宝石の値段ってでたらめ?

私は、3月下旬、A子(47歳)から、次のような相談を受けた。

 2月初、職場に訪問販売の女の人がきて、真珠のネックレスを購入しないかと勧められた。自分も気に入ったので、買うことにした。120万円と言われたが、もう少し負けてほしいと言ったら97万円に値引きすると言われた。もっと下げてもらかないかと交渉したが、それ以上値引きできないと言われた。

 ところで、その後、A子は、勤務先から「解雇」(リストラ)され、購入した真珠のネックレスの代金を支払うことができなくなると考え、一度も使用したこともない状態であるため、クレジット会社に連絡して、品物を返して契約をやめたいと言ったところ、クレジット会社は、売り主と交渉するよう言われた。売り主と交渉したところ、商品は、引き取れないと断られたが、どうしたらよいかと相談された。A子が持参した契約関係書類は、次のものでした。

  1. クレジット契約の内容について(ご注意)

  2. 契約書

 この契約書には、お申込年月日の記載も、契約年月日の記載もなかった。
 契約書の商品名・型式のところには、「18Kパールネック」とのみ記載されており、商標・製造者名の記載はなく、A子が持参した鑑定書にも、販売元の記載があるのみで、製造者や商標の記載はなかった。
 クーリング・オフ期間は過ぎている。
 私は、この相談にのったとき、まず、購入したネックレスの客観的な値段は、幾らだろうかと考えた。そこで、A子に次のように話した。

「私は、宝石のことは素人なので全くわからないの。悪いけど、このネックレス質屋に持って言って幾らで引きとってくれるか聞いてきてくれない。私は、10万円で引き取ってくれたら、いいほうだと思うけどね」

 私は、本当は、5万円と言いたかったが、A子が120万円のものだと信じているのに,あまりに極端な値段を言ってがっかりさせたくなかったので、10万円と話した。それでも、A子は、「不満」そうな顔をしていた。

 3日後、A子は、私のところにきた。

「先生、このネックレス、南洋の真珠で、日本のものに比べてものすごく価値が低いんですって。質屋さんでは、5万円以上は出せないと言われました」

「そうでしょう。私もその位だと思ったわ」

「私って、馬鹿ですね。娘に残してやりたいと思って買ったのに。5万円じゃ、娘だってもらってくれませんよね」

「120万円だと思えば、ありがたいんじゃないの」

 そこで、私は、クレジット会社に次のような手紙を出した。



割賦販売法は、同法に定める必要的記載事項を記載した契約書を受け取ってからクーリング・オフ期間が進行すると定めております。
 前述のように、前記契約書には、必要的記載事項の重要な部分の欠落があり、それは、致命的であります。
 よって、当職は、クーリング・オフの主張をいたします。
 速やかに、前記商品を返還いたしますので、貴社に送付すれば、よいのか、あるいは、北日本マルショウに返還すればよいか、ご指示下さい。
 尚、商標も製造者名も全く記載がないような宝石類の契約書は、極めて問題がありますので、今後は、十分ご注意下さるよう希望します。特に、鑑定書にも、これらの記載はありません。
前述のようにこの18K パールネックレス自体の価値も、極めて低いものであると判断せざるをえません。このような値段のものであれば、これは、明らかに購入者を愚弄するものであります。

 クレジット会社から返事は、まだきていない。