2007年10月2日
「先生、又、ヤミ金から金を借りました!」
「ヤミ金からの借金を繰り返すのはなぜ?」

サイト掲載: 2007年 10月 9日

1回目  平成18年、一回目のヤミ金からの借金があるということで相談にきた。

2回目  平成19年2月、ヤミ金24社から借りたということで相談にきた。

3回目  平成19年9月28日、ヤミ金20社から金を借りたということで相談にきた。

 B男は、一応、きちっとした会社に勤めている。会社からは、本社にヤミ金を利用していることがわかると解雇になるが、上司が理解してくれているという話であった。
 B男のヤミ金の借金は、一度目は、殆ど大半が払いすぎ状態であったが、二度目はほとんど過払いはない状態であった。
 3度目は、1社だけ2000円の過払いであったが、全く払っていないところか4社あり、それ以外は、借りた額の半額程度の払いであった。少ないところは1000円しか払っていないというところもあった。

 ヤミ金の整理について、「借りたものは返さなくてもない」「払ったものはすべて返してもらえる」という原則があるが、払った金額や過払いの金が現実に戻ってくることは非常に少なくなった。
 確かに、全く、ヤミ金のことを知らず、ヤミ金から金を借りて、ひどい目に会っている人については、そのような原則が大切だと思う。
 しかし、ヤミ金から金を借りて、それを費消し、借りた額の半額も返さず、全体としても、借りた額のほうが遥かに多いというような状態のとき、「借りたものは返さなくてもよい」「払ったものはすべて返してもらえ」という原則どおりに主張することは、私の倫理観が許さない。
 ヤミ金が、悪いということと、借りる側の倫理観との調和をどのようにとるか非常に困難だ。
 私は、B男の件について、平成19年2月のとき、借りた額を支払っていないヤミ金については、未払い額の半額を支払うという和解案を出して、理解してもらった。そのお金は、B男の父親に頼んで出してもらった。

 今回も、私は、B男の父親に相談をした。
 B男の父親は、「8月、お盆のときにB男が戻ってきて、ヤミ金から借りていてどうにもできない。なんとか助けてくれと言われて60万円を出した。もう、今回は、どんなことがあっても協力はできない」と言った。
 私は、B男に聴いた。
 B男は事実を認めた。
 B男は、8月に20数社から借りて親に60万円を払わせていたのだ。
 私は、「開いた口がふさがらない」という状態だった。
 B男の母親から電話がはいった。
「先生、もう、かまわないでください」ということだった。
 私は、ヤミ金に電話をして、事情を話した。

 ヤミ金の話。
「先生、詐欺じゃないですか?」
「詐欺だと思うのなら、警察に訴えてもらうしかないよ」
「訴えてもいいのですか?」
「借りたお金は返せないのだから、あなたが訴えるというのをやめてくれとは言えないわ」
「なんで、相談にのるのですか?」
「弁護士に相談したら、相談にのってもらえなかったと言って、自殺されたら困るしねえ」
「弁護士は、二度目には相談にのらないと言ってますよ」
「相談にのらないということで、相談にのらないですませられればいいんだけどね。B男さんにも、親や子供がいるからねえ。少なくとも、借りた先に電話をして、請求しないでくれということは頼むしかないのよ」
「そんな詐欺師みたいなものの相談にのるなんて弁護士としておかしいですよ」
「そう言われても、私としては、相談にのるほかない」
「なんでですか。」
「さっき言ったでしょう。弁護士が相談にのってくれなかったと言って自殺でもされたら困るからよ。この人もきちんと働いているのだからねえ。奥さんは離婚するとか言っているということだけどね」
 こんな話が延々と続く。

 私は、ヤミ金との話は、すべて録音にとることにしている。
 録音を聞かせたら、B男は、泣きだした。
「泣いたってどうにもならないでしょう?」
 怒鳴った。

 疲れた。

 ヤミ金の相談は疲れる。

 ヤミ金をやっている人はどんな気持ちでやっているのだろうか。と思う。

 不毛な仕事をしているようだ。

 B男が立ち直ってくれる日がくるのだろうか。

10月2日、B男から電話がきた。ヤミ金から職場に電話がきた。
私は、そのヤミ金に電話をした。
そして、二度とB男や勤務先に電話をしないようにと頼んだ。