2007年1月8日
賢い消費者になることはできるだろうか?

サイト掲載: 2007年 1月 9日

 消費者教育の必要性が叫ばれて久しい。
 しかし、消費者被害は、ますます悪質になり、被害の回復はますます困難になっているように思う。
 私は、いろいろな消費者被害の相談者に対して、「あなたと同じような被害に会わないようにするためには、どうすればいいと思う?」と聞く。
 どうすればよいか、いろいろな答えが出てくる。いろいろと勉強して、賢くなるというふうに答える人もいる。
しかし、私は、「賢い消費者になることはできない」と思っている。
なぜって、消費者を被害に会わせる人は、ますます巧みになり、次ぎから次へと「ひどいこと」編み出すからだ。
  法律家といえども、新しい被害事例に遭遇して、「そんな被害もあるんだ」ということになる。
 「じゃあ、どうすれば消費者被害に会わないようにできるのか?」
私は、それは、「一人ではきめない。必ず家族に相談する。そして、専門家に相談する」ということしかないと考えている。
 そのため、相談者には、せめて、1ケ月に一度でいいから、家族で1時間、テレビを消して、なんでも話し合ってください。
 話し合う癖をつけてくださいと頼むことにしている。
 日本では、「沈黙は金、雄弁は銀」と言われ、おしゃべりは「悪い評価」を与えられてきた。
 日本では、今でも「忠臣蔵の世界」が幅を聞かせていると思う。精神構造がそのようになっているのだ。
忠臣蔵の世界は、自分が正しい考えを持ち、それを達成するためなら、周りのものみんなを騙してもよいということなのだ。
 大石蔵之助の妻は、なんの理由もなく離縁されたし、周りの人々には、自分の真意を明らかにすることはなかった。もし、それを明らかにすれば、目的が達成できないという状況にあったからやむを得なかったのだろう。
 しかし、今でも、日本では、「仲の良い夫婦は、何もいわなくても相手がどう思っているかわかる」というような言い方がされる。
 しかし、幾ら「仲の良い夫婦」であっても、相手が何を考えいるのかは、言わなければわからないのだ。
 兄が妹を殺すという痛ましい事件が報道されている。
 3年間、兄妹の会話はなかったという。
 恵まれた家族、仲の良い家族として周囲の人から羨ましがられていた兄妹が、同じ家に住みながら3年間、「会話」がなかったということこそ、今の日本における最大の問題だと思う。
 相手の嫌がることを言わない、相手のことを思いやる、相手の欠点を指摘しない、ということは、それ自体としては正しいことなのだろう。
 しかし、それは、相当な年月をかけて大人になって初めて可能なことなのだと思う。
 成長過程にある子どもは、互いに「傷つけあって」「けなし合って」いろいろなことを身につけることができると思う。
 そのような機会を持つことなく大人になり、兄妹という関係で同じ家庭で生活していても、3年間も口を聞かないということは、…………。
 アメリカで幼児を幼稚園に通わせたという知人のサイトで、アメリカにおける幼児教育の話が載せられていた。
 3歳の子どもが、月1回、他の園児の前で、自分のことを話し、他の園児から質問を受けて答えるという。
 自分の好きなものは何か。嫌いなものは何か。どんな遊びが好きか。等々。 その中で、子どもは、自分が好きなものを嫌いな人がいる。
 自分が嫌いなものを好きな人がいる。
自分が好きな遊びを嫌いな人がいる。等々
ということを学び、1年もすると、自分のことをきちんと他の園児に話し、他の園児の話を聞くことができるようになったという。
特別、なんの訓練もなく自然に話すことなんかできるというように考えることは間違っていると思う。
日本人は「討論は嫌いだ」などと言っている場合ではない。
「話す」ことの大切か、「話す」訓練をして、広い人間関係を作らなければいけないと思う。
そして、それこそが、悪質な消費者被害を受けないための唯一の方法だと思う。