内閣提出法案では異例!
敗訴者負担法案が廃案へ(共同通信)



 共同通信配信で、「訴訟費用の敗訴者負担法案」が廃案になるようだとの次のような記事が掲載されている。

敗訴者負担法案が廃案へ 内閣提出法案では異例

 政府、与党は22日、民事訴訟で負けた側が相手側の弁護士報酬の一部を支払う敗訴者負担制度の導入を盛り込んだ「民事訴訟費用法改正案」を廃案にする方針を固めた。内閣提出の法案が衆院解散以外で廃案となるのは異例。

 民主党や日弁連などが「弁護士費用を心配して提訴できなくなるマイナス効果がある」と強硬に反対しているのに加え、与党内の一部でも「法案のままでは問題がある」と修正を求める声が浮上。「各党間の溝が深く、今国会で継続審議にしても成立は難しい」(与党幹部)として、内容を再検討する仕切り直しが必要と判断した。

 同法案は、提訴後に原告被告双方が敗訴者側に弁護士報酬の一部を負担させることに合意し、共同で裁判所に申し立てた場合に限り認めるもので、司法制度改革の一環として、今年の通常国会に提出した。




感想

 訴訟費用の敗訴者負担法案については、非常に問題があるということで、日弁連が反対をしていた。私の事務所でも、事務所のカウンターに「反対署名」の用紙を置いて、相談者の人に「反対署名」をしてもらっていた。

 訴訟費用の敗訴者負担は、その言葉だけを聞くと、問題はないように思われるが、もし、これが、原則となると、「勝つか勝たないか予測がつかない」というような訴訟はできなくなってしまう。

 特に、消費者事件では、なかなか裁判で勝てない事件を繰り返し繰り返し訴訟に訴え、判例変更となるというのが、これまでの歴史である。敗訴者負担を原則にしないで「合意」による敗訴者負担という案も検討されていた。

 しかし、「合意による敗訴者負担」というのは、大手の会社が、「予め、契約書に訴訟費用の敗訴者負担の合意をしておく」というようなことになると、よく契約書を読まないで契約をするという消費者事件では、全部「敗訴者負担」となってしまうという弊害が指摘されていた。

 一応、「廃案」となって、今回は、終わりになるとしても、今後、また同様の法案が提案されるおそれがある。

 交通事故による損害賠償訴訟や、医療過誤などは、個別に、判決で訴訟費用の敗訴者負担が判断されていた。

 この方向で個別に判断されるのが適切だと思う。