生活を破壊するような携帯電話利用未払い料金の支払いを要求することは認められるのか?
生活を破壊するような携帯電話の利用を認めることは過剰契約防止義務に違反しないのか?

サイト掲載: 2018年7月9日


1 由利弁護士が、障害年金を受給しながら、自分でできる仕事をして稼働収入を得、さらに不足する分について生活保護を受けて懸命に生活しているAさんの相談を受けた。
Aさんが相談に来たのは、2018年6月26日である。
Aさんは、携帯電話の滞納料金を払うようにと、KDDI株式会社の代理人であるというB弁護士法人から「通知書」という書類を持ってきた。Aさんは、この書類を受け取って、自分で、分割で支払いたいとB弁護士法人に電話をしたが話に応じてもらえなかった。
そして、「督促状」「催告書」という書類が立て続けにきて、最後には、家財道具まで差押をされると書いてあるということで相談に来たのだった。


2 Aさんが持ってきた通知書には、次のように書かれていた。
通知書は、「2018年6月6日」付けである。
請求金額は、329,097円である。(延滞利息含むとなっているが、元金と延滞利息の内訳は書かれていない)
支払い期限は、なんと、2018年6月12日となっている。
※「期限を徒過した場合は、延滞利息を再計算しますのでご了承ください」と書かれている。
通知書が翌日着いたとしても、Aさんが家にいなければこの手紙を何時受け取れるかわからない。翌日受け取ったとしても、6日間しかない。


3 2018年6月13日付けで、督促状がきた。
督促状には、「大至急、下記の通りお支払いください。支払いがない場合、当法律事務所としても到底このまま放置できず、管轄裁判所へ法的措置(氏原ョ督促申立)を執ることとなりかねません。」と書かれていた。
支払期限は、2018年6月20日となっている。


4 2018年6月21日付けで、催告書という書類がきた。
催告書には、「大至急、下記の通りお支払いください」「最終的には貴殿の財産 (現金、銀行預金、給料、車、バイク、家財道具等)に対して差押 を行い、当方の請求する金額を回収することになります。(下線部分赤字)
支払期限は、2018年6月28日となっている。


5 由利弁護士は、Aさんが、生活保護を受給しているということから借金の支払いは認めないのではないかと思い、生活保護の担当者に事情を説明した。担当者は、電話料金なので生活に必要ということで月5,000円までの支払いならいいでしょうと言ってくれた。
由利弁護士は、一応、B弁護士法人に電話をして分割払を認めてほしいと言ったら、電話に出た事務員と思われる女性は、KDDIさんは、月3万円が最低ですと言った。私は、とても、月3万円なんか払えるわけがないといい、受任通知を出すと言って電話を切った。


6 由利弁護士は、B弁護士法人に毎月5,000円ずつ支払うという和解案を出した。
すると、B弁護士法人の担当という事務員から電話がきた。
月5,000円という和解は受けられない。KDDIさんは、月3万円というのが原則だが、月14,000円を払うということなら分割払いを認めると言った。


7 由利弁護士は、契約者の生活状況からどれくらいなら払えるかをきちんと調査した上で契約をしなければならないのではないかと言った。
担当者は、それは、携帯電話を使う人が自分で判断することだと言った。
しかし、過剰契約禁止義務が法律で決められている。
生活保護を受けている人の生活が破壊されないような利用額を決める必要があるのではないかと言った。
担当者は、それは、利用者が決めることだと突っぱねた。
月14,000円というのは、2年以内で完済となる金額だ。


8 債務整理の相談をするときには、必ず、家計費の内訳を聞く。
家賃(あるいは住宅ローン)、電気・ガス・水道等の公共料金、車を保有している場合の任意保険の保険料、携帯電話、ガソリン代、タバコを吸う場合のタバコ代、子供がいるときは、子供の小遣い、給食費、交通費等々。 そして、最も多く必要なのが、食費となる。
この内訳で、驚くことが多いのは、携帯電話利用代金だ。 夫婦、子供等人数にもよるが、月3万円以上というのは稀ではない。
債務整理で必要なのは、どの支出を減らすかだ。
特に、携帯電話利用料をどの程度減らすか。
携帯電話の契約をすると、ポイントが付くからカード契約をしないかと必ず言う。 そのカードは、ポイントだけではなく、キャッシングやショッピングができることになっている。
まさに、割賦販売法の過剰契約防止義務の対象となる契約だと思う。


9 KDDIの代理人弁護士は、社会的正義を標榜する弁護士であるならば、生活保護を受給している人が破産をせず、支払いたいとの希望があれば、その希望に沿った和解をするよう、KDDIを説得するべきではなかろうか。


10 KDDIの代理人弁護士は、「家財道具等」を差し押さえると書いているが、どのような家財道具を差し押さえるというのだろうか。
日常生活に必要な家財道具の差押はされないことを知らないのだろうか。
このような通知は、「脅迫」ではないか。