2007年1月4日
収入の範囲内で生活する訓練と多重債務者!

サイト掲載: 2007年 1月 6日

 日本には、これまでどれだけの自己破産者が出たのだろうか。
 この10年位は、毎年20万人近い自己破産の件数がある。
 従って少なくとも300万人以上の自己破産者がいることになる。
 多重債務者となった人が「被害者なのかどうか?」というシンポをしたのは、もう、20年近くも前のことだ。

 私は、「多重債務者の中には、被害者もいるし、被害者ではない人もいる」と発言し、多重債務者救済に尽力している人から、猛反発を受けた。
 私は、多重債務問題の最大の被害者は、多重債務者の家族、特に、未成年の子どもであり、結婚している場合は、配偶者だと思っている。
 私の記憶に鮮明に残っている記憶では、妻が夫に内緒で多重債務者となっていた事例があった。

 夫は、自分の給料は人より少ないとは思っていない。
 小遣いも殆どもらっていない。
 それなのに、どうして、こんなに貧しいおかずしか食べさせてもらえないのだろうかと思っていた。
 妻が、こんな借金をしていることは全く知らなかった。と話したことだ。
 又、未成年の子ども、特に、幼児の生活は、子ども中心の生活であると思う。
 幼児は、自分のことだけを考えて、悪さをしたり、飛んだり、跳ねたり、好きなことをすればよい。
 悪いことをすれば、親に叱られる、よいことをすれば、ほめられる。
 親の目は、いつも幼児に注がれている。
 ところが、多重債務者となった親は、子どものことになど気をつかっていられない。
 特に、返済不能となり、厳しい返済要求の状況になった多重債務者は、幼児の存在すら目に入らない。督促の電話をすると、幼児に電話に出させ、「おかあさんはいない」と嘘を言わせる。
 しかし、多重債務者となった原因については、それぞれの家庭の問題があることが多い。
 多重債務者、その人よりも家族の他の人に真の原因があることが多い。
 主婦が多重債務者となった場合には、夫に原因があることが多い。
 妻に家計のことをすべて任せきりにして、家計の状況については殆ど無関心である。妻が完璧なやりくりをしてくれているものと思い込んでいる。
 妻から、「冠婚葬祭のために出すお金がない」と相談を受けた夫は、「俺にそんなことを相談して、俺に何をせよというんだ。俺が金を持ってないこと、お前が一番知っているだろう。小遣いだってもらわないで働いているのに。俺に泥棒でもすれというのか」と言われたことから、サラ金に手を出したというのがあった。
 完全に家計を任せられている妻は、夫の信頼を裏切りたくないというその一念で、自分の裁量でサラ金からお金を借りてしまうのだ。
 「主婦の自分には,お金なんか貸してくれないのではないか?」と思っている主婦に、サラ金は、「夫に内緒」だという担保で、お金を借りにきた主婦の希望を上回るお金を貸すのだ。
 それも、これまで見たこともない大金を。
 夫の月給は、20万円未満という主婦に、50万円ものお金を貸すのだ。
 ボーナスでも、50万円ものお金を目にしたことがない主婦に、50万円ものお金を貸してくれる。
 そこから、生活のリズムが狂ってしまう。
 妻が完璧で、きちんとしている場合、夫が妻に内緒でお金を借りると破綻する期間が非常に短いことが多い。
 40も半ばを過ぎた夫は、これまで、月1〜2万円の範囲での小遣いでやっていた。月給は、北海道の東の端の町にしては多かった。
 ある日、趣味のために3万円必要となった。妻に3万円もの小遣いをほしいとは言い出せなかった。3万円位ならボーナスのときにもらう給料で簡単に支払えると思った。
 サラ金に出向いて「3万円貸してほしい」と言った。
 年収は600万円を超えていた。サラ金は、こんな「上客」に3万円で我慢するはずがない。「50万円まで枠がある。借りてほしい」と言われて50万円を借りた。それから、仕事が終わるとパチンコに行った。しかし、1ケ月後には、50万円はすっからかんになってしまった。
 50万円を借りると約定利息と元金の一部で2万円から3万円の支払が必要となる。
この人は、毎月約定利息の支払のためのお金を借りに行った。その都度50万円の融資を受けた。半年後300万円の借金となった。
 そこで、妻に打ち明けた。

