TPPによって変えられた安全基準

サイト掲載: 2019年9月25日

 日本が輸入している大豆やトウモロコシは、遺伝子組み換えなので、ラウンドアップ(グリホサート)が大量に残留し、さらに、日本の港に入るとサイロに入れて、ネオニコチノイド系農薬で燻蒸されている。
 日本がかって遺伝子組み換え作物の安全審議のさいに、モンサント社から日本政府に提出された申請書(1996年2月)では「この新しい遺伝子組み換え大豆の栽培方法では従来の残留濃度基準を超える場合がある。よって現在の基準を上げる必要がある」と安全審査とともに、残留農薬基準の緩和を求めていたのです。モンサント社はアメリカ政府も動いて、当時の大豆のラウンドアップ農薬の残留基準6ppmを1999年10月1日付けの都道府県知事と政令市長、特別区区長宛の厚労省局長通達で20ppmに引き上げたのです。アメリカでは1ppmだったのが50まで引き上げられました。

 日本で発達障害が増加している一つの要因として、遺伝子組み換え食品は、種の異なる遺伝子や抗生物質の影響とともに、国連保健機関が認定する発ガン物質のグリホサートの懸念もあります。さらに、ラウンドアップに添加されている、合成界面活性剤は変死者を引き起こすと筑波大学の教授が指摘しています。合成界面活性剤とは、植物は脂分で覆われていて、葉っぱの水分などを水滴にして下に落ちるようにしますが、植物の中に農薬が入り込むために使われ、植物の体内に取り込み、根から枯らします。さらに、もう一つ、ネオニコチノイド系農薬という、4つが人体に悪影響をもたらすのです。ネオニコチノイド系農薬は、知的発達障害や多動性などき神経を壊す農薬であり、ヨーロッパなどではどんどん使用禁止措置が取られています。

 遺伝子組み換え作物にとどまらず、魚や豚にも行われ、すでにアメリカ政府は皮をむいても変色しない遺伝子組み換えリンゴ、鮭にウナギの一種の遺伝子組み込んで、キングサーモンの3倍の大きさの遺伝子組み換え鮭を認可しました。リンゴは濃縮ジュースに、鮭はフレークになって輸入されかねません。コンビニなんかでは「100%果汁」として販売されていますが、よく見ると「濃縮還元」の表示が出ています。これは、果汁を6分の1に濃縮して輸入し、水を加えたジュースです。100%果汁といいながら、濃縮するとビタミンも香りも飛んでしまいますので、ビタミンや香料、クエン酸などを添加しています。このほかに、米、小麦、ピンク色のパイナップル、ベータカナチンが多いニンジンの色のバナナなを開発中で、それを支援しているのがモンサントとビル・ゲイツ財団です。農薬企業のデュポンはゲノム操作した小麦を開発中です。

 「遺伝子組み換えでない」という遺伝子組み換え表示が、これまでの5%混入から「不検出」となりました。これは、一見「いいことだ」と思われました。しかし、国産も輸入ものも扱っている業界にしますと、「遺伝子組み換えを使っていない」と表示して、検査したら、「検出された」ということになりますと、表示法違反、となることから、「そんなリスクを負ってまで表示する必要がない」ということで表示しなくなりました。つまり、表示制度はあっても、表示ができにくくなる、事実上表示がなくなりつつあります。そのために、国産大豆が売れなくなり、どんどん輸入ものに切り替わりつつあります。
日本の表示は加工度の高い、食用油、マーガリン、マヨネーズや甘味料などに加え、遺伝子組み換えのエサを給与した食肉や乳製品は表示の対象から除外されており、生に近いものに限定されています。これもアメリカの意向に沿ったもので、ネガティブ表示すらできなくなってきています。アメリカの一部の州やヨーロッパで行われている「遺伝子組み換え技術使用」というポジティブ表示に切り替えるべきです。

 また、遺伝子の一部を削除するというゲノム編集した食品を表示の対象から除外することを環境省が決めました。ゲノム編集は、命のバランスを崩し、いわば突然変異を作り出すものです。命あるものを機械のように分解する技術で、阿部政権がすすめる高度技術の一環として開発されています。すでに、アメリカではゲノム編集されたナタネは商業栽培されています。日本でも、国の機関がゲノム編集の米を開発しており、北大とパナソニックが大豆の開発をしています。そして、今年8月から表示もされず、ゲノム編集食品が流通されかねない事態に直面しています。
ゲノムというのはすべてのDNAのことをいいまして、DNAには生命の設計図ともいえる遺伝子が含まれています。遺伝子組み換え技術は、別の生物の遺伝子を入れることによって、農薬や害虫に強い品種をな作る方法です。
 一方、ゲノム編集技術とは、特定の遺伝子を切断して、その遺伝子の動きをとめる遺伝子を操作する新しい技術です。細胞内の遺伝子を切断する酵素を使って、特定の遺伝子に狙いを付けて、切断し、機能を失わせる、あるいは別の遺伝子を組み入れたりするものです。
遺伝子組み換えの特許権の期限が切れることから、多くのバイオ企業や農薬、種子企業がゲノム編集による開発競争を行っています。
命あるものを短期的な利益のために分解した技術には、必ずしもしっぺ返しがきかねません。福岡伸一さんの著書(動的平衡)という本では、「生命現象は本当は『メカニズム』と呼べるような因果関係に基づく機械仕掛けで成り立ってはいない。絶え間なく動きながら、できるだけある一定の状態=平衡を維持しようとしている。そういう状態にあるものに対して干渉を加えれば、一時は確かに平衡状態は移動して別の様相を示す。しかし、まもなく揺り戻しがおこる」と指摘しています。
 そのためにも、遺伝子組み換えと合せ、ゲノム編集についても「組み替え」「ゲノム編集」技術を使っているという表示をさせる必要があります。

