オリエントファイナンス、行政処分の申立て

サイト掲載: 2018年4月24日


 由利弁護士は、株式会社オリエントコーポレーションは、自社の加盟店のセールスマンが暴力団員であり、その暴力団員が乗り回すための車をオリエントのクレジット契約で購入させられたという訴えについて、全く、なんらの措置もとらなかったことについて、平成30年4月、経済産業省商務情報政策局商取引監督課に行政指導の申立てをした。


行政指導の申立書

平成30年4月12日

経済産業省商務情報政策局商取引監督課  御中

 当職は、株式会社オリエントコーポレーションが、反社会的勢力に属する暴力団員が加盟店のセールスマンであり、そのセールスマンが乗り回すための高級車をオリエントの立替払契約で購入させられたという訴えについて、そのセールスマンが暴力団員であることを知っていたか、知らなかったとしても容易に知り得たにもかかわらず、なんらの暴力団員排除の措置をとらなかったことについて、行政指導されたく申し出いたします(割賦販売法第35条の3の21)。


第1 オリエントの加盟店のセールスマンが反社会的勢力である暴力団員であることを知っていた事実

  1. 株式会社オリエントコーポレーションは、中古車販売会社であるW社を加盟店としていました(現在も加盟店であるかどうかはわかりません)。
    W社は、平成28年2月1日、ハローワークの紹介で、Kなる人物を営業社員として雇用し、同年8月8日、使用期間満了で本採用はしませんでした。
    Kは、現役の暴力団員であります。
  2. Kは、W社のセールスマンとして当職の相談者に、銀行・クレジット会社等から多額の金員を借りさせた他、Kが使用する自動車を買えと強要し、下記のような契約をさせました。
    ・立替払契約日    平成28年5月26日
    ・自動車購入代金合計 金425万円
    ・頭金        金 50万円
    ・分割払手数料    金108万1556円
    ・分割支払金合計   金483万1556円
    ・購入商品
     登録    中古車 車名 LS(レクサス)
     年式    平成19年
     グレード  LS600hバージョンSLパッケージ
     排気量   5,000cc
     型式    DAA-UVF45
     車台番号  UVF45-5005123
     所有者名義 株式会社オリエントコーポレーション
     使用者名義 当職の相談者
  3. 当職の相談者は、Kに短期間(1ケ月程度の期間)に約1,000万円近い借財をさせられました。
  4. 当職の相談者は、Kから保険金詐欺紛いのことをさせられ、このままでは勤務先にも迷惑をかけるとして、勤務先を辞め、平成28年8月釧路警察に相談しました。警察では、相談者も詐欺罪になるなどと言い、告訴は受け付けませんでした。
  5. 当職の相談者は、当職に相談しました。
    当職は、平成28年9月10日、相談者の代理人弁護士として、オリエントコーポレーションにKから借財させられた経緯を説明するとともに、オリエントコーポレーションの加盟店であるW社のセールスマンは、暴力団員であること相談者名義で購入した高額の自動車を暴力団員であるKが乗り回していることから、Kを横領で告訴し、自動車を取り戻してほしい旨の依頼をしました。
    ところが、オリエントコーポレーションは、なんらの措置もとりませんでした。
  6. オリエントコーポレーションは、当職の相談者を被告として、前記立替払契約に基づく債務につき、「詐欺を理由とする」損害賠償請求訴訟を提起しました。
    訴訟提起日  平成29年1月10日
    事件名    自動車引渡し等請求事件
    事件番号   釧路地方裁判所帯広支部平成29年(ワ)第2号
    オリエントコーポレーションは、当職からのKから自動車を取り戻してほしいとの依頼に対してなんらの措置をとることなく、自動車引渡し等という訴訟を提起したのです。
    ・オリエントは、訴状において次のように主張しています。
     相談者は、当初N弁護士に、その後は、当職に債務整理を委任したとして、その旨オリエントに通知した。その説明によると、相談者は「スナックで知り合った『K』なる人物から「社長にならないかと言われて断りきれずに、引き受けた」とか、「K氏のいうがままに銀行からお金を借りたり、クレジットカード契約をしたりした」とか、「K氏が乗る車がないから買えと言われて自動車を購入させられた」とか、およそ通常人の感覚では理解しがたい内容の説明に終始している。
    ・いずれにしても、相談者は、Kなる人物と意思を通じ、自らは約定どおりの支払をする意思も能力もないのに、オリエントに対し本件立替払契約及び本件カードローン契約に基づく債務の連帯保証委託契約の締結を申込み、それぞれ与信を受けたものと認められ、相談者の各契約の申込みとその後の不払いは、オリエントに対する関係では、悪意に基づく不法行為を構成する。
  7. 当職は、前記訴訟の提起後、オリエントに対して、平成29年2月13日付けで大略下記内容の公開質問状を出しました(添付書類 公開質問状)。

