日弁連機関紙「自由と正義」
「道路交通法体系確立を求める原稿の掲載を拒否」

 私は、刑事被告人となり、速度違反取締に関して、「法務大臣」だった人が、「刑事局長」で現最高裁判所裁判官が、検事総長が、検事正が、「速度違反取締」「鼠取り」はやめねばならないと公にしていること知った。

 又、財団法人国際交通安全学会が、平成三年三月、大がかりな実勢速度の調査を行った上で、「自動車の走行速度を規定する要因に関する調査研究」と題する報告書を発表し、その中で、次のような提言をしていることを知った。

■規制速度(最高速度規制)の設置に関する提言

  1. 規制速度の設定にあたっては、現実に大多数の車が走行している実勢速度をまず考慮にいれるべきである。例えば、欧米で採用されている「85パーセンタイル速度」を参考にしたらどうであろうか。
  2. 規制速度は、それぞれの道路の線形条件、環境条件などに応じて柔軟にかつ、合理的に決定されるべきである。

■取締方法に関する提言

  1. 大部分の運転者の走行速度(実勢速度)よりも低い制限速度は、現行の取締方法を変更しないかぎり、運転者の走行速度を低めるのに効果的ではない。ここで、特に、強調しなければならないのは、速度制限という法的規制が軽視され続けていると、交通安全維持に有効な他の法的規制までが効果を失うことになるということである。
  2. 速度違反の取締は、画一的、無条件的であってはならず、交通、環境状況に応じて、特に、危険な速度違反を重点的に取り締まることのできるような方法を適用すべきである。

 ここで、参考にすべきは、推定的速度制限と絶対的速度制限という区分である。日本の現行の速度制限は後者のみであるが、前者も考慮する価値がある。即ち、推定的速度制限という方法に従えば、その地点、その時点に応じて走行速度が制限速度を超えていても、その速度が特に危険ではないと、交通管理者が判断することができれば、それは速度違反とはみなされないのである。

■道路と車両の技術的開発に関する提言

  1. 道路の安全対策として、最新の科学的技術を応用して、交通状況や天候などに対応して変化可能な可変速度標識を導入することが望ましい。
  2. 車両の安全対策として、速度の出し過ぎや、衝突の危険を運転者に知らせることができる社内警告装置を開発し、できるだけ速やかに多くの車に装備すべきである。さらに、近い将来は、最高速度制限を超えた速度では走行できないような装置や道路・交通状況によって走行速度が自動的に制限されるような装置が開発されるべきであろう。

 これらの事実を知った私は、なぜ、このような不合理な速度規制・鼠取りが旧態依然として続けられているのかを深く考えた結果、それは、「在野法曹」たる弁護士、国民の人権を守るべき立場にある弁護士会の責任ではないかと、痛切に考えるようになった。

 そして、私は、1997年3月15日、日本弁護士連合会の機関紙たる「自由と正義」に、速度取締問題に関する原稿を投稿した。

 そして、次のような呼びかけでその原稿を閉じた。


 私は、速度違反事件の被告人となって、非常に多くのことを学んだ。松宮教授の証言を聞きながら、私は、如何に、自分が不勉強であったかを学んだ。
 又、交通事故を減少させるためには運転者に刑事処罰を科すだけではだめだ、という主張が、取締を行う側の立場の人から再三されている事も知った。
 現職の検事正、現職の法務局長(現最高裁判所判事)が私が主張したと同じようなことを「日本刑事政策学会」の機関紙に発表されていることを知り、本当に驚いた。
 私は、今こそ、「誰もが納得し、大多数の人が遵守することができる」道路交通法体系の確立に向けて在野法曹たる日本弁護士連合会が、立ち上がらねばならないのではなかろうかと、考えるにいたった。

 科学的で、合理的で、納得の行く交通行政が行われなければ、交通事故を減少させる事はできないし、運転者が、真に「責任」を自覚して運転することはできないと思う。
 幼いころから、日常的に、国民に守られない交通行政の下で育った子供は、法律を守らなければならないものとは思わないだろう。
 私は、一日も早く、日本弁護士連合会が、科学的で合理的な道路交通法体制の確立のために、立ち上がることを念願している。
(以上)」

 この投稿は、「自由と正義」への掲載を拒否された。そのため、私は、ホームページを開いて、広く国民のみなさんに訴えることにした。