システム金融被害者を食い物にする悪質業者出現

 平成13年7月11日午前中、システム金融から多数の借入を起こして困っているので助けてほしい旨の電話が入った。札幌の弁護士からの紹介という。相談者は、札幌近郊の小都市伊達市の建設業者の経理担当者で、社長の甥であるという。

 私は、すぐに建設会社の社長に電話を入れて内容を聞こうとしたが、社長の答えは曖昧であった。私は、「あなたが借りたんじゃないの?」と聞くと、「実は、経理をやっている甥がやっていた」という。「それでは、甥に代って頂戴」というと、「今、ちょっと、いないので、甥から電話を入れさせる」という。

 それから、暫くして、甥と名乗る人物から電話が入った。私は、今日来る小切手が何通あるのか、明日は幾ら回ってくるのか、明後日は幾ら回ってくるのかの概算を聴き、すぐに関係書類を作ってFAXすることと、今日回ってくる分については、「異義供託をする」よう指示した。

それから、1時間もしたであろうか。建設会社の社長から電話がきた。「甥と言ったのは甥ではない。自分がシステム金融から3件程借りていたら、札幌から電話が入った。あんたを助けてあげる。システムは、弁護士にFAXさせれば、小切手や手形を回さないようにできる。私に任せておけ」と言ったという。そして、Kと名乗るその男は、毎日のように多数のシステムから金を借りつづけた。

その内容は、次のようになっている。

借入日業者の名称送金額(借入額)支払総額
平成13年7月2日協和600,000円832,000円
平成13年7月2日日商565,000円780,000円
平成13年7月3日三英800,000円1,100,000円
平成13年7月4日パートナー400,000円560,000円
平成13年7月5日JCS370,000円600,000円
平成13年7月5日カスミ産業370,000円500,000円
平成13年7月5日ニチロ産業500,000円650,000円
平成13年7月6日エルド495,000円650,000円
平成13年7月6日クレディトーコー450,000円720,000円
平成13年7月6日ドルフィン600,000円800,000円
平成13年7月6日サンライズ
コーポレーション
324,000円539,000円
平成13年7月9日コスモプラン280,000円375,000円

 平成13年7月2日は、月曜日で7月6日は金曜日である。この間に借りた額は総額で5,474,000円である。
7月7日・8日は土曜・日曜である。7月9日には28万円を借りて、この日初めて2業者に26万円と15万円を支払っている。

7月11日に3業者に対して、35万円・40万円・416,000円を支払わなければならない状況になった。
合計で966,000円である。Kは、この日、知り合いの弁護士に相談して支払わなくてもよいようにすると言って、札幌市内の弁護士を、アイウエオの順番に回ったようである。

 断られたり、無理だから破産するほかないと言われたりして、結局、私のところを紹介された。
 相談者の社長は、Kが相談していると言った札幌の弁護士の事務所に電話をして、間違いなく相談にのってもらっているかどうかを確認したところ、「相談にはのっていない」と言われたことから、騙されたということがわかったという。札幌の弁護士は、すぐに、警察に相談するよう指示した。そして、私にも前述のような電話が入ったのだった。

 私は、警察に相談していることは、伏せて、Kにすぐに関係書類を返還するよう説得したが、Kは、異常に気がついたのか、言を左右にして素直に書類の返還に応じなかった。

 ともかく、すぐに、借入先などを記載した書類を送るよう説得して、ようやく送らせた内容が、前述のようなものだ。

 この借入をみて、すぐに、相当システム金融に通じているものがやったことだとわかった。  システム金融の支払期間は、ほぼ、10日である。その10日の間に、これだけ、システム金融としては、利息の安いところで、融資額の多いところから、よく借入をしたものだと思う。これは、明らかに詐欺である。返済の意思なく、弁護士を利用してこれだけの金を入手しようとしたのだから。

 今後、この事件の推移がどうなるか、わからない。

 しかし、悪質違法業者が跋扈する中で、さらに、その上前を跳ねる悪質犯罪者が跳梁するということに、愕然とする。

 社長の甥を名乗るこの男は、Kと名乗っているが、それが本名かどうかもわからない。札幌近郊の零細業者が、このような被害者となったということに、さらに驚いている。

 生き馬の目を抜く、東京などの大都会では、どのような悪質な金融犯罪が横行しているのだろうか。