成 4年7月生の長男(当時6歳)、平成6年6月生の次男(4歳)夫の手取り給与は、約23万円、妻は「主婦」であった。

 真面目な夫は、どうしていいかわからず悩んでいたところ、クレジット会社から、「裁判所で調停をしてもらったら支払やすくなる」と言われたという。

 夫婦は、函館簡易裁判所に行って、調停の申立てをした。

 夫は、仕事を休んで、簡易裁判所の調停の席に同席した。

 函館簡易裁判所は、出席した債権者との間の調停では、夫を利害関係人として入れて、夫が、妻が借りたサラ金からの借金を支払う調停を成立させた。函館簡易裁判所で、夫を利害関係人として入れて調停を成立させたのは、次の会社である。

債権者名
残元金
確定利息
毎月支払う金額
武富士
326、514円
8、212円
10、000円
アコム
256、973円

9、000円
プロミス
270、848円
12、133円
10、000円
アース
87、014円
2、188円
3、000円
函館専門店会
253、751円

7、000円
ジャックス
625,639円
48,523円
15、000円

 調停に出席せず、函館簡易裁判所が17条決定を行なったため、夫が利害関係人に入っていないのは次の会社である。

レイク
207、486円
10、435円
7、000円
三和ファイナンス
126、882円

8、000円
ダイエーOCM
680,433円
29,894円
18、000円

 夫名義の債務の調停の内容

ジャックス
1、034、524円
86,804円
25、000円

 調停調書がなく内容は、不明であるが、下記内容の調書が成立したという。

ライフ(夫名義・車輛ローン)

20、000円
アイフル(妻名義)

5、000円
パスキー(妻名義)

4、000円
合  計
3,870,064円
141,000円

 夫の手取り収入約23万円から、調停で成立した支払金額141、000円を差し引き、さらに、家賃5万円を差し引くと、残金は、4万円しかないこととなる。

 函館簡易裁判所は、これでは、生活ができないということで、たまたま、妻の妹が同居していたことから、妹から、毎月6万円を借金返済のため協力するということにしたという。

 私は、この相談を受けて、怒り心頭に達した。

 貸金業者は、支払義務のない第三者に支払請求をすることを、貸金業規制法によって禁止されている。もし、この法律に違反した場合には、営業停止等の行政処分を受け、刑事処罰を受けることとなる。

 かの有名な日栄は、契約書では保証人となっていた人に対して、厳しい取立をしたことを理由にして、行政処分を受け、担当者は、実刑判決を受けた。

 裁判所は、完全な多重債務者となっている債務者が、債務確定調停の申立てをしたら、なんの責任もない夫を利害関係人に入れてくれている。

 このような「甘い汁」を知ったサラ金や、クレジット会社は、多重債務者となった債務者に対して、「裁判所に調停を申し立てれば、支払やすくしてもらえるよ」と助言するだろう。

 私は、函館簡易裁判所の庶務課長に電話をした。なぜこのようなことをするのかと。

 課長は、「債権者から夫を利害関係人に入れてほしい」と言われた場合には、そのようにするという。

                                      

 皆さん、どう思いますか。

 裁判所の調停委員は、学識経験豊かな人であり、法的知識を持ち、社会常識に沿った解決を図るべきではないだろうか。

 調停が成立するためには、裁判官が調停の内容を確認し、調停が成立することとなる。裁判官は、貸金業規制法を知らないのだろうか。貸金業規制法がなかったとしても、利害関係人として支払義務のない人を入れるというようなことは、絶対にしてはならないのではなかろうか。このような裁判官に裁判を任せるということのおそろしさは、計り知れない。

 私は、この事件では、どこにその怒りをぶつけていいかわからないほどだ。

 裁判所を相手に国家賠償訴訟を提起するほかないと考えている。