貸金業規制法は、調停には関係がない?

 貸金業規制法には、取立規制が法制化された。

 第一次サラ金地獄(昭和53年)、第二次サラ金地獄(昭和57〜8年)と呼ばれる時代があった。高金利・暴力的取立・過剰融資が、その特徴とされた。そして、貸金業規制法が制定された。この法律の特徴として、金利の引下げ、過剰融資禁止、そして、取立規制があげられる。本来、支払義務のない第三者に請求することができないことは、当然である。

 しかし、サラ金地獄の中で、全く返済能力を無視した過剰融資を行い、多重債務者の親族に理不尽な取立をするという悲劇をなくすために、取立規制が法制化され、その内容として、「法律上支払義務のない者に対し、支払請求をしたり、必要以上に取立への協力を要求すること」が禁止され、それに違反した場合には、行政処分が課され、刑罰が課されることとなった(6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金)。記憶に新しいところでは、日栄はこの規定に違反したとして厳しい処分を受けた。

 ところで、調停において、利害関係人として、新たに保証人にさせられたとして国家賠償訴訟を提起している事件において、国は、次のように主張している。

「貸金業規制法の貸金業者に対する規制の在り方が、原告ら主張のとおりであるとの前提に立つとしても、それは、貸金業者の調停外の場面での行動に関して規制したものであることは明らかである。調停委員会が調停に現れた一切の事情を総合考慮して、債務者以外の利害関係人の参加を認めてその者との関係も含めた調停案を成立させることは、貸金業規制法によって禁じられているものでもないし、その法の趣旨に反するものでもない」

 調停委員の陳述書によれば、「債務額からすれば、支払原資が若干不足していること、また債権者の姿勢等からしても、やはり保証人が必要となる事案であるとの判断からその点の検討が必要であった。」という。

 調停委員の事前調査によれば、妻の債務約380万円、夫の債務約158万円という多重債務者の債務について、夫婦が相互に連帯保証人となって支払うとの調停を成立させたということになる。  松山簡易裁判所の調停事件陳述書には、「援助してくれる人を同行してください。同行できない場合は、電話等で連絡できるようにしてください。」との記載がある。又、高松簡易裁判所に関する国賠事件では、書記官が、「特定調停不成立直後であるから、なんらかの新たな事情、例えば、援助者が見つかったということでもなければ調停を成立させることは難しい」と説明した、と述べている。

夫婦は、離婚すれば、赤の他人である。
経済苦から離婚する者は非常に多い。
保証が原因となって自己破産する者も極めて多い。
裁判所は、裁判官は、調停委員は、どんな考えを持って調停をしているだろうか。

 日本全国の貸金業者さん、クレジット会社さん、銀行さん、裁判所で調停をすれば、不良債権が一転優良債権となりますよ!と思うのは私だけだろうか。