    反社会的勢力に属する人物に契約させられたというような契約者の主張があった場合、貴社はどのように対応をとられることとなっていますか。
    当職は、立替払契約が悪質加盟店や反社会的勢力に属する人物により悪用ささる被害を防止することは非常に重要であると考えております。
    貴社の誠実な回答を求めます。
    オリエントは、当職の公開質問状について、オリエントの代理人の高石博司弁護士名で「ご回答」という名称の書面で次のような回答をしてきました(ご回答)。

     平成19年6月19日に犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして公表された『企業が反社会的勢力による被害を亡するための指針について』と題する、いわゆる政府指針に則り、社内規定の整備等を行うとともに、加盟店基本契約及びクレジット契約にそれぞれ反社会的勢力排除条項を設けるなどの措置を講じて参りました。
     したがいまして、ご質問にあります「反社会的勢力に属する人物に契約させられたというような契約者の主張があった場合」につきましても、基本的に、上記政府指針の内容を踏まえた対応を行うこととなりますが、個別案件における対応につきましては、当該事件の事実関係等にもよりますため、当社としての対応を一義的に申し上げることはできません。
  8. オリエントは、当職からの「本件車両について、Kを被疑者として横領もしくは詐欺を理由として告訴しなかった理由を明らかにされたい」との釈明に対して、次のように答えています(第1準備書面)。

     相談者は、Kが暴力団員であるとか、相談者がKにだまされたとかいった事情を、あたかも所与の前提のようにして述べるが、オリエントは、それらの事情を一切関知しない。オリエントには、Kなる人物が、どこの誰であるのか、全くわからない。ましてや、相談者とKなる人物との関係など知る由もない。相談者の言い分のみが正しいものであるとの前提にたって、事情を知らないオリエントに対して「K」なる人物を刑事告訴せよなどと要求すること自体、度を越した要求である。
  9. 被告は、被告の加盟店であるW社の営業社員であるKが反社会的勢力である暴力団員であるとの情報を得ながら、なんら反社チェックをしなかったことが明白であるばかりか、Kが反社会的勢力である暴力団員であることを知っていたにもかかわらず、原告がそのことを証明することができないものと考え、あえて、このような主張をしたとしか考えられません。
  10. 相談者は、平成29年2月20日、釧路地方裁判所帯広支部に破産の申立てをしました(釧路地方裁判所帯広支部平成29年(フ)第19号)。
    破産決定    平成29年3月23日
    免責決定    平成29年6月22日
    免責決定の確定 平成29年7月20日
  11. 当職は、オリエントが提起した前記訴訟において、相談者が「破産をして免責決定を得た」ことを理由として、免責対象となると主張しました。
    ところが、オリエントは、相談者とオリエントとの間の契約は、「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条2号)であるとして非免責債権にあたると主張しました。
    なお、オリエントは、破産管財人の調査を引用し、「相談者がKから騙されたとか、あるいは脅されたとかいった事実は、相談者の破産手続きにおいて何一つとして認定されていない」と主張し、相談者のオリエントに対する債権は悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権であり、非免責債権であると主張しています。
  12. 相談者は、平成29年12月20日、釧路地方裁判所帯広支部の弁論において株式会社エス・ピー・ネットワークによる反社チェックによりKが暴力団員であることを明らかにしました。
  13. オリエントの加盟店であるW社は、平成29年12月22日、釧路地方裁判所帯広支部による調査嘱託に対して、W社が、Kが暴力団員であることを雇用した後疑っていたとして次のように回答しました(裁判所の調査嘱託の内容とW社の回答書)。
    調査嘱託事項1
    a. W社が、Kを使用した事実の有無
     回答 Kを雇いました。
    b. aの事実がある場合の雇用年月日
     回答 平成28年2月1日
    c. Kを雇用・雇い止め等した事実の有無
     回答 平成28年8月8日使用期間満了にて本採用なし
    d. cの事実がある場合の解雇・雇い止め等の年月日
     回答 平成28年8月8日
    e. cの事実がある場合の解雇・雇い止め等の理由
     回答 Kの客層が暴力団関係者の様な雰囲気が多かった。
        (辞めた後に暴力団関係者とわかる)

    調査嘱託事項2
    Kが暴力団員である(又は、過去に暴力団員であった)と認識している(又はそのような疑いを持っている)か否か。
     回答 暴力団員であることは認識している。

