広告媒体の責任 その1
買取屋広告と広告媒体の責任

広告の内容

日本全国テレホンキャッシング
特別融資キャンペーン

・借入件数の多い方
・サラ金、カード返済でお困りの方
・支払が遅れがちな方
・急な出費のある方
・低金利、切り替えをと考えの方
・長期返済、一本化をお考えの方

来店不要 小口から500万円迄
資金・使途自由

当社へご相談下さい。ライフカウンセラーがあなたの悩みを解決致します。(ご相談は無料です。今すぐお電話下さい。)

最長 10年 120回払OK
実質年利7.0%から29.8%

※秘密厳守
※職種不問
※年齢、性別不問
※必要書類 免許証・国保・etc…
お支払例支払額回数
100万円21000円60回
300万円63500円60回
500万円87500円60回

全国の信頼ネットワーク機関
都(1)00000(具体的な数字が入っている)


私は、多重債務関係の話をするよう頼まれた時、このような多数の広告が掲載された雑誌(パチンコ雑誌・漫画雑誌・中古車関係雑誌等)やスポーツ新聞、チラシなどをみせて話をする。その時の参加者とのやりとりの代表的なものは、次のようなものです。

「この広告、なんの広告がわかりますか?」
「えっ、サラ金の広告じゃないんですか?」
「サラ金って?」
「お金を貸す」
「これは、お金を貸さない仮装貸金業者の広告だと思った方がいい」
「カソウ貸金業者?」
「そうです。借入件数が多くて、支払が遅れがちな人、秘密厳守で、安い利息でこんなにお金を貸して、どうするんですか?」
「そうですねえ」
「だから、これは、自分ではお金を貸さない、すでに、多重債務に陥って苦しんでいる人を二次被害に陥れる仮装貸金業者の広告なのです」
「そうですか」
「ところで、『トイチ』って、何か知ってますか?」
「はい、10日で一割の利息をとるという違法金融のことだと思います」
「それは、一昔前の話ですね。」
「えっ?なんですか?違うんですか?」
「それはね、都(1)ということなのです。」
「それ、どういうことですか?」
「そこにありますスポーツ新聞や、雑誌の広告みて下さい。」
「みんなこういう記載がありますね」
「あります。あります」
「これ、なんだかわかりますか?」
「わかりません。」
「これは、初めて、貸金業者として東京都に貸金業者登録をしたという登録番号なのです」

 つまり、この広告は、真面目に貸金業を営むつもりがない人が、4万円前後のお金を登録料として東京都の貸金業関係の部署にもって行って、貸金業者として登録を受け、多重債務者が飛びつくことを目的として出している広告なのだ。
 この広告をみて、電話をしてくる多重債務者とは、次のような会話が買わされる。

「あなたは、カード持ってますか?」
(一生懸命約定支払をして頑張っているから、まだクレジットブラックにはなっていない。だから、カードは持っている人が多い)
「はい、もっています。」
「どこのカード持っているの?」
「○○クレジットのカードと、○○信販のカードを持っています。」
「じゃあ、そのカードを送って下さい。そのカードで電化製品を買って、その電化製品の半額を融資しますから。」
「はい」

 この主婦は、都(1)業者に、カードを2枚送った。
都(1)業者は、このカードを使って次の買い物をした。

商品価格 40万円   手数料 100,800円
商品価格 30万円   手数料  75,600円

 都(1)業者は、カードの名義人に、金40万円を送金してきた。
 これは、典型的な買取屋のやり方である。
 買取屋のやり方として、カードを送らせて、買取屋のほうで商品を購入し、商品価格の約半額をカード名義人に送金してくるケースと、指定した店(殆どの場合、電化製品の量販店)の指定した商品を購入させ、その場から、商品を送らせて、やはり、商品価格の約半額を送金してくるというケースがある。
 カード名義人(多重債務者)は、商品価格と手数料の合計額の債務を新たに負担することとなる。

広告媒体の責任を追及する訴訟提起
 この事例について、このような仮装貸金業者の広告を掲載したスポーツ新聞と、買取屋を相手方として、損害賠償訴訟を提起した。(平成7年8月)
 全面的に責任を認めた買取屋から、損害賠償額の全額と、訴訟費用、慰謝料の支払を得た。広告媒体については、次のような内容の和解をした。

 被告(スポーツ新聞)は、本和解の席において、貸金業者の広告掲載に関する資料1「広告掲載条件」記載の原告の要望に対し、資料2「広告掲載に関する見解」を表明した。
 原告は、前項の表明を受け、本件訴えを取下げ、被告は、右取下げに同意する。




資料1 広告掲載条件
第一、貸金業広告の掲載にあたっては、広告掲載申込者が、登録人であるか、登録事項として届出られている者(令3条の使用人)であることを免許証その他で確認すること。
理由 仮装貸金業者の場合、現実の貸金業者登録人ではない者が、登録番号を用いて仮装貸金業務を営んでいる実態にある。
 貸金業者の場合、名板貸しは認められていないし、重要な使用人は、届出が義務つけられている。これらに違反した場合には、刑事処罰の対象となる。

第二、貸金業者登録の法人名・登録番号・電話番号・住所をスペース内に表示する。
理由 貸金業者登録に記載されていない場所、電話番号で、重要な使用人としての届出もされていない者が、仮装貸金業者として違法な活動をしている。

第三、貸金業の広告について、貸金業の規制等に関する法律・施行令・施行規則・大蔵省銀行局長通達を遵守した内容であることを確認すること。

第四、貸金業者が、現実の貸金業務を行っていくことについて、行政庁に提出した業務報告書の控を確認する。
理由 仮装貸金業者の場合には、正常な貸金業務を全く営んでいないものが多い。従って、監督官庁に貸金業規制法によって提出が届出が義務付けられている業務報告書の提出をしていないとか、業務業績を「0」とする報告を出している。全国的規模で貸金業務を営むとするにふさわしくないものの広告の掲載は、厳に排除されなければならない。





資料2 広告掲載に関する見解


 貸金業者にかかるスポーツニッポン紙に関する広告の掲載についての原告の要望に対する被告の見解は、以下のとおりである。

  1. 広告掲載にあたって広告掲載申込者が貸金業者の登録人であるか否か、登録事項として届け出られている者を免許証その他で確認されたいとの要望については、現時点では右要望どおりにできない。ただし、同業他社が、等しく右のような確認をする方針をとった場合は、その方針と同一歩調をとる。

  2. 貸金業者として登録されている者の法人名・登録番号・電話番号・住所を個別に広告掲載枠に表示されたいとの要望については、被告は、現に右要望どおり実施している。ただし、記事下広告以外の案内広告につていは、広告掲載枠が狭いため右実施はしていない。

  3. 広告掲載内容が貸金業の規制等に関する法律・施行令・施行規則・大蔵省銀行局長通達を遵守した内容であることを確認されたいとの要望については、被告は、現に右要望どおり実施している。ただし、今後、右通達が新たに出された場合、右確認をするためには、右通達がすみやかに被告に周知される体制が必要である。

  4. 広告掲載の申込をした貸金業者が現実に貸金業務を行っていることについては、行政庁に提出された業務報告書の控を確認するようにされたいとの要望については、営業上の秘密保持の問題もあり、被告は、にわかに右要望に沿えない。ただし、同業他社が、等しく右のような確認をする方針をとった場合は、その方針と同一歩調をとる。