ドイツ公証人から公証実務の実情を聞く!
親切、丁寧、そして、公正証書の内容について全面的責任を持つと断言! 公正証書に問題があれば、当然、公証人が個人責任を追求される! 驚きの連続!



 2004年3月20日から28日まで、日弁連消費者委員会は、ドイツの公証実務の実態調査のために調査団を派遣した。私もその一人として訪問させていただいたので、その感想を述べたい。


ドイツの公証人の種類(州によって異なる)

専業公証人もっぱら公証人としてのみ仕事をする。
弁護士兼公証人弁護士の仕事も公証人の仕事もするという公証人
公務員公証人この公証人は、非常に少ないという。



ドイツの公証人は、どのような人がなるのか。

 ドイツの公証人は、第二次試験(裁判官・弁護士・検察官)になる試験(日本の司 法試験のようなもの)に1番か、2番位の成績でないとなれないという。

 公証人になるには、州によって異なるが、3年から6年の試補という期間がある。すなわち、「見習い」として勉強するのである。試補としての期間が過ぎて、公証人 の欠員が出ると、応募して試験を受け、公証人になれるという。(日本の公証人は、従前は、全く「見習い」期間はなく、現在でも、1日か2日の研修があるのみであるという)

 公証人の年齢は、早い人は、30代前半になり、定年は、最近70歳に決められた という。少なくとも、59歳までには、公証人にならないといけないという。(日本では、だいたい、50代半ばで公証人になり、10年でやめるのが多いという。定年は、70歳・10年で更新されるが、現在は、前述のように50代後半位になる人が多いようだ)


公正証書に問題があった時の責任

 ドイツでは、公証人が個人責任をとらねばならない。そのため、公証人は、すべて、「損害賠償用の保険」に加入している。もし、公証人が「故意」で違法な公正証書を作成したような場合には、保険はでないので、そのために、公証人会が、別に入っている保険から、被害者に支払われる。勿論、公証人が責任をとる場合には、当事者間で損害が填補されない場合である。

 日本では、公証人は責任を問われず、「国家賠償」になっているというと、ドイツの公証人は、非常に驚いたという表情をみせていた。

 実際に、公正証書を作成する場面にも立会させていただいた。

 公証人は、約10枚はあろうかという公正証書の原案に基づき、全部、読み上げていた。当事者は、3名だった。当事者は、時々、口を挟んだ。質問しているようだった。その質問に対して、公証人が答え、公正証書の原案を訂正して、何かを記入していた。

 約1時間、公正証書の原案の読み上げが終わって、当事者が、「サイン」をし、公証人が「サイン」をした。

 感動する場面だった。

 日本の公証人も、このようにきちんと、当事者に内容を説明し、きちんと読み上げをすべきであるが、私達が問題として、「集団事件」において、このようなことは一切なされていない。

 1998年と2002年に、消費者保護のための公証人に関する法律が改正になったという。

 それは、代理人が、公正証書を作成する人と近しい関係(親族とか知人)でなければならないという規定と、公正証書の原案は、必ず14日前までに、委任者に送付しなければならないという規定だという。

 ドイツでは、金銭消費貸借関係の公正証書は殆ど作られていないという。

 公正証書の多くは、不動産の売買に絡むもので、建物建築特約付けの土地売買というようなものが多いという。建物建築特約付けの土地の場合に、建築業者が、買い主の代理人を自社の社員にするなどのことがあったことから、代理人の制限に関する規定ができたという。

 また、建築特約付け土地売買の話を「飲み屋」などで行い、すぐに、公証人のところに行って公正証書を作成するというようなことがあったため、14日前には原案を嘱託者のところに送るという改正ができたという(公証人の執務時間の制限はないが、このような公証人のことを『深夜公証人』というらしい)。

 公正証書作成の現場をみせていただき、公証人の見識ある話を聞き、本当に感動した。

 日本の公証人法が、もう60年以上も改正がなされていない。ドイツの公証人法は、随時、新しい社会的需要に応じて改正されている。EUの統合に伴う消費者保護の観点からも改正がなされたという。

 公証人法が、時代の遺物とならないよう、現代社会に真に役立つものとなるためには、公証人の自覚と、社会的要請に従った改正が必要であると思った。

 近い時期に、日本弁護士連合会では「公証人法」の改正を世に問うという。

 早く、現在社会の要請に沿う公証人法が出現することを願っている。