    調査嘱託事項3
    2の回答が「認識している(そのような疑いを持っている)というものの場合、そのように認識する(疑いを持つ)に至った時期及びその理由(具体的な経緯)
     回答 当職から電話をもらい確信しました。

    調査嘱託事項4
    Kが以下のa、bの契約に関与したか否か。
    a. 相談者とW社との間の別紙自動車目録記載の自動車の売買契約(平成28年5月25日締結)
     回答 関与しました。
    b. aの売買代金の支払に関して締結された、相談者と株式会社オリエントコーポレーションとの間の立替払契約(平成28年5月26日締結)
     回答 関与しました。

    調査嘱託事項5
    4の回答が「関与した」というものの場合、当該関与の具体的内容
     回答 車両販売の仕方について学んでもらう為、Kに契約などは任せました。
    W社がKに受けた被害
    ・未回収95万円 回収の話をすると脅しともとれる暴言
    ・買収した車が実は走行不明車で値打ちがない。

    調査嘱託事項記載の自動車目録
     車名   レクサス(契約書記載名称LS)
     年式   DAA-UVF45
     車台番号 UVF45-5005123

第2 株式会社オリエントコーポレーションが、とらねばならない措置

  1. 反社会的勢力遮断について
    ・平成19年6月19日、法務省は、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」を発表した。
     即ち、同指針は、反社会的勢力による被害を防止するための基本的な対応を取りまとめたものである。
    ・同指針は、反社会的勢力による被害を防止するための基本原則として次の点を掲げている。
     〇 組織としての対応
     〇 外部専門機関との連携
     〇 取引を含めた一切の関係遮断
     〇 有事における民事と刑事の法的対応
     〇 裏取引や資金提供の禁止

    ・基本原則に基づく対応の主なものは、次のようになっている。
    1. 反社会的勢力による被害を防止するための基本的な考え方
      反社会的勢力による不当要求は、人の心に不安感や恐怖感を与えるものであり、なんらかの行動基準等を設けないままに担当者や担当部署だけで対応した場合、要求に応じざるを得ない状況に陥ることもあり得るため、企業の倫理規程、行動規範、社内規則等に明文の根拠を設け、担当者や担当部署だけに任せずに、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する。
    2. 反社会的勢力とは取引関係を含めて、一切の関係をもたない。また、反社会的勢力による不当要求は拒絶する。
    3. 反社会的勢力による不当要求に対しては、民事と刑事の両面から法的対応行う。
    ・平素からの対応
    1. 反社会的勢力とは一切の関係をもたない。そのため、相手方が反社会的勢力であるかどうかについて、常に、通常必要と思われる注意を払うとともに反社会的勢力とは知らずに何らかの関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であると判明した時点や反社会的勢力であるとの疑いが生じた時点で、速やかに関係を解消する。
    2. 取引先の審査や株主の属性判断を行うことにより、反社会的勢力による被害を防止するため、反社会的勢力の情報を集約したデータベースを構築する同データベースは、暴力団追放運動推進センターや他企業等の情報を活用して逐次更新する。
    ・有事の対応(不当要求への対応)
    1. 反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、当該情報を、速やかに反社会的勢力対応部署へ報告・相談し、さらに、速やかに当該部署から担当取締役等に報告する。
    2. 反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、担当者や担当部署だけに任せずに、不当要求防止責任者を関与させ、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する。その際にはあらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに刑事事件化を躊躇しない。特に、刑事事件化については、被害が生じた場合に、泣き寝入りすることなく,不当要求に屈しない姿勢を反社会的勢力に対して鮮明にし、さらなる不当要求による被害を防止する意味からも積極的に被害届を提出する。
  2. 内部統制システムと反社会的勢力による被害防止との関係
     会社法上の大会社や委員会設置会社の取締役会は、健全な会社経営のために会社が営む事業の規模、特性等に応じた法令等の遵守体制・リスク管理体制(いわゆる内部統制システム)の整備を決定する義務を負い、また、ある程度以上の株式会社の取締役は、善管注意義務として、事業の規模、特性等に応じた内部統制システムを構築し、運用する義務があると解されている。
  3. 2009年10月、福岡県暴力団排除条例がう成立した後、約1年半の間に全国47都道府県で暴力団排除条例(暴排条例)が成立した。
     暴排条例においては、事業者に対しては、契約時に相手方等が暴力団関係者でないことの確認をするよう求めたり、暴力団関係者へ利益供与を禁止するなどの規定を定めている。
  4. 経済産業省 商務情報政策局 商取引監督課は、「割賦販売法(後払分野)に基づく監督の基本方針を定めている(平成28年7月11日改正施行)。

