在宅分請求-公費のある例

公費負担があると、請求明細欄と請求額集計欄の記入が少しめんどくさくなります。2種類以上の公費がかかわる場合はもっと面倒です。

保険優先公費の場合の原則は、まず介護保険の請求分(90%)を計算し、次にそれぞれの公費の給付率から90%を引いて計算します。たとえば、結核予防法の一般患者医療の給付率は95%ですから、対象となる単位数x(95−90=5%)に単位数単価をかけた金額が公費請求分になります(計算の仕方は、正確には単位数x単位数単価で金額を出しておいて、それに給付率をかけることになっています)。残りが利用者負担になります。

この際注意しておかねばならないことは、全てのサービスが給付対象とはならないことです。たとえば、特別対策(