五菱会事件の没収金、スイスから日本に一部返還へ(読売新聞)

読売新聞4月22日付けは、五菱会事件で、スイスに没収されていた金(約50億円)について、次のように報じている。

五菱会事件の没収金、スイスから日本に一部返還へ

 指定暴力団山口組旧五菱会系のヤミ金融グループによるマネーロンダリング(資金洗浄)事件で、同グループ最高責任者・梶山進被告(55)がスイスの銀行口座に隠し、スイス当局に没収された約51億円について、法務省は22日、その一部を日本に返還してもらい、被害者に分配するための法整備に着手する方針を固めた。

 早ければ今秋の臨時国会で関連法を改正するとともに、分配方法を定めた特別法の法案を提出する。両国政府は財産の返還でほぼ合意しており、日本の法整備が完了し次第、返還が実現する見通しになった。

 資金洗浄のため外国に送金され、没収された犯罪収益が2国間交渉で日本に返還されるのは初めて。没収された犯罪収益が国の関与により被害者に分配されるのも初のケースになる。同グループがスイスに送金した約51億円は2003年12月、スイス・チューリヒ州当局に口座を凍結され、その後、没収されたため、日本とスイスが返還に向けた協議を続けていた。スイスでは昨年8月に、没収財産の一部を犯罪が実際に行われた外国に分配できる規定を盛り込んだ法律を施行するなど、法的整備が進んでいた。

 一方、従来の日本の法律では、財産が返還されたとしてもすべて国庫に入れるしかなく、被害者の手元に届かない恐れがあった。

 このため、法務省では、〈1〉返還財産を一定期間、歳入とせずに国が預かる〈2〉被害者への分配が終了した後、残った分を国庫などに入れる〈3〉被害者や被害額の認定は、破産管財人などと同様、弁護士が関与する形にする――などの枠組みを考案。今回のケースに限定した特別法を制定し、組織犯罪処罰法の没収・追徴や国際捜査共助に関する規定などを改正した上で、スイスと2国間協定を結ぶ方針を固めた。

 返還額は今後、両国間で詰めるが、スイスが過去に他国に返還した例から、最大で没収額の半額(約25億円)になると見られる。残りはスイス当局が国庫などに収める。

 今回の事件では、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)などの罪に問われた梶山被告らグループ幹部に、検察側が海外送金された犯罪収益など計約97億円(スイス送金分を含む)の没収・追徴を求刑したが、東京地裁は「被害者が損害賠償請求をする可能性がある」として認めなかった(検察、弁護側双方が控訴)。

 ただ、被害者約6万人のうち、損害賠償訴訟を起こしたのは128人にとどまっている。




感想

犯罪や違法な方法で取得した財産を保持させないとう観点からの法律の整備は、日本では著しく遅れている。

たとえば、違法なカルテルなどによって被害を受けても、それが、被害者に返還されることはない。

正義が実現されるような法律の整備が急がれるべきではなかろうか。