    • 監督の基本方針の策定において、悪質な加盟店がクレジット取引を利用する事例や不適正な与信ないし過剰与信が行われる事例等を踏まえ、「支払可能見込み額調査」「加盟店調査」を義務付けている。
    • 信用購入あっせん業者に対する監督として、・-2-1-2に反社会的勢力による被害の防止の項を設けている。
      平素より、反社会的勢力との関係遮断に向けた体制整備に取り組む必要があるとされている。
      反社会的勢力とは一切関係を持たないよう、相手方が反社会的勢力であるかどうかについて、常に、通常必要と思われる注意を払うとともに、反社会的勢力であることを知らずに関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であるとの疑いが生じた時点で必要な調査等行い、反社会的勢力であると判明した時点で可能な限り速やかに関係を解消できるように取り組むべきであるとして、次のように規定している(第2章・-2-1-2・)。
    • 反社会的勢力との取引を未然に防止するため、反社会的勢力に関する情報等を活用した適切な事前審査を実施し、契約書や取引約款への暴力団排除条項の導入を徹底するとともに、利用者若しくは購入者等又は加盟店若しくは委託先等が反社会的勢力に該当しないか、定期的又は必要に応じて確認すること。
    • 反社会的勢力との関係遮断を徹底する観点から既存の債権や契約の事後検証を行うこと。
    • 事後検証の実施等により、取引開始後に取引の相手方が反社会的勢力であると判明した場合には、反社会的勢力への利益供与にならないよう配慮し、可能な限り速やかに関係を解消すること。
    • いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には、与信や不適切・異例な取引を行わないこと。
  5. オリエントは、相談者との契約書において、次のような暴排条項をおいている。

    本件契約「共通条項第5条」(反社会的勢力の排除)について(甲1)
    • 同条・項には、「申込者及び連帯保証人予定者は、申込者もしくは連帯保証人予定者が、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴利団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標榜ゴロ又は特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という)に該当しないこと、及び次のいずれにも該当しないことをと表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約するものとします」と定めている(・~・略)。同条・項略。
    • 同条・項には、「申込者又は連帯保証人予定者が、暴力団員もしくは・各号に該当した場合、もしくは・各号のいずれかに該当する行為をし、又は・の規定に基づく表明・契約に関して虚偽の申告をしたことが判明した場合、融資金融機関又は会社は、直ちに金銭消費貸借契約又は立替払契約もしくは保証委託契約を解除することができ、かつ、融資金融機関又は会社に生じた損害の賠償を請求することができるものとします。この場合、申込者又は連帯保証人予定者は、申込者又は連帯保証人予定者に損害が生じたときでも、融資金融機関又は会社に対し何らの請求をしないものとします。」と定めている。
  6. オリエントは、加盟店のセールスマンが反社会的勢力である暴力団員であること、さらには、その暴力団員が使用する自動車をオリエントの加盟店から購入させられたという訴えを受けた場合、すぐに、当該セールスマンが暴力団員であるかどうかの反社チェックを行わねばならない。
     オリエントは、加盟店のセールスマンが反社会的勢力である暴力団員でありその暴力団員がオリエントが所有権を有する自動車を無権限で乗り回していることを知ったら、直ちに、民事上の法的対抗手段を講ずるとともに刑事事件化を躊躇せずに行わねばならない。
     ところが、オリエントは、具体的にオリエントの加盟店のセールスマンが反社会的勢力である暴力団員であり、その暴力団員が乗り回すための自動車をオリエントの立替払契約で購入させられたとの情報を得たにもかかわらず、オリエントにはなんらの関係がないと強硬に主張したばかりか、被害者に対して暴力団員と意思を通じてオリエントに対して詐欺行為をしたとまで主張し、訴訟を提起してきた。


 本件は、単に、オリエントの加盟店の営業社員が反社会的勢力である暴力団員であり、その営業社員に自動車を購入させられたというだけではなく、営業社員である暴力団員が使用する車両を購入させられたというものである。
 さらに、その暴力団員が自動車を乗り回しているからその取り戻しのために刑事告訴を求めたという事例である。
 オリエントのこのような反社会的勢力に対する無責任な対応は、許されるべきものではなく、厳しい行政指導がなされねばならない。


添付書類
・オリエントへの公開質問状
・オリエントからの回答
・損害賠償事件訴状
・同事件での主張(第2、5項・5頁)
・同事件での釈明に対するオリエントの回答の準備書面(第1準備書面・1求釈明事項1について)
・W社の調査嘱託に対する回答