武富士「週間金曜日」訴える?



 武富士は、週間金曜日が「武富士残酷物語」として報道した第三者取立ての報道について、「武富士の名誉並びに信用を著しく毀損する」として慰謝料請求の訴訟を提起した。

 訴状の提出日は、平成15年3月14日である。

 訴状によると大略、次のようになっている。

1、武富士は、消費者金融業を業とする一部上場会社である。

2、記事の内容

(1) 7月5日午前8時半頃、……建物の入り口に(武富士の社員である」背広姿の若い男がいた。男は、近づいて腕をつかみ、隅に引っ張って行った。腕をつかんだまま男はメモを出して用件を話した。口の動きとしぐさで「2万円出せ」と言っているのだと理解した。「金はない」と手を振ったが、無駄だった。男は、どこかに携帯電話をかけ、終わると財布を要求した。私は怖くなって、かばんから財布を出し、『ない、ない』と振った。男は、それを奪い、1万3000円を全部抜き取った。「食費だから困る」と身振りで懇願すると500円を返した。

(2) 繰り返すがC子さんは、法的に支払い義務のない第三者だ。その無関係の人物から社員は、1万2500円を奪った。貸金業規制法21条違反は、もちろん、窃盗、恐喝罪に問われかねない事件だ。(なお、右のうち@の(武富士の社員である)は、武富士訴訟代理人が補充した箇所である)

3、違法行為

 本件記事は、武富士の社員が、債権回収のために債務者の母親で聴覚障害もある人から、その人の意思に反して、力づくで1万2500円を奪い取ったというものであり、武富士自らが、「窃盗、恐喝罪に問われかねない」と表したように犯罪的行為を行ったごとく記述したものである。そして、記事の小見出しで、「華やかなCMの陰で横行する過剰融資と強引な取り立て」としていること、及び、その社員が財布を奪う前に、「男はどこかに携帯電話をかけ」として、上司らしい人の指示を受けての行為であることをほのめかしていることからして、通常の読者が読めば、この違法取り立て行為が武富士が社員に指示命令して行わせたと理解するようになっている。

 以上のとおり、本件記事は、武富士が違法な犯罪的取り立て行為を行ったとするものであり、武富士の名誉並びに信用を著しく毀損するものである。

 しかしながら、以上のような取り立て行為が行われた事実はない。

 なお、指摘の日時ころに、武富士の社員が債権回収に出向いたところ、その母親で聴覚障害の女性が「代わりに支払う」として、1万2500円を弁済したことは事実である。また、武富士の社内規則として、家族等が任意の意思で代位弁済を申し出た場合には、それを受領できるとしているものの、その家族が障害者などの社会的弱者の場合には、それを受領しないことにしている。したがって、本件の社員の行為が社内規則違反であったことは事実である。

 しかしながら、社員が、その女性の腕をつかんだとか、「2万円出せ」と言ったとか、財布を要求したとか、財布を奪って金を抜きとったなどの行為は一切なかった。

 ようするに、この記事は、その主要な部分において、全く事実に基づかないものであり、虚報である。


 慰謝料として要求している額   5000万円
 弁護士費用            500万円


指摘の事実はない?

 ところで、「武富士残酷物語」の導入部には、次のような記載がある。

 この記事を書いた記者は、この記事を書くについて、ライターの常道として、武富士に、事実の確認をしたというのである。その際、「内部調査の結果、指摘の事実はないと認識しています。詳細については、言えません」との回答があったとしている。


 訴状には、「聴覚障害の女性から、本人の申し出があったため、支払いを受けた事実はある」が、その経緯と、内部規則違反であり、社員の責任であると記載されている。


週間金曜日の記事の詳細

「聴覚障害者からSOS」

 武富士A支店は、愛知県にある。被害者は、聴覚障害者のC子さんだ。昨年6月30日、手話通訳者GさんのもとにC子さんから急を告げるファックスが届いた。

 「毎日(債権取り立ての)電話が4〜5回鳴り(武富士社員が)マンションの下に来ています。重苦しいです。(略)お金を払いたい。そうすれば来なくなると思います。どうしたらいいですか……」(原文から意訳)武富士から借りているのは、C子さんではなく、息子だ。C子さんに支払い義務はない。

 「怖いかも知れないが払う必要はない。絶対払ってはいけない」とG子さんは念を押した。

 1週間後の7月6日、再び、C子さんからファックスが入った。Gさんは、息を飲んだ。

 「昨日朝、サラ金(武富士)の人が玄関の外で待ってました。外出しようと外に出たら財布を取られました。つらいです」

 Gさんが尋ねると、C子さんは、両手を縮めて「怖い」と繰り返し、手話で何が起きたかを訴えた。(この後に、前述の訴状に記載されている内容が記載されている)


 そして、次のような記載がある。

 男は、領収書に「1万2500円」と書き、署名を求めたが、私は拒んだ。しつこいので「K(債務者である息子の名)の母さん」と書いた。領収書にある男の名はZ。Z社員は、「(7月)16日、4万、主人に渡す」と書いたメモを残して去った。

 16日に来るから4万円用意しておけ、という意味だろう。

 C子さんは、「また来る、怖い」と何度も訴えたという。

 耳が聞こえない、話せない(助けが呼べない)、恐怖は相当なものだと、Gさんはみる。

 事情を聞いた小野万里子弁護士は、武富士側に、事実確認を求め、抗議した。A支店長は、「平穏な状態で任意に支払っていただいた」と答えたという。

 小野弁護士は、事実経過を文書で報告するよう求めた。

 すると、武富士名古屋支社の幹部が弁護士を訪れ、事実確認を保留したまま返金して謝罪したい旨提案した。

 小野弁護士は、これを拒否、再度、報告を要求した。それ以後、武富士側から連絡はないという。



感 想

 この集金を行った武富士の社員は、一生懸命、働いた。

 武富士の管理の締め日は、毎月10日であるという。管理の締め日前に、長期延滞となっている管理債権をどのようにして回収するか、悩んだ末、一生懸命働いた結果、それは「規則違反だ」と言われて、責任を取らされるということになるのだろうか。