900円が156,900円?
なんでも、話し合える家庭でさえあれば…



 平成15年10月中旬、K氏が来所した。

 実は、高校一年生(15歳)になる息子が、電話をかけたということで、900円の利用料金なのに、156,900円払えといわれている、どうしたらいいか、という相談だった。

 相談者の話では、息子が、6月15日に、電話をして利用料金が900円といわれたらしいが、遅延損害金が36,000円、6月15日から10月中旬までの一日当たり1,000円の延滞金が12万円で合計156,900円ということだという。

 相談者は、事情がわからず、家族に聞いてから返事をするので明日まで待ってほしいと言ったという。家族に聞いたところ、息子が、自分が電話をしたということを認めたという。しかし、900円の利用料金で156,900円を払えというのは、あまりにもひどいと思って警察に行ったが、民事不介入とかで、警察では、「払え」とも言えないし、「払うな」とも言えないといわれたという。そして、私のところに来た。

 私は、即座に、そんな金を払う必要がない。明日、向こうから電話がくるということなので、電話番号と担当者の名前を聞いて、もう一度くるようにと話した。尚、相手との会話は、録音するように指導した。

 翌日11時ころ、相談者が来た。

 相談者は、開口一番、「先生、あの金は払うことにしましたから」と話した。

 私は、「どうして?」というと、もう、そのように相手に話しましたということだった。私は、ともかく、相手との話の録音を聞かせてもらった。

  相談者は、「はい、はい、はい、はい、払わせてもらいます。送金先はどこでしょうか」というような話し方だった。

 私は、「どうして、こんな話をしたの?」と聞いた。

 すると、相談者は、「これ、暴力団でしょう!」と言った。

 私は、「これは、暴力団かもしれないし、そうではないかもしれない、でも、こんなことで、言いなりにお金を払うのは、息子さんのためにはならないと思うよ」

 と言って、息子さんと一緒にきてもらうことにした。

 息子に事情を聞いたところ、雑誌をみて、電話をしたが、すぐに切った。その時にご利用料金は900円ですという声は聞いたが、どういうふうに払うのかもわからなかったから、そのままにしたということだった。

 6月末ころ、長女(19歳)がやはり、同様の電話を受けたということもわかった。長女は、900円と36,000円で合計36,900円を払えといわれたようだったが、事情がわからず、そのままにしたという。

 私は、息子から話を聞いて、息子になぜ、すぐに親に言わなかったのかと聞いたら、「叱られる」と思って言わなかったと言った。

 私は、すぐに、相手方に電話をして、利用したのは、15歳の未成年者だ、親には支払業者はないと交渉し、結局1万円で和解した。

 私の費用も、1万円もらった。

 「私は、いつも、家族でなんでも話し合える家庭を作ってください」ということを話している。

 この相談などは、家族でなんでも話しあえるという家庭であったならば、「900円プラス送金料」で終わった事例だ。

 たまたま、私は、この相談者の相談にすぐにのれたから、妥当な解決ができた。しかし、たまたま、二回ともいなかったならば、156,900円を支払わされていた。

 それにしても、電話での請求などは、一切認めないという法律でも作らなければ、この種の被害はあとを絶たないと思う。