亜細亜大学野球部の「わいせつ事件に思う」
裁判官のチェック機能は十分か?

 亜細亜大学の野球部の学生が5人、わいせつ事件で現行犯逮捕されたという事件が報道された。

 5人は計画的に電車に乗り、「いいおんな」を探してわいせつをしようとしたと大きく報道された。

 しかし、5人のうち4人は、「不起訴」(証拠不十分)で釈放となったと小さく報道された。

 その報道では、5人は、それぞれ、計画的に相談して電車にのったのではなく、たまたま一緒に電車にのっただけであり、全く「わいせつ」的な行為はなかったようだとの報道がなされた。

 ところで、私は、この事件について、裁判官が、「勾留」の判断の段階で、なぜ、「チェック」できなかったのか、と思っていた。

 刑事事件の流れは、次のようになっている。

 逮捕には、現行犯逮捕・緊急逮捕・通常逮捕の3つがあるが、この事件は、現行犯逮捕だと記憶している。

 逮捕された場合、72時間(3日)以内に、裁判官に勾留請求という手続きがなされる。裁判官が、直接、逮捕された人に面談して、嫌疑があるか否かついて、判断し勾留状を出す。10日間の勾留がされ、その期間が満了しても捜査がまだ終わっていない場合には、さらに、勾留請求がされる。この間に、起訴するか、不起訴にするかが決められる。まれに、「処分保留ということで釈放されることもある。

 裁判官が、捜査期間の行き過ぎをチェックするのが、勾留尋問である。

 東京地方裁判所の場合、年間、約6000件の「令状事務」を一人の裁判官と二人の書記官が担当しているという。令状は、夜でも休日でも請求があれば、裁判官が判断して処理しなければならないが、やはり、日曜日は少ないとして、300日で割ると一日20件ということになる。

 令状の中には、逮捕だけではなく、家宅捜索などの令状もあるが、一日に20件平均の事件の記録を読んで、判断するとなると、相当な重労働だという気がする。

 裁判官によるチェック機能が不十分であるとの指摘は、これまでも何回も法律専門家からもなされているが、裁判官が、十分なチェック機能を果たすためには、記録を読んで、判断するために必要な時間的な余裕があるのか否かは、極めて重要な問題だ。

 亜細亜大学の野球部の学生の不当逮捕については、警察のやりすぎだとうことが、大きく報道されているが、私は、裁判官のチェック機能についても、きちんと検討されることが必要だと思う。

 逮捕され、その名前で、全国に報道されるということは、その人の一生を左右するほどの影響力を持つものだということに、もっと、法律家は敏感にならなければならないのではなかろうか。