本人の意思に反して、勝手に他の支払いに回した!
本人の目の前で領収書を書いて渡したというのは嘘だ!
それでも違法ではない!?
武富士の第三者請求に摩訶不思議な判決出る!



 平成16年5月10日、釧路地方裁判所の井下田英樹裁判官(現在、東京地方裁判所)は、武富士による支払い義務のない第三者に対する請求であるとして訴訟となっていた事件について、次のように判決した。

 A子さんは、何回も武富士社員に、息子のS君の支払いをさせられているが、特に問題となったのは、次の2回の支払いである。


1、問題となった点についての概要

(1)武富士の慣習「振り分け」

平成13年10月17日にA子さんが支払った21,000円が、10月26日になって支払わなかったことに取り消され、息子のS君の分とA子さんの分に、半分ずつ(10,500円)振り分けて入金された。A子さんは、このようなことは全く知らなかった。

 武富士は、A子さんから振り分けてほしいと言われたので、A子さんの承諾を得て振り分けを行った。

(2)勝手に充当

 1月10日昼ころ、武富士社員が集金にきて、A子さんに、S君の分をいくらでもいいから払ってくれと言われたので、A子さんは、4,000円をS君分として支払うこと、A子さんの分として21,000円を支払うのでもって帰ってほしいと言って、25,000円を渡した。武富士社員は、その場で領収書を渡さず、後日、S君分として「13,000円」を支払ったとする領収書を送ってきたので、A子さんは、「なんで、息子のほうに13,000円も入れたのか」文句を言った。

 武富士は、最初から、A子さんが、息子のS君分として13,000円を支払うと言って約束してくれたので、集金に行って、S君分として13,000円を受取り、その場で領収書を渡した。

A子さん分は、集金をすると、新たな借入ができなくなるということをA子さんに説明して、「もってかえってATMで入金する」と言って、預かって帰った。


2、武富士の交渉履歴の記載

(1)平成13年10月26日 14:31 自宅母 銀行約付
   二人分振り分けしてください。義務なし承知

(2)平成14年1月20日  8:20 自宅母
   預かっているので来てもらいたい 義務なし承知


3、裁判所の認定した事実
(カッコ内は判決の内容がわかりやすくするために記載)

(1)A子さんは、平成13年10月17日、自分の支払として金21,000円を支払った (この支払いは、平成13年9月28日に支払うこととなっていたものである。武富士の場合は、50万円を借りた場合の約定返済は21,000円である)

 A子さんの息子のS君の支払は、平成13年7月24日弁済期分を9月7日に21,000円を支払ったが、その次の弁済期である9月25日、10月24日とも支払いがされていなかった。

 10月25日、武富士の社員がS君に電話をしたら兄が出て電話をかけ直すように言われた。武富士の別の社員が26日、A子さん方に集金に行ってA子さんに会い、S君の債務の支払として9,000円を受け取った上で、ATMで入金した (これは、カードなし入金と言われるもので、武富士の内規に違反している。武富士の帳面上は、本人がATMで入金したという扱いとなっている)

 26日午後2時31分、武富士の社員は、再び、A子さんに電話をかけたところ、A子さんが出て、A子さんが自分の分として支払った21,000円を、A子さんの分と、S君の分とに振り分けて改めて充当することとなった。武富士は、26日に、A子さんが17日に支払った21,000円を取り消して、A子の分として10,500円、S君分として10,500円に改めて充当する処理をした。

 武富士の釧路工藤支店長は、振り分けた10,500円について「あたかもA子さんが積極的に社員に申し出て依頼したかのような陳述をしているが、A子とS君の両方の延滞を解消するためとはいえ、このような技術的な処理をA子さんが主導することはあり得ず、S君を担当する武富士釧路支店の債権回収の都合上、武富士社員がA子さんを説得したものであり、A子さんから積極的に頼んだことはないと認められるから、工藤の陳述は採用することができない。

 A子さんは、武富士社員がA子さんに対して、上記の電話をかけて振り分けの承諾を得たこと自体も否定する旨の主張をしているが、これを認めるに足りる証拠はない。

(2)平成14年1月10日集金に関して

 1月10日、A子さん方を武富士社員C男が集金のために訪問し、午後0時1分から1時58分までの間に、A子さんから、S君の債務及びA子さん自身の債務の支払いとして、現金合計25,000円を受領した。武富士社員C男は、その後、A子さんの利息及び遅延損害金として12,000円をA子さんの債務に充当し、S君の利息及び遅延損害金として13,000円を、S君の債務にカードなし入金をするとの取り扱いで充当する処理を行ったが、後者の処理は武富士の内規に反するものであった。武富士社員は、その後、A子さんに対し、S君の債務の支払いとして13,000円を受領した旨を記載した領収書を郵送した。

