恋人商法とやくざのしのぎ(2)

S君は、20歳になったばかりだ。

先輩から、可愛い女の子を紹介してあげると言われた。

彼女は、ある日、夜10時ころから「カラオケに行こう」と言った。

S君は、10時少し前に彼女が世話になっているマンションに彼女を迎えに行った。彼女は、家の前においてある車を指さして、「これ、運転して行って」と言った。

S君は、その車を運転して、カラオケの店に行った。彼女は、その車を明るい照明のある玄関の方ではなく、横手の薄暗いところに止めるように言った。

S君は、彼女が言うままに、車を止めた。

二人でカラオケを楽しみ、1時半ころ店をでた。

車を引き出すと、車の後ろのランプが壊れていた。車のボディも凹んだりしていた。彼女は、「車が壊されている。この車、借りてきたのに。困った」と言った。

S君は、どうしたらいいか戸惑っていた。

彼女は、すぐに、彼女が住まわせてもらっているところの女性に携帯電話をかけた。

すぐに、その女性と、その女性の内縁の夫という男性(やくざ)が来た。

「修理して返すしかないだろうな?」と言った。

夜中の二時だというのに、開いている「板金屋」があった。そこで、修理の見積もり書がつくられた。

それは、120万円というものだった。

彼女は、S君に、「半分ずつ支払う」と言った。

そういう話をしている時、車の持ち主という男性が現れた。

車をみて、「どうしてくれるんだ?」と怒鳴った。

「修理して返します」と言った。

その日、S君は、彼女とやくざに言われて、サラ金4社から120万円を借りて、車の持ち主に渡した。

それから数日後、S君の母親は、S君の様子がおかしいと思って問いただした。

S君は、サラ金から120万円を借りている。どうして返済したらいいかわからないと言った。

S君は、働いたお金はすべて親に渡し、親から小遣いをもらっていた。

母親は驚いて、S君の恩師で町会議員をしているK氏に相談をした。

K氏と、S君とその母親がやってきた。

私は、まず、修理の見積もり書なるものを見せてもらった。

内容が殴り書きのようなひどいものだった。私は、どんな車なの、本当にその時に傷つけられたものなのか聞いた。全くわからないということだった。

見積書には、「登録番号」が書いてあった。すぐに、車の登録事項照明をとることと、板金屋にある車の写真をとるよう指示した。

なんと車は、昭和63年車だった。

写真からみると、車全体に傷があり、その傷口は、さび付いていた。昨日、今日傷つけられたものではないことは明白だった。結局、これも、車の持ち主と、彼女と、彼女が寄宿している女性と、その内縁の夫(やくざ)がぐるになって、S君から120万円をだましとったものであることが明らかだった。

このようにして得た金は、どのように使われるのだろうか。

どうもヤミ金の資金として使われているようだという。

彼女と、彼女が寄宿しているところの女性とは、毎日のようにパチンコ屋に出かけるという。

パチンコ屋で何をするのだろうか。

パチンコ屋から出てくる人に声をかける。

「幾らかご融資しましょうか?」

可愛い子に、そう言われると「2万円、借りるかな」となる。

「じゃあ、2万円ご融資しますから、1週間毎に、1万円利息払ってください」

不法に得た120万円は、一月で倍になる勘定だ。

私は、この話を聞いて、ヤミ金の広がりにおそろしくなった。

2005年12月29日