 夫 「俺に内緒でサラ金から金を借りるようなことをしたら離婚する」
 妻 「私に内緒でサラ金から金を借りたら、私は離婚させてもらいます」

 このような厳格な夫、きちんした妻の配偶者は、多重債務者になる危険性が高く、多重債務者となった場合には、それを打ち明けることができず、自殺したり、家出するというような悲劇的な結果となることが多いように思う。
 ところで、自己破産をした人が、自己破産によって「真に立ち直れるか」という問題については、きちんと議論をする必要がある。
 自己破産をした人が、被害者であるか否かは別として、その後「加害者」となる事例は、相当数ある。
 なぜ加害者となるのか。
 その原因は千差万別であるが、私が相談にのった事例では、次ぎのようなものが多い。
 知人に自分が自己破産をしたことを隠して、お金を借りてほしいと頼む。
 親族のクレジットカードを無断で使う。
 知人に「クレジット会社やサラ金に勤めている友達から頼まれた。カードを作るノルマがあるのでカードを作ってほしい。謝礼がでる。それだけだ」と言ってカードを作らせ、そのカードをカード名義人の目の前で「鋏を入れて切り廃棄し」知人を安心させて、そのカードを使う。
 知人のクレジットカードで「ほしいもの」を買ってもらい、その時にカードの番号などを覚えて、インターネットで知人のクレジットで買い物をしたりお金を借りたりする。
 身内が銀行に勤めているが口座を作るノルマがある。銀行の口座を作ってほしいと頼む。保険証を貸してもらい銀行の口座開設のための委任状を書かせて銀行の口座を作り、そのとき入手した保険証で知人の名前でサラ金から金を借りる。
等々である。
 このような加害者となる他に、多重債務者や自己破産者をターゲットにしたヤミ金から金を借りるなどする事例も後をたたない。
 自己破産者や多重債務者が、真に立ち直るために必要なことは、「収入の範囲で生活をする」という訓練をすることである。
 私は、最後に必ず「それでも、どうしても急にお金が必要だけど、手元にお金が全くない。そういうとき、どうする」と質問をすると、相談者は、夫婦で、家族で一生懸命考えて、「サラ金から借りるしかない」という答えをする人が多い。
 そういうとき、地元の自治体で緊急融資という制度がある、福祉金庫というのもある。金利なしか、あっても非常に救い金利で金を貸してくれるということを教える。「知らなかった!」「市役所で貸してもらえるのですか?」という答えが多い。
 平成18年12月、利息制限法の制限金利にまで貸金の利息をさげるという画期的な貸金業規制法の改正が行われた。
 これまでの利率では、利息は、次ぎのようになる。
 50万円の利息は、約定利率によって次ぎのようになる。

昭和58年10月末までの最高の利率 年109.5パーセントの場合月45,625円
昭和58年11月1日からの最高の利率年73パーセントの場合月30,417円
昭和61年11月1日からの最高の利率年54.75パーセントの場合月22,813円
平成3年11月1日からの最高の利率年40.004パーセントの場合月16,668円
平成12年6月1日からの最高の利率年29.2パーセントの場合月12,167円

 平成18年12月、貸金業規制法が改正され、この利率が、年20パーセントを上限とし、次ぎのようになることになった。

10万円未満年20パーセント
10万円以上〜100万円未満年18パーセント
100万円以上年15パーセント

 私は、相談者に、どうしてもお金が必要だけと、手元にお金がない。友達にお金を貸してほしいと頼んだら、友達が次ぎのように言った。
 「いいよ。10万円貸してあげる。だけど、利息、月に2500円払ってくれよ」
 私は「10万円借りて、2500円利息払うという場合、この利息について、高いと思う?安いと思う?」と聞く。
 「安い」と思う人の方が圧倒的に多い。
 利息制限法でいけば、月1500円となる。
 私は、サラ金の利子は高いと一般的に言われる。私も高いと思う。
 しかし、現実に、その利子が高いという認識がないということが、最も問題だと思う。
 改正貸金業規制法の施行までそれほどの期間はない。
 改正貸金業規制法の最も大きなことは「過剰融資の禁止」である。
 「年収の3分の1」までの融資しか行えなくするという。
 収入の範囲で生活する癖がついていない大勢の多重債務者となったことがある人、多重債務者である人が、どのような社会現象を引き起こすか、とても気になる。
 そして、真面目な人が、どれだけ、多重債務者となっことがある人や、多重債務者である人の被害者となるのか。
 多重債務者であった人や多重債務者である人に騙されたということについて、警察に相談をしても、殆ど、警察では、「事件」として取り扱わない。
 改正貸金業規制法では、「多重債務対策本部」が総理府に作られ、各地方自治体にもそれぞれ対策が求められる。実効性のある対策が確立されることを望むほかないが極めて困難な問題だと思う。