北洋銀行の奇妙な言い分

2010年 8月11日

Aさんの言い分

 Aさんは、甲会社に勤めていた。甲会社をやめて、自分で仕事をはじめようと思い、開業資金として300万円の融資を北洋銀行に申し込んだ。平成19年7月ころのことである。
北洋銀行は、甲社に貸しているのが「綺麗にならない駄目だ」といわれたという。
「こっち」というのは、甲社の債務のことだった。それは、約425万円だった。
 Aさんは、北洋銀行に行く前に、別の信金に、同じような借入の申込みをしたら、やはり、Aさんに実績がないこととなどから融資を断られた。
 そのため、Aさんは、仕方なく、甲社の分を支払うことにして支払った。
 Aさんは、300万円と、肩代わり分の425万円を借りればよかったが、保証料として35万円が差し引かれるといわれたため、1000万円貸してほしいと言ったら、北洋銀行は、平成19年9月28日に1000万円を貸してくれた。
 Aさんは、甲社分として、平成19年9月28日に、425万8040円を北洋銀行に支払った。

北洋銀行の言い分

 北洋銀行は、Aさんが、次ぎのように言ったという。
 甲社の社長が、会社のお金を流用していたので、会社の通帳と印鑑を自分が管理している。自分が甲社の事業を個人で引き継ぎたい。その際、Aさんが、甲社の借入は、実質的な経営者として自分にも責任があるということで、Aさんから、甲社の借入返済の申出があった。
 北洋銀行は、Aさんが、実質的経営者として道義的責任から、支払ってくれるなら問題がないと考えて、甲社の返済については何も発言しなかった。
 従って、甲社の借入返済は、Aさんから返済すると申出があったのであり、北洋銀行から返済を求めたものではありません。

 Aさんから相談を受けた弁護士は、このような北洋銀行の回答があったため、北洋銀行は、Aさんが、甲社の債務を支払ったことは間違いないと認めたと思った。
 ところが、Aさんは、北洋銀行に甲社分として425万8040円を支払ったが、受取り書のような書面や、銀行が契約が終了した場合に返還する契約書などをもらっていないと言った。

 それで、Aさんは、北洋銀行に、甲社の分を支払ったという「代位弁済証書」と、甲社と北洋銀行との金銭消費貸借契約証書を渡すよう申し入れた。

 ところが、驚くべきことに、北洋銀行は、次ぎのように回答してきた。

 「A氏は、甲社の融資を代位弁済した」とのことですが、A氏から、代位弁済を受けたことはありません。従いまして、代位弁済証書は、作成しておりませんので、交付するものはありません。

 普通に考えれば、最初の北洋銀行の最初の回答は、Aさんが、甲社の融資を支払ったことを認めていると思われる。Aさんは、甲社と北洋銀行との金銭消費貸借契約の際の保証人にもなっていない。しかし、北洋銀行の言い分でも、Aさんは、甲社の融資を返済したというならば、Aさんが、甲社に代わって支払ったことは間違いないということになるのではないか。

 Aさんは、北洋銀行の甲社に対する貸金を代わりに払ったのだから、Aさんは、甲社や、甲社と北洋銀行との契約の保証人になっている人に、「代わりに払ったお金」の返済を求めることができるが、その場合には、「代わりに払った」ということを証明するための北洋銀行の「受取り書」(普通は、この書面のことを代位弁済証書という)が必要だし、北洋銀行と甲社との契約書が必要だ。

 契約関係のない第三者から、425万8040円も受取りながら、受け取ったという書類を出そうとしないどころか、「代位弁済を受けたこともない」という北洋銀行の言い分は、到底、理解できない不可思議なことである。