2018年12月30日にはTPPが発効され、2019年2月には日欧EPAも発効されました。農畜産物も加工食品も無関税で輸入されることになり、ワインが安くなったと喜んでいる方もいます。しかし、輸入ワインやビール、果汁などから、農薬ラウンドアップの主成分グリホサートが検出されています。この原因は果樹園に除草剤のラウンドアップをまいて雑草をなくしているからです。ビール麦は収穫前にラウンドアップをまいて、葉っぱなどを枯らして収穫作業の効率を良くしているからです。フランスやチリなどのワインからも、オランダのハイネケン、アメリカのバドワイザー、中国の青島ビールからも確実に検出されています。
 グリホサートの残留基準は、TPP調印後の2017年12月に大幅に緩和されました。

トウモロコシ 1ppm~ 5ppm
小麦     5ppm~30ppm
なたね   0.1ppm~30ppm
そば    0.1ppm~30ppm
ひまわり  0.1ppm~40ppm
ビート   0.2ppm~15ppm

 北米では、小麦にラウンドアップを散布してから収穫した方が効率があるとして、多く使われていることから、畑作物の残留基準を引き上げて、輸入がスムーズにできるようにしたものです。その結果、アメリカ産やカナダ産の小麦からはもれなくグリホサートが残留し、その小麦を原料にした食品からも残留が確認されています。
 小麦は自給率85%、カナダ産小麦は主に、パンの原料に、アメリカ産小麦は、ラーメンやお菓子の原料に使われており、グリホサートが残留しています。
 農水省も北米産小麦にグリホサートが残留していることを認めていますが、緩和された基準内であるので問題なし、としてい製粉業界に売り渡しています。
 小麦は国が輸入して、製粉業界に売り渡す仕組みになっています。カナダ産小麦を使ったほとんどのパンや、業務用の生ラーメンは表示もないので、グリホサート入りラーメンとなっています。
 グリホサートについては、国連保健機関の国際がん研究機構が「人に対しておそらく発ガン性がある」と結論づけています。また、アメリカのカリフォルニア裁判所がラウンドアップを使ってガンになったとして、2億9千万ドルの賠償をモンサント社(バイエル)に命ずる判決を出しています。
 ヨーロッパでは、発ガン性に加え、神経毒性による発達障害(自閉症・注意欠如多動性障害、学習障害)認知証、バーキンソン病、自己免疫疾患などを引き起こすとして、使用を控える動きが広がっています。

 私を含めて、一定のお年を召した方の中には「もういい加減な年なんだから、何を食べてもいい」と思っている人もいろうかと思います。しかし、認知症などのリスクが高くなりますので、若い人や子どもたちの問題と思わず、自らの問題としてとらえていただきたいと思います。
 今、FTA・日米貿易交渉が大詰めを迎えています。政府は、盛んに交渉しているかのポーズをとっていますが、実は農産物については、ほとんど開放することにして、その見返りとして自動車関税25%を下げてもらおうとしているだけです。
 また、日本政府は交渉に入る前から、食品安全委員会に、アメリカ産牛肉の月齢制限の撤廃を答申し、どんな牛肉でも輸入しようとしています。
 同時に、ポストハーベスト農薬の基準も緩和、ネオニコチノイド系農薬基準も緩和、遺伝子組み換え食品を世界で最も食べている日本が、有機リン系農薬もネオニコ農薬も世界で一番人体に取り込むことになりかねません。
 ネオニコチノイド系農薬とは、有機リン系に代わる農薬として、1990年代に開発された殺虫剤で、新しいニコチンという意味です。その宣伝文句は「虫には良く効くが、人には安全。無臭・無色で環境保全型である」というものでした。
 しかし、実際には、水に溶けやすく、散布されると根、葉、茎、果実に浸透し、残留すると洗っても落ちない、地中に長期に残留し、河川も汚染する、神経伝達を攪乱する神経毒性があります。日本でもミツバチの大量死が相次いで報告され、その主原因であることが判明しました。
 生物多様性への破壊的影響をもたらし、他の殺菌剤とあわせて使用すると数百倍から千倍に増幅するという報告も出されています。
 私達人間にも神経毒性があり、体内に入ってから毒性が強くなる場合もあります。そきために、海外では規制が厳しくなっていますが、日本では逆に緩和され、ほうれん草では、3から40ppmにレタスは、5から10ppmになっています。

 発達障害の急増は、遺伝要因よりも環境要因が大きいことがわかってきています。マウスを使った毒性実験でも、異常行動を起こすという結果が出ています。
 国内の3歳児の尿から、ネオニコチノイド系農薬が79.8%も検出されたという報告もあり、深刻な問題となっています。ネオニコチノイド系農薬の消費量が最も多い都道府県は、東京都です。農業用として使うよりも、シロアリ駆除や・とう建材資材、スプレー殺虫剤、ゴルフ場などに多く使われています。殺虫スプレーをかければ虫はこないが、毒は寄せてしまうことになりますし、健康のためにとゴルフに行けば、神経毒を取り込んでしまうことになります。