ギャンブル依存症と集団療法!

 多額の借金があるのに、「パチンコ・競馬・麻雀」などのギャンブルから抜けられず、本人や家族に見放されてしまう。多重債務相談にのっていると、必ず、このような事例に遭遇する。借金癖から立ち直れない、最大のものは、「ギャンブル」によって多重債務に陥った人だ。ギャンブルというのは、100パーセント負けるわけではなく、時々、投資額の何倍も、ときによっては、10倍以上も儲けることがある。そのため、「夢よ、もう一度」ということで、借金をしてでも、ギャンブルにのめりこむということになる。

 私が相談にのった事例で忘れられないのは、次のような事例だった。

 15年も前のことだと思う。当時、もっぱら競馬でサラ金やクレジット・銀行などに2千万円を超える借金を作ったということで相談にきた。勤務先は、自衛隊。私は、頑張って債務整理をするよう勧めたが、すでに、退職願いを出していた。自衛隊の上司が相談に同道したという事例だった。退職金(1000万円を超えていた)で、債務を整理したいということだった。私は、上司に、退職金は、本人には渡さず、代理人である私のほうに直接送金してほしい旨話し、本人も了解していた。
相談してから、相当日にちがたったある日、本人から電話が来た。

「実は、今日、退職金が1200万円出た。それでは、借金が全部支払えないので、お金を倍にしようと考えて、そのお金を全部もって競馬場に行った。そして、すべて、負けてしまった」というものだった。

私は、あまりのことにびっくりしてしまったことを覚えている。この多重債務者の借金は、サラ金・クレジットも相当額あるが、親戚や同僚・知人などの借金が多く、利息制限法で減額になる額は、それほどではなかったように思う。私は、親戚や同僚・知人などの借金もきちんと説明して、退職金で全部きれいに整理するということを説明していたが、本人は、同僚・知人などには、全部支払うということに固執していた。

「こんな状態でも、面子にこだわっていたのだ」

 ところで、ギャンブル依存症について、欧米では、アルコールと同じく、精神的な病の一種とみなされ、患者同士が治療体験を語り合う「集団治療」などで改善を目指しているという。

 ギャンブル依存症は、「ギャンブルに没頭すれば、快感が得られ、不快な気分から逃れられる。それが習慣化するうちに、自己コントロールができず、抜け出せなくなった状態」と説明されるという。ギャンブルを楽しむ余裕はなく、ほどほどで辞められないのだ。


ギャンブル依存症のチェック項目は、つぎのようなものだという。

  1. ギャンブルのことを考え、仕事が手につかなくなる。
  2. 自由なお金があると、まず、ギャンブルが頭に浮かぶ。
  3. ギャンブルに行けず、イライラ怒りっぽくなる。
  4. 手持ち金がなくなるまでギャンブルをし続けることがある。
  5. ギャンブルを辞めようと努力したが、ダメだった。
  6. 家族に嘘をつき、しばしばギャンブルをする。
  7. ギャンブルの場に知人はいない方がいい。
  8. ギャンブルのため20万円以上の借金を5回以上した。
    あるいは、総額50万円以上の借金をしてギャンブルを続けている。
  9. 支払い予定のお金を流用、財産を勝手に換金してギャンブルに当て込んだ経験がある。
  10. 家族に泣かれ、「ギャンブルを辞める」と2回以上固く約束した。

5項目以上当てはまれば、早期治療が望ましい。3項目の楽しみ方を再考した方がいい。

 チェック項目で依存症の可能性が高いのに、放置すると、「持ち金を使い果たし、他人の金を流用し、サラ金に多額の借金をつくり、ときに自殺に至るなど『悲劇的な連鎖』を招きかねない。

 治療としては、アルコール依存症と同じく集団療法が有効だという。

 札幌の道立精神保険福祉センター(011−864−7121)では、月3回、夕方から集団療法を実施しているという。

 自分が病気だと気付かせ、仲間を作るのが目的。家族の話合いも増やして関係をよくする一方で借金返済の肩代わりをしないなど患者の自立を促すのが大切だという。

 又、患者の約2割はギャンブルをしない時間は、気が滅入り、落ち込むなど、うつ的な症状があるとされる。そうした場合、投薬も必要だという。

 横浜には、ギャンブル依存症からの回復を目指す通所施設「ワンデーポート」(045−303−2621)が2000年春にできたという。

 多重債務の原因にギャンブルも多い。

 借金依存症というのも確実に存在すると思う。

 借金依存症になる原因の多くが、簡単に借金ができること、さらに、少なくとも、最初は、本人が希望する以上に借金をさせられることから始まる。借金依存症についても、もっともっと、科学的なメスが入れられる必要あると思う。