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K.486 ジングシュピール「劇場支配人」
Der Schauspieldirektor. Comedy with music in an act
序曲 Presto ハ長調
- アリエッタ (H) 「別離の時の鐘は鳴り」 Larghetto - Allegro moderato ト短調
- ロンド (S) 「若いあなた!」 Andante - Allegretto 変ホ長調
- 三重唱 (S, H, V) 「私がプリマ・ドンナよ!」 Allegro assai 変ロ長調
- ヴォードヴィル (全員) 「芸術家は誰も栄光を求めて努力する」 Allegro ハ長調
登場人物
- H = Madame Herz (心) S
- S = Mademoiselle Silberklang (銀の響き) S
- V = Monsieur Vogelsang (鳥の声) T
- B = Buff (buffo 滑稽) B
編成 : fl*2, ob*2, cl*2, fg*2, hr*2, tp*2, tb*2, timp, vn*2, va*2, vc, bs
作曲 : 86年1〜2月初 ウィーン
シュテファニー詞。オランダ総督がウィーンへ来る祝典のためにヨーゼフ2世が依頼した。
オペラというより田舎芝居であり、モーツァルトは腕をふるうことができなかった。
同時にサリエリも皇帝から依頼を受けたが、そちらの台本「初めに音楽、次に台詞 Prima la Musica e poi le Parole」は非常に機知に富んで面白く、2月7日にウイーンのシェーンブルン宮で一緒に初演された際、「支配人」に人気は集まらなかった。
作曲料はモーツァルトに50ドゥカーテン、サリエリにはその倍だった。しかも歌手たちにも平均50ドゥカーテンだった。
初演のときの配役
- 興行師(劇場支配人)フランク ・・・ シュテファニー
- 銀行家アイラー ・・・ ブロックマン
- ブッフ ・・・ ヨーゼフ・ランゲ
- ヘルツ ・・・ ワイドマン
- マダム・ヘルツ ・・・ ランゲ夫人アロイジア
- マダム・プファイル ・・・ サッコ夫人
- マダム・クローネ ・・・ アダムベルガー夫人
- フォーゲルザング ・・・ アダムベルガー
- マダム・フォーゲルザング ・・・ シュテファニー夫人
- マドモアゼル・ジルバークラング ・・・ カヴァリエリ嬢
モーツァルトの自作目録に「1幕の音楽つきコメディー Komoedie mit Musik in einem Akt」と記したこの1幕10場から成る劇の第6場まではただの芝居。第7場でようやくモーツァルトの音楽が登場し、ヘルツ(心)夫人がト短調で始まるアリエッタを歌う。
そこへジルバークラング(銀の響き)嬢が売り込みに来て、プリマ・ドンナ選びの三重唱になる。最後に四重唱となり、仲良く閉じる。
- スウィトナー指揮シュターツカペレ CD.108 t=4'08(序曲)
- テ・カナワ S, グルベローヴァ S, 他、ウィーンPO CD.186 t=23'27
- ナドール S, ラキ S, 他, アーノンクール指揮 CD.491 t=22'04 ; 1986
1786年2月7日の初演後、11日、18日、25日の3回上演されただけで、忘れ去られた。モーツァルトの死の直前、1791年10月24日、ワイマールでゲーテがチマローザのオペラ「貧乏な興行師 L'impresario in angustie」をドイツ語に翻訳し、この「劇場支配人」の音楽をつけて上演した。
そちらの方はかなり人気があったという。ただし、それはモーツァルトには知らないことであった。
K.492 オペラ・ブッファ「フィガロの結婚」序曲と4幕28曲
Le nozze di Figaro. Opera buffa in 4 acts
第1幕
- 二重唱 (Fi, Su) 5、10、20、30、…
- 二重唱 (Fi, Su) 奥様が夜中にご用の時は
- カヴァティーナ (Fi) もしも踊りをなさりたければ
- アリア (Ba) 仇討ち、そう仇討ちこそ
- 二重唱 (Su, Ma) どうぞお先に、すてきな奥様
- アリア (Ch) 自分で自分がわからない
- 三重唱 (Su, DB, Al) 何たることだ、その女たらしを追い出せ
- 合唱 (Fi, 村の若者) 娘たち、喜んで花を撒きたまえ
- アリア (Fi) もう飛び回れないぞ、愛の蝶よ
第2幕
- カヴァティーナ (Ro) 愛の神様、慰めの手を差し伸べて下さい
- アリエッタ (Ch) 恋とはどんなものなのか
- アリア (Su) こっちへ来て、膝をおつきなさい
- 三重唱 (Su, Ro, Al) スザンナ、出ておいで
- 二重唱 (Su, Ch) 開けてよ、はやく、スザンナ
- フィナーレ (全員) 出て来い、ふらちな小僧め
第3幕
- 二重唱 (Al, Su) ひどいぞ、今までじらして
- アリア (Al) ため息をつきながら召使の幸せを見るのか
- 六重唱「この抱擁は母であることの証」
- レチタティーヴォとアリア (Ro) 今はどこに、あの甘く楽しい思い出は
- 二重唱 (Su, Ro) そよ風が「手紙の二重唱」
- 合唱 (村娘) どうぞお受け取り下さい、奥方様
- フィナーレ (全員) さあ、行進曲ですよ。参りましょう
第4幕
- カヴァティーナ (Bb) なくしてしまった。どうしよう!
