奇妙な慣習?「武富士の振り分け!」



 私は、釧路で法律上支払い義務のない第三者にに支払いさせたということで、武富士を相手方として提起しているB子さんの損害賠償請求の代理人をしている。

 B子さんは、平成13年10月17日に、自分の名義で借りている分の支払として21,000円を支払った。この支払は、9月28日に支払わねばならないものだったが、約定返済日に遅れて支払った。この間、何度も、支払うようにとの督促を受けていた。

 ところが、10月26日になって、B子さんが支払った21,000円は支払わなかったことに取り消され、改めて、10月26日に、B子さんの支払として、10,500円、息子の支払いとして10,500円が入金処理されている。おまけに、この10月26日には、武富士の社員が、B子さんのところに集金にきて、B子さんから9,000円を息子の分として支払っている。この集金は、「ヤミ集金」というらしく、取引履歴上は、「カードなし入金」(カードを忘れたとして、カードなしにATMで入金する方法)されているのだ。

 武富士は、B子さんは、17日に支払った分を、息子の分と、自分の分に「振り分けてくれ」と言ったので、振り分けたと訴訟では主張している。

 勿論、B子さんは、そんなことは話したことはないと言っている。

 B子さんは、すでに、10日も前に自分の分として支払ったお金を取り戻すなどということは、考えることもできないことだと言っている。

 平成14年1月10日にも、武富士の社員が、B子さんのところに集金にきた。B子さんは、平成13年12月28日に支払う分を遅れていた。12月28日から再三、武富士から督促をされていた。1月10日、武富士の社員は、息子の分を支払ってくれと言ってB子さんの家に集金にきた。B子さんは、息子の分として4,000円を、自分の支払分として21,000円を持って帰ってほしいと頼んだ。B子さんは、武富士の社員は、領収書をくれなかったとはっきり記憶している。武富士の社員は、その場で領収書を渡したと主張している。

 ところで、B子さんの記憶では、領収書は、後日郵送されてきた。そして、なぜか、息子の分に13,000円を支払ったということになっていた。B子さんは、武富士の社員に後日、なぜ、息子の分に13,000円もいれたのかと文句を言ったと法廷で証言している。

 ところで、なぜか、この領収書には、B子さんの署名がない。武富士の社員の話では、B子さんが、パートで働いているところに行くために、時間がなかったから、署名をしてくれなかったと言っている。この領収書には、「午後3時5分」という記載がある。しかし、法廷では、武富士の社員は、B子さんが証言しているように、昼の時間(12時ころ)B子さんの家に行って払ってもらったと証言している。

 B子さんは、その前に息子の分を支払ってほしいと言われて支払った時に、きちんと「署名」している。

 領収書に記載されている時間は、あらかじめ、この時間ころに、訪問しようと考えていた時間を記載したのだと法廷で証言した。

 武富士は、この裁判で、この事件では、「家計のやりくり」で支払ったもので、法律上支払義務のない第三者に対して支払請求したというようなものではないと主張している。

 また、親族に「弁済」してほしいと依頼することや、「任意の弁済を促す行為」は、第三者請求にはあたらないと、正々堂々と主張している。

 業界最大手の武富士が、「お願い」は第三者請求にはならない、「任意の弁済を促す行為」は、第三者請求にはあたらないというのだから、これからは、どこの貸金業者も、そして、クレジット業者も、法律上支払義務のない第三者である親族に、「お願い」をし、「任意の弁済を促せば」よいということになるのだろうか。

 今後も、「武富士の社員」は、「正々堂々」「弁済のお願い」をし、「任意の弁済を促す」という業務を強いられることになるのだろうか。

私は、これまで、法律上支払義務のない第三者に対して請求して支払ってもらうことについてしか知識がなかった。しかし、「関連口座」ということで、「振り分け」をするということが、あるらしい。この「振り分け」ということについては、「欲望産業」(武富士元会長をモデルにしたという小説)という本にも出てくるという。「振り分け」ってどういうことなのだろうか。

本来、支払いを受けた場合には、「受け取り証書」を渡さねばならない。また、銀行振込で支払った場合にも、原則として、「受取証書」を送付するのが原則だ。武富士は、そのようなことはしていないようだ。