第24回全国クレ・サラ・商工ローン・ヤミ金被害者全国集会
「貸金業者労働問題」分科会より



 第24回全国クレ・サラ・商工ローン・ヤミ金被害者全国集会において、初めて、「貸金業者労働問題」という分科会が持たれた。

 その分科会では、次のようなことが話し合われた。

 武富士被害対策全国会議が結成され、武富士の従業員が、「人格を否定されるような異常な労働条件の下で」働かされているということがわかった。

  1. 支店長やブロック長に異常融資の責任を追わせ、債務保証させた事例
  2. 残業代未払い(一般社員には残業代を出す時間に上限を設ける、支店長には形だけの管理職として残業代を支払わない。特に、女性社員の残業代は非常に低く押されられていた。男子は月25時間、女子は月6時間という)
  3. 自由意思での退職が許されない事例
  4. 退職金未払いの事例
  5. 社員の徹底管理(携帯の履歴チェック、現職社員と退職社員との接触をもたせないなど

 武富士残業代請求訴訟については、東京で、第一次、第二次の訴訟が提起され、現在、第三次訴訟が準備されている。


元従業員の方からの報告

 武富士(元支店長)支店毎の融資勧誘の過大なノルマがあり、達成できないと支社に集められ、支店長会議で罵声を浴びせられた。また、支店の業績が悪いとノルマ達成を確認する電話が営業統轄から10分おくにかかった。督促や勧誘の電話の本数は本社でチェックされ、数が少ないと本社から電話が来る等、徹底した社員管理の実態が報告された。また、別の武富士元社員からはノルマのせいで自殺に追い込まれた同僚の話や、違法な第三者請求の際は「お願い」をして絶対に「支払を要求する言葉」は出さないことなどが報告された。


CFJ(旧アイク・元社員)からの報告

 東北地方における元CFJ支店長等による未払い残業代請求と慰謝料請求訴訟についての報告があった。

 社内では組織的な取引履歴の改竄が行われていたが、それが明るみになると支店長等に全て責任を押しつけて懲戒解雇した。在職中は、ノルマに追われ、毎日の報告を欠かせず、また未達の場合の対策を迫られた。異常な労働環境であることに気付いたが、食べていくために仕事を続けるしかなかった。


SFCG元支店長の報告

 自らが行っていない不正融資の事実の責任をとらされ賠償金の支払を約束させられ、公正証書まで作成された。身元保証人である親への財産への仮差押え、公正証書による転職後の会社の給与差押えがなされ、もはや、訴訟により戦うしかなかった。過酷なノルマ、土日出勤、深夜残業は他社以上であった。ノイローゼ自殺、過労死もあった。支配人時代には予備知識もなく突然訴訟担当にさせられた。



 貸金業者労働者の労働組合の存在が報告された。

 アコムユニオン  平成15年10月25日結成

 三洋信販労働組合 平成16年10月2日に第16回定期大会が開催

 レイク・CFJにも労働組合があるという報告があった。


貸金業者従業員の労働環境の速やかなる改善を求める決議文

 全国クレジット・サラ金問題対策協議会は、平成14年10月25日、サラ金業界大手の武富士の異常な業務実態を告発するため、「武富士被害対策全国会議」を立ち上げた。武富士の問題は、不景気の中で、数少ない成長産業として注目され、史上最高の利益を更新するという表面の裏で、いわゆる「過剰融資」「法律上支払義務のない第三者に対する支払請求」等業務上の問題だけではなく、そこに働く従業員が、まともな残業代ももらえず、過酷な労働に従事させられているということが満天下に明らかとなった。

 このような中で、武富士は、司法当局の強制捜査を受け、平成15年3月には、35億円という莫大な「残業代」を支払った。

 ところで、このような武富士の実態は、武富士だけのものなのか、あるいは、武富士以外のサラ金会社にも共通のものであるのかとうい観点から、本被害者集会において、「貸金業者労働問題」の分科会をもった。

 我々は、これまで、多重債務者の救済や、違法な融資・取立に対する対応などを通じて貸金業者と接してきた。このような場面では、貸金業者は社会問題を生み出す、正に敵としてみなされてきた。そして、そこで、働く社員もまた同様のものとしてみなし、彼らが、いかなる労働環境に置かれているかに目を向けることはなかった。

 本日、本分科会では元社員らの報告を受けながら、数々の貸金業者の社内の労働実態を取り上げた。その中で以下のような事実が明らかとなった。

 まず、多くの貸金業者ではサービス残業が横行し、正規の残業代の支払が全くなされていない。この労働基準法違反の行為は、いわば業界の慣習のごときものになっている。

 次に貸金業者では、従業員に1日ではとても終わらない量の過酷な取立ノルマが課せられ、未達の場合には正に人格を否定されるがごときの制裁を受けている。

 そして、支店別に達成度を管理し、そのノルマを達成するために支払義務のない第三者取立を実施している。融資勧誘の段階においても、同様のことが言える。

 達成不可能な融資残高基準を達成するために、審査基準を緩和して過剰な融資を行う。結果、適正な支払能力を超えた債務者を生み出している。

 さらに、組織ぐるみで取引履歴の改善を実行し、その責任を1従業員に押しつけて懲戒処分にする、従業員に虚偽の不正融資の事実を認めさせ、その責任を身元保証人である親族にとらせるなどの事実が次々と明らかになった。

我々は、これらの報告を受け、憲法で保障された労働基本権のみならず人格権までもが平然と踏みにじられているその実態に耳を疑うとともに、このような社内の違法行為が貸金業者の社外における数々の違法行為へとつながっていることを認識した。

 翻って、このような従業員らは法の救済を受けられてきたか。残念ながら、それは「ノー」といわざるを得ない。先述のとおり、これまで多重債務者問題等の敵とみなされてきたこともあり、訴訟に取り上げられることもなかった。また、労基署等も十分に機能してきたかも多いに疑問が残る。近時ようやく訴訟で一定の成果を勝ち得てきたが、公になっているあるいは、法的に救済されている事例は、ほんの氷山の一角にすぎない。貸金業登録を行ってる2万3865社の従業員は、今なお過酷な労働を強いられている。

 我々は、本分科会を通じて多重債務者問題の解決や違法な融資や取立ての問題を抜本的に解決するためには、このような貸金業者内部の労働実態を改善することも必要であることを理解した。そして、そのためにはこの聞多ョをより多くの人々に知らせ、貸金業者内部の人々の労働条件を改善させていく必要がある。内部の労働組合が権利を実現することで、違法な取立ても強制されることなく、法令遵守を実現することも期待できる。

 このような認識において関係諸機関及び諸団体そして法曹関係者には上記の労働実態を把握し、速やかなる救済措置を取ることを求め、ここに決議する。

平成16年10月31日

第24回全国クレ・サラ・商工ローン・ヤミ金被害者全国集会in千葉
貸金業者労働問題分科会参加者一同