- アリア (Ma) 牡山羊と牝山羊は
- アリア (DB) 人生経験も乏しく
- アリア (Fi) ちょっとは目を開けて見ろ、恋に盲目な男よ
- アリア (Su) とうとうその時が来たわ、早くおいで、美しい喜びよ
- フィナーレ
登場人物
- Al = Almaviva伯爵 B
- Ro = Rosina(伯爵夫人)S
- Su = Susanna S
- Fi = Figaro Br
- Ch = Cherubino S
- Ba = Bartolo
- Ma = Marcelline
- DB = Don Basilio
- Bb = Barbarina
編成 : fl*2, ob*2, cl*2, fg*2, hr*2, tp*2, timp, vn*2, va*2, vc, cb
作曲 : 85年10月末〜86年4月29日 ウィーン
ボーマルシェ、ダ・ポンテ詞。
物語は「セビリアの理髪師」の続編にあたる。内容は伯爵夫人に仕えるフィガロとスザンナの結婚直前の騒動。原作のボーマルシェの喜劇はパリを始めヨーロッパ各地で人気があったが、
ウィーンでは上演禁止となっていた。それをダ・ポンテは原作から政治色を除き、オーストリア皇帝から上演許可をもらった。初演は5月1日ウイーンのブルク劇場で。
ほとんど全部の曲がアンコールされた。年内に9回上演された。そのうち2回はモーツァルト自身が指揮をしたという。
cf : 海老沢敏「モーツァルトは祭」1994(pp.107-119)
cf : 礒山 雅「モーツァルトあるいは翼を得た時間」 1988(pp.88-111)
cf : ケーラー「モーツァルトの作曲方法」1967(モーツァルト探究 pp.244-273)
- フェルゼンシュタイン演出、オーバーフランク指揮 LD.7 t=164分 ; 1976
- ホール演出、プリチャード指揮グラインドボーン LD.9 t=180分 ; 1973
- モッフォ S, ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団・合唱団 CD.551-2 t=152'43 (全曲) ; 1959
- ベーム指揮 CD.60(ハイライト)
- スウィトナー指揮シュターツカペレ CD.108 t=3'59(序曲)
- プリチャード指揮ウィーンPO CD.186 t=4'21(序曲)
- グルベローヴァ S CD.161 (27) t=4'44
- シュワルツコップ S CD.239 (6) t=2'35 (10) t=3'41 (11) t=2'53 (19) t=5'51 (27) t=5'12
- グラーフ指揮モーツァルテウム CD.341 (23)行進曲 t=2'03 ; 1988
- ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ CD.488 t=4'36(序曲) ; 1988
- デスデリ Br, 他 CD.377 (10) t=3'39 (11) t=3'44 (12) t=2'53 (28) t=3'01 ; 1959-1987
- オッター MS CD.553 (11) t=2'47 ; 1995
- スカルトゥリーティ Br CD.562 (15) t=4'43 ; 1996
編曲
- 山下和仁, 尚子 g CD.226 (11) t=2'36 (9) t=3'20 (23) t=2'07 (22) t=1'45 ; 1991, 山下編曲
- 高橋美智子 glass harp CD.210 (11) t=3'06 ; 毛利蔵人編曲, チェンバロ伴奏
- カツァリス p CD.395 (3) t=t'44 ; 1992, ベートーヴェン編曲
- カツァリス p CD.395 t=10'23 ; 1992, ツェルニー編曲
- モッツァフィアート CD.399 t=18'39 ; 1992, ザルトリウス編曲
- シュルツ fl, シェレンベルガー ob CD.416 t=12'56 ; 1987, 編者不詳
- ブダペスト管弦Ens CD.418 t=8'47 ; 1989, ヴェント編曲
- トリオ・ディ・クラローネ basset-hr CD.493 t=8'29 ; 1985, R.Schottstadt編曲
- シュタドラー・トリオ basset-hr CD.557 t=9'42 ; 1996
ダ・ポンテの回想
モーツァルトのために私が書くことになっていたドラマについて、私ははっきりした考え方をしていた。彼の才能の大きさからして、
大きく複雑で高尚な素材が要求されるものと理解していた。ある日、彼と話していると、彼は私にボーマルシェの芝居「フィガロの結婚」をオペラにするのは簡単かとたずねた。
この提案は私の気に入り私は約束した。しかし大きな障害があった。というのは、皇帝により、この芝居が一般人向けには自由に書かれ過ぎているという理由でドイツ劇場で
上演することが禁止になったばかりのところだったのだ。
マイケル・オ・ケリーの回想
3つのオペラがテーブルの上に並んだ。レジーニ、サリエリ、モーツァルトの作品だ。3つの作品はほぼ同じ頃に上演可能の運びになり、初演を争っていた。
3人の性格はそれぞれ異なっている。モーツァルトはまるで火薬のようにすぐ火のつく男で、もし自分の作品が最初に上演されなかったら、スコアを火の中に放り込んでしまうと言っていた。
その反対に、レジーニはモグラのように闇の中で、秘かに優先権を得るための工作をした。宮廷楽長サリエリは利口で鋭い男で「ひねくれた知恵」の持ち主だった。
私は最初のオーケストラによるリハーサルのことを憶えている。モーツァルトは深紅のコートを着て、金のレースのついた礼帽をかぶり舞台に立っていた。
フィガロの歌「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」で、ベヌッチが活気に満ちた堂々とした声で歌った。モーツァルトは小さな声で「いいぞ、ベヌッチ」と何度も言っていた。
そしてベヌッチが「ケルビーノ、進め、勝利へ、軍の栄光へ」という結びのところまでくると、ものすごい大声を出した。その効果は電撃のようで、
舞台上の出演者たちもオーケストラも、皆がいっせいに喜びの感情に包まれたかのように「ブラヴォ、万歳、偉大なモーツァルト」と連呼した。
小柄な先生は何度もお辞儀をして、熱狂的な拍手に答えていた。
[Home|Top] Aug. 7, 1999