2002年の年頭に際して
司法におけるコンプライアンス態勢の確立を!

平成14年1月6日


2002年の年頭にあたって、私は最高裁判所からの「調停問題に関する要請書に関する回答」のことを考えた。

 最高裁判所は、「最高裁判所が下級裁判所における個別の調停手続の運営について示唆することは相当ではありませんので、その旨ご御承知置きください。」という。確かに、裁判官の独立を犯すことはできない。

 裁判官の独立と身分保障は、憲法によって保障されている。

 「すべて裁判官は、その良心に従い、独立してその職権を行うべきもので、裁判官を拘束するものは、憲法及び法律だけである」(憲法76条3項)

 裁判官は、次の事由によって懲戒を受ける。

  1. 懲戒原因  職務上の義務違背、職務怠慢または品位をはずかしめる行状のあったこと。(裁判所法第49条)
  2. 懲戒の種類 戒告または1万円以下の過料(裁判官分限法2条)

 その他に、裁判官は、次の事由により弾劾裁判を受ける(裁判官弾劾法第2条)。

  1. 職務上の義務に著しく違反し、又は、職務を甚だしく怠ったとき
  2. その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき

 裁判官の職務の独立が最大限尊重されなければならないことは、当然である。

 しかし、明らかに法律に違反した内容の裁判(決定)を行ったときに、それについて、その責任を問われるべきも当然であると思う。

 通常の訴訟は、三審制となっており、裁判官の誤った判断が、是正されることになっている。

 しかし、調停は密室で行われ、なんの担保もない。

 その調停において、裁判官が明らかに法律に違反するような職務を行っているというおそれが指摘されたとき、最高裁判所は、当該裁判官が、職務上の義務違背、あるいは、職務怠慢があるのではないかとの観点から、事実を調査すべきではないだろうか。

 勿論、裁判官の独立を犯すことがないよう、細心の注意を払うため、その調査については、客観的に公正であることに十分に注意い、その調査の内容については、きちんと公開すべきである。


金融検査マニュアルについて

 平成11年4月公表され、同年7月1日から金融検査官向けの通達として公にされた金融検査マニュアル(預金等受入金融期間に係る検査マニュアル)は、「法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト」及び「リスク管理に係るチェックリスト」の二本立てになっている。

 金融検査マニュアルは、コンプライアンスを実現する手段として、(1)コンプライアンス・マニュアルの策定、及び(2)コンプライアンス・プログラムの実施を重視している。 同マニュアルは、コンプライアンスを実現するための体制として、コンプライアンス担当者やコンプライアンス・オフィサーの配置等の組織面のみならず、取締役の意識や取組姿勢、企業風土、研修等を通じた情報の伝達・交換・人事、違法行為を防止するための施策等のコンプライアンス環境」を重くみる。

 さらに、コンプライアンス体制の整備に対する責任は、代表取締役や取締役会が担うものとし、取締役会・常務会等・監査役会の組織や運営に関して商法を超える要求をしているという。

 金融検査マニュアルは、取締役・経営陣のとるべき行動を具体的、広範囲に定め「取締役会議事録は、不正行為やトラブル等の報告が確認できるようになっていなければならない」とする。(以上は、「金融コンプライアンスハンドブック」の「金融検査マニュアルと個別法・業法上の対応」の金融検査マニュアルの要求する「法令遵守態勢」から引用)

 コンプライアンス態勢が最も遅れている部分が、公共的部分にあることは、誰もが認めるところであると思う。


裁判官無謬神話?

 しかし、裁判官が法律に従わないで、法律に違反するような調停を行っているという申し立てがあった場合、それは、単に、個別の問題ではない。

 その裁判官が、担当しているすべての事件について、同様の法律に違反する調停が行われていると合理的に考えられるのだ。

 最高裁判所は、三審制では、担保されない調停手続に関して、多くの国民が法律を無視した違法な調停によって損害を受けることがないようにすべき義務があるのではないだろうか。