時効債権譲受け会社による免責債権の取り立て被害!
破産記録は5年で廃棄!

 A子は、昭和60年6月5日、免責決定を受けていた。
 ところが、A子は、平成4年4月ころ、甲社という会社から、金を払えとの手紙を受け取ったが、甲社という会社に記憶がなくほっておいたところ、電話が来た。
 A子は、既に、弁護士に依頼して自己破産をしていると説明したが、「漏れているのではないか」と言われた。さらに、こちらで肩代わりしたので、支払ってもらわねばならないと言われた。一度、30万円位のお金を払えば和解すると言われたが、30万円ものお金は払えないといったところ、幾らなら払えるかと言われて、月1万円ずつなら払えると言った。

 平成4年5月から、平成13年5月迄毎月1万円を支払った。
 最近、「記帳のお知らせ」という明細が送られてくるようになった。その明細を見ると、だんだん借金の額が増えていることに気付いた。
 A子は、甲社に電話して、このままでは、自分が死んだあとも、借金が残るのではないとか言った。

平成4年1月18日契約の記帳のお知らせには、次の記載がある。

前回残高       332,219円
前回支払日 01.03.16
今回支払日 01.04.18
日数    33
利息           8,770円
元本               0
前回利息不足額 −1,609,796円
今回利息不足額 −1,608,566円
今回超過金            0
総合計         10,000円
現在残元本      332,219円
次回返済期日 82.09.18
次回返済予定額  1,948,758円


 甲社担当者は、それでは、和解をしてきちんとしたらと言った。
 A子は、弁護士に相談する旨話したところ、甲社は、弁護士に相談すると、沢山の金がかかると言われた。甲社は、和解契約書を送付してきた。

和解の内容は、次のようになっていた。

  1. 債権の表示
    契約者 A子     契約日 昭和57年5月12日
    原貸主 (株)サンスイ 融資金 金370,000円
  2. 和解金額  金450,000円
  3. 弁済方法  上記和解金を6月15日迄に一括して入金する。

 A子は、この書類をみて初めて、サンスイという会社のことがわかった。そして、甲社に契約書を送ってほしい旨依頼して送ってもらった。
 A子は、平成13年5月中旬、別の大手貸金業者からも、「まだ支払われていない」旨の電話を受けた。A子は、破産している旨話したが、払われていない旨述べたという。
 A子は、おそろしくなり、相談にきた。



時効債権譲受け会社による違法な取り立てに愕然
 私は、この相談を受けて愕然とした。
 破産は、昭和60年であり、免責も昭和60年である。裁判所に記録の閲覧をしても、既に、破産記録は廃棄されている。
 たまたま、この人については、私が相談をうせていたことから、全部の書類がそろっていた。まちがいなく、サンスイの債権は、破産申立ての内容に含まれていることがわかった。
 時効債権譲り受け会社による時効債権の取り立てについては、種々の問題が指摘されているが、債権譲渡について、きちんとした書類を債務者に送っているところは、ないといってもよい。

 破産をして免責を受けて、丸7年も経過してから、このような形で督促を受け、借りて返済もしていないという負い目のある債務者に対して、「肩代わりしたのだから払ってもらわなければならない」などといい、債権の内容も教えず、支払をさせるというようなことが、現実に行われているという、正々堂々と行われているのだ。

 この事件については、これまでに支払った100万円以上の金員と、慰謝料等の支払を求める訴訟を提起するとともに、貸金業者としての登録取消しの申立てをするほかないと考えている。

 破産記録は、5年で廃棄される。破産宣告決定・免責決定には、債権者名簿は付けられていない。破産債権者から、「漏れているのではないか?」などと言われた場合に、破産者が、破産宣告決定・免責決定を持っていても、それには、破産債権の明細は一切ないから、原記録をもっていなければ、間違いなく、破産事件で免責となっていることが証明できないこととなる。

 しかし、破産事件については、官報広告される。従って、免責債権ではない、つまり、漏れていないということを主張する債権者が、それを立証しなければならないと考えることにより、破産記録が5年で廃棄されることによる不都合を回避できるのではないか。

 尚、これらの債権は、時効にかかっているが、このような問題が発生するのは、時効にかかった債権について、ともかく1000円でもいいから支払えと言われて支払った後に、弁護士に相談することになる。即ち、10年前の債権でも、20年前の債権でも、途中で、1000円を支払ったことにより「時効中断」となるということになるのである。 破産し免責となった後にも、このような問題が発生することに驚きと、怒りを禁じ得ない。