 尚、交渉履歴明細には、武富士社員のTは、同日朝、A子さん方に電話をかけたところ、電話に出たA子さんとの間で集金のために訪問する旨を合意した旨の記載があり、C男も、同趣旨の陳述をしている。しかし、A子さんは、同日午前6時43分から勤務先の工場に出勤して午前12時1分まで同所におり、自宅において、武富士の従業員からの電話を受けることはあり得ないから、上記の交渉履歴明細の記載及びC男の証言は信用できない。

 また、C男は、25,000円のうち12,000円をA子さんの債務に、13,000円をS君の債務に充当する旨の了承をA子さんから得た上、上記の領収書をその場で、A子さんに手渡した旨の陳述をしている。しかし、C男は、武富士の内規上その場でA子さんから氏名及び住所の記入を領収書にうけるべきであっのちこの記載を欠いている。

 また、C男がA子さんと交渉をしたのは、上記のとおり、午後0時1分から1時58分までの間であると認められるのに、領収書には、「PM3時05分」との記載がされているところ、その場で、領収書を作成したのち、時刻を違えて記載することは不自然であり、別件の集金業務の予定と調整するために意図的に3時と記載した旨の説明も説得力に乏しい。

 したがって、C男が、その場で領収書を手渡したむねの上記陳述は採用することができない。また、A子さんは当時、自らの債務について毎月21,000円を支払っており、準備した25,000円の内訳は、自らの債務について21,000円とし、S君の債務には4,000円を充当する意思であったと見ることが合理的である。したがって、領収書をその場で手渡したものとは認められないことも考慮すると、13,000円をS君の債務の支払いに充てるとの承諾を得た旨のC男の陳述は、採用することができない。

 このような事実認定の次に、「違法な第三者請求であるか否かについて、次のように判決に記載している。

 A子さんは、親として支払いに苦しむS君を助けたいという心情をもっていたことが認められるが、A子さん自身も武富士に対してのものも含めて各種の負債を負い、返済も遅れがちな状況であった上、本件各取引は、S君にとっても、一時しのぎの利払いに過ぎず、抜本的な債務整理につながるようなものではなかったといえる。したがって、A子さんが、支払い義務がないことを十分に理解していれば、多数回にわたってS君のために第三者弁済を行うことはなかった可能性が強い。

 また、A子さんは、今弁護士に債務整理の相談うした際、子であるS君の債務について支払い義務を負わない旨の説明を受けて、戸惑って「払わなくても良いんですか。」と聞き返し、親が払わなければならないと考えていた旨の認識を示していた。

 上記の各点に加えて、A子さん本人尋問の結果によれば、A子さんは、本件各取引の当時、自らの責任について十分な理解を有せず、S君の債務の支払い義務を負うと誤信していたものと認められる。



 このように認定した上で、前記平成14年1月10日の分について、「S君の債務に充当された13,000円のうち、4,000円については、A子さんが支払い義務があると誤信して第三者弁済をしたと認められるが、9,000円については、前記認定のとおり、そもそも、A子さんがS君の債務に充当することを承諾したとは認められないので、武富士による弁済の受領は、やはり、法律上の原因を欠くことになると、している。


感想

 武富士の社員が法廷で、偽証をした。

 武富士の交渉履歴に書かれていることは、信用できない。事実と異なる。

 特に、前記9,000円は、武富士の社員が、A子さんから、自分の分の支払いとして21,000円を預かりながら、A子さんの意思に反して、息子のS君の支払いに充当したと、正しく、認めている。

 武富士の交渉履歴に、「義務なし承知」と記載し、A子さんが、支払い義務がないことを承知の上で、進んで、息子の分の弁済をしてくれたものだと武富士が、主張したことについて、「それば、事実とは異なる。A子さんの意思に反して、勝手に、息子の支払いとして充当した」といいながら、それでも、違法性はないという判決である。

 預かったお金を、預かった趣旨に違反して処分した場合には、それは、きわめて重大なことであり、刑法上の罪にも該当するものと考えるが、それでも、違法ではないという判決である。

 みなさんはどう思われますか。

 この判決の報道をみて、A子さんは、「納得できないので、控訴する」との意思を表明している。