仮装貸金業者と広告媒体の責任
「この広告は何をする会社の広告?」

 コミック本・スポーツ新聞・パチンコ雑誌等々に、次のような内容の広告が、きれいなカラーで多数載っています。

例1
当社のみの信用審査(コンピューター審査なし)
13件・240万利用中の会社員、30万希望、他店で6件断られた後、申込!30万OK
9件・185万利用中の主婦・40万希望・他店で8件断られた後、申込!35万OK

例2
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例3
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フリーローン
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レダィースローン
・100万円の場合・年率9.88%の返済例・月々21,180円の60回
ビックローン
・500万円の場合・年率9.88%の返済例・月々65,740円の60回

「このような広告は、何をする業者の広告でしょうか? 」

「お金を貸す業者の広告です。」

「違います。」

「トイチ業者の広告ですか?」

「トイチ業者って、どういう業者のことですか?」

「10日に一割という、高い利息をとるヤクザ金融のことです」

「残念ながら、違いますね」

「じゃあ、どういう業者の広告なのですか?」

「これは、仮装貸金業者の広告なのですね」

「仮装貸金業者?」

「紹介屋とか、買取屋とか、整理屋とか、手形貸与方式とかと言って、現実には、お金を貸さない業者の広告なのですよ」

「紹介屋って、どういう業者ですか?」

「紹介屋というのは、何社もサラ金やクレジットからお金を借りてもう支払のためにお金を借りようと思っても貸してくれないという人が、この広告をみて、お金を貸して下さいと申し込みますね。そうすると、この業者は、『うちでは、お貸しできません。しかし、あなたにお金を貸してくれる業者を紹介しましょう』と言って、現実にお金を融資するサラ金業者を紹介するんです。そして、『あなたは、10社借りているけど、5社といいなさい。収入については、年収を300万円といいなさい。あなたの信用情報を操作して、あなたが借りられるようにしますから』などと言って、借り方をコーチするんです。そして、現実にお金が借りられた場合には、借りたお金の二〇%とか、三〇%、あるいは、ひどい場合は、四〇%とかを紹介料として払わせるんです。」

「紹介屋というのは、現実に、なにかするんですか?」

「現実には、何もしないと言われていますね。ただ、それぞれのサラ金会社の融資のやり方などの知識をもっていて、融資しそうな会社を紹介するということです」

「ひどいですね。買取屋というのは、どういうことをするんですか?」

「買取屋というのは、お金を貸してほしいと言ってきた人に対して、クレジットカードをもっていますか。と聞くんです。大抵の人がクレジットカードを持っています。それで、そのカードをもっていって、どこのどの店から、どういう商品を購入して、それをすぐに送れと指示するのです。そして、送った商品の価格のやく半額位を送金してくるというものです。購入するように指示する商品は、電気製品とか、コンピューターとか、いわゆる売れ筋の商品ですね。場合によっては、クレジットカードを送らせて、業者が商品を買って、その商品価格の約半額を送ってくるということもありますね。カードで商品を購入するということは、手数料がつきますから、現実に手にするお金の約二・五倍位の借金が増えるということになりますね」

「ひどいことするんですね」

「大抵の場合は、買った店から、直接送ってもらう人が多いですね。売る店でも、変だと思うと思いますけどね」

「ふーん。整理屋というのはどういうのですか?」

「整理屋というのは、電話をしてきた人に対して、債務の整理をしたほうがよいというように持ちかけて、弁護士を紹介しますなどと言って、いわゆる『整理屋提携弁護士』と言われる弁護士を紹介し、毎月お金を送らせて、借金を整理してあげるというようにいいながら、現実には、きちんと整理をしないというようなことをするんですね。」

「手形貸与方式というのはどういうものなのですか?」

「自営業者などの人が、この広告をみて、お金を借りたいと申し込むと、『幾ら必要なのですか?』『一、〇〇〇万円必要なのです』『それなら、一、〇〇〇万円の手形をお貸しします。その手形を地元の銀行に持って行って割り引いてもらいなさい。割引料は多分六%位ですから。一旦割り引いてもらった後、それを長期に切り換えてもらいなさい。そうすると、六%で一、〇〇〇万円のお金を用意ですます』『本当に、一、〇〇〇万円の手形割り引いてもらえるんですか?』『大丈夫です。優良な銘柄ですから必ず割引できます。その手形をお貸しするについて、一、〇〇〇万円の一〇%、つまり、一〇〇万円を手数料として送金して下さい。』といって、一〇〇万円を送金サセテ、一、〇〇〇万円の額面の約束手形を送ってくるんです。ところが、その手形は、どこの銀行に持って行っても割引など全然できないんですよ。それで、手数料として支払った一〇〇万円を返せと言っても、返さない。ということなのです」

「そんなひどい被害が沢山あるんですか?」

「非常に沢山あります。それらの業者には、『トイチ業者』というのが多いのです。」

「トイチ業者?って、一〇日に一割の利息をとる業者じゃないんですか?」

「『トイチ』というのは、都(ト)の(1)という登録番号の業者なのです。つまり、貸金業者として、東京都に初めて登録した業者だということなのですね。勿論、初めて、きちんとした貸金業をやるという業者もあるでしょうが、都(1)業者の中には、現実には、お金を貸さないで、紹介屋とか、買取屋とか、整理屋とか、手形貸与方式とかで、多重債務に陥っている人を、さらに、食い物にするというひどい業者が多いのです。常識で考えても、このような広告に書いてある内容というのはひどいのですね。沢山お金を借りて支払不能のような人にまた、お金を貸して返してもらえるとは思えませんからね。また、サラ金の大手より、非常に安い金利で、銀行金利に近い金利でお金が貸せるとは思えませんからね。」

「そういう被害者に対しては、どのようにするんですか?」

「私は、このような被害を受けた人から相談を受けた時、仮装貸金業者だけを相手にして、損害賠償をしてもダメだと考えて、このような広告を掲載した、広告媒体を相手に訴訟をしました。」

「それは、どこですか?」

「スポニチ、報知、中古車情報を相手方にして、損害賠償の訴訟を提起しました。」

「結果は、どうなったのですか?」

「スポニチ、報知、中古車情報と、仮装貸金業者を一緒に相手方にして訴訟をしたのですが、受けた損害全部と、一部慰謝料、弁護士費用を仮装貸金業者が全部支払ったのです。そのため、スポニチとか、報知、中古車情報からは、現実の損害賠償はもらいませんでしたが、今後、このような広告を載せないようにするという和解をしました。現在、仮装貸金業者の広告以外でも、非常に無責任な広告が多いので、その広告媒体、さらには、それらの雑誌などの取り次ぎ業者、日販とか、東販などの責任も追及できると考えています。特に、性描写のひどい雑誌などがありますが、そのような雑誌を販売している販売業者の責任も追及できると思います。いずれにしても、広告媒体や、販売業者、取り次ぎ業者などの社会的責任をきちんと問わないと、これらの被害は防げないと思います。」