松山地裁管内簡易裁判所の違法調停に関して国家賠償訴訟を提起する準備進む



 A子(昭和17年5月生・59歳)は、平成2年7月20日、夫に死別した。

 A子には、長女B子(昭和47年9月12日生)、次女C子(昭和49年9月16日生)、三女D子(昭和51年3月6日生)がいた。夫死亡時、長女は、17歳、次女は、15歳、三女は13歳であり、高校生が2二人、中学生が一人であった。夫が生きているときは、夫の手取り月収約24〜5万円と、A子のパート収入が10万円弱であり、毎月少なくとも二人で30万円の収入があった。しかし、夫が死亡し、遺族年金となった。遺族年金は、月10万円余であった。A子の収入と合わせても、ようやく20万円というところであった。

 A子の夫は、死亡する一年前に銀行から200万円を借りていたため、相続債務として残ったが、娘3人は、未成年者であり、学業にあったことから、妻であるA子が毎月2万円ずつ支払っていた。

 A子は、子供たちの教育資金や、夫の残した債務の支払などのために、平成4年ころからサラ金から金を借りるようになった。平成10年迄懸命に支払っていたが、大手サラ金会社から、調停をすれば、支払やすくしてもらえると言われて、簡易裁判所に調停の申立てをした。A子が、調停前に、毎月支払っていた金員は、一月7万円位であった。

 A子が、調停で支払うよう決められた毎月の支払額は、83,500円であった。調停する前よりも、支払額が増えてしまった。調停に提出されたサラ金からの取引明細をもとに、利息制限法で元本充当計算を行うと、次のように6件の内、3件は、過払い、3件は、幾らか残るものの、その残る金 額の合計は255,961円になる。

 その結果、次のようなことがわかった。

債権者名利息制限法
による残金
調停調書上の債務額
1マルフク153,660円570,592円
2ユニマットレディース−124,329円325,262円
3ニッシン−289,502円68,169円
4アイフル−254,706円293,551円
5武富士22,167円571,524円
6エルピス80,134円96,153円
−492,710円1,925,251円
1+5+6= 255,961
2+3+4=−668,537

調停で将来の利息18%をつけて支払う場合の支払総額を計算した結果、調停に決められたとおりに支払った場合には、次のような金員を支払わねばならないこととなる。

1マルフク570,592円
2ユニマットレディース426,568円
3ニッシン83,251円
4アイフル293,551円
5武富士571,524円
6エルピス106,254円
2,051,740円

 A子は、調停の結果、サラ金関係で、次の損害を被った。

2,051,740円−255,961円=1,795,779円

 A子の夫の相続債務の関係には、さらに大きな問題がある。

 A子の夫が死亡した時点で、妻であるA子が2分の1、子供達は、2分の1を3人で分けることになるから、一人当たり6分の1を、それぞれ相続することになる。
 四国総合信用は、A子の夫が銀行から借りていた債務について平成4年に金1,168,953円を銀行に代位弁済した。

 A子は、娘達が未成年であったことから、四国総合信用に対して、毎月2万円ずつ支払いをしていた。

 支払いをしていたことから、長女・次女・三女は、父親が借金を残して死亡したことを知らなかった。A子が、調停を申し立てたところ、裁判所では、相続人である娘3人にも支払ってもらわねばならないと言ったという。A子は、裁判所に言われるままに、娘3人の委任状を裁判所に持参した。

 平成2年に死亡した父親の借金は、5年の経過により商事時効が成立する。

 四国総合信用が代位弁済をした平成4年からでも、満5年を経過した平成9年には商事時効が完成する。従って、娘たち三人の関係では、相続債務は商事時効が完成しているので支払義務はないのではないかと思われる。にもかかわらず、裁判所は、娘達に対して支払えと調停に代る決定で決めてしまった。

 調停申立て時点までに、A子は、四国総合信用に金478,953円に支払っていた。そのため、調停申立て時点での残元金は、69万円に減っていた。



 つまり、娘たち3人は、調停の結果、裁判所は、四国総合信用に対する父親の債務の残額が、残元金69万円と、遅延損害金101万6427円の合計170万6427円であると認めた。その3分の1は、568,809円となる。
 即ち、結婚した娘達は、自分達は全く知らなかった8年前に死亡した父親の借金を、父親の死亡後8年後になって568,809円も支払わなければならなくなったのだ。

 妻であるA子の相続分は、2分の1である。
 従って、A子の相続債務は、四国総合信用が代位弁済した額の半額である金584,477円となる。そして、調停申立て前までに、A子は、金478,953円を支払っているから、調停申立て時点での債務は、次のようになる。

584,477円−478,953円=105,524円

 従って、A子は、調停において、前記金105,524円を支払えばよいとの調停が可能であった。にもかかわらず、A子は、裁判所の調停の結果、求償金残金69万円と遅延損害金1,016,6427円の合計金1,706,427円の支払い義務を課せられたのだ。

裁判所って何?

 A子は、女手一つで、未成年の子供3人を懸命に育てた。毎月、働いてえる給料は、多くて10万円、平均して8万円前後だという。平成4年から平成10年迄懸命に支払をしてきた。

 A子は、裁判所は、法律に従って、自分達のような法律の素人のために、支払い安くしてくれるところと思っていたという。

 司法は、国民の基本的人権を護る砦であるはずである。

 しかし、この現実に、どう答えればいいのだろうか?

 A子は、マルフクに対して、調停で決められたように懸命に支払いをしてきたという。
 A子が、調停後、マルフクに対して支払った総額は、金32万円になる。しかし、調停で決められたように支払うことができず、支払いが4回目から遅れたことから、その後は、すべて、遅延損害金の36%を支払わねばならない状況に陥っている。

 マルフクの残元金498,770円の年36%の遅延損害金は、年間で179、557円であるから、一月の遅延損害金は、金14,955円となる。そのため、毎月16,000円を支払っても、元金に入金される分は、ごくわずかの金額だ。
 マルフクは、私のところに、A子の借金は、次のようになっていると言ってきた。

残元金498,770円
遅延損害金175,322円

 A子の借金は、今後、裁判所で決められた金額を支払い続けることによってなくなることはないと思われる。

 A子は、信じていた裁判所に酷い目にあわされたことについて、その責任を追及する訴訟を提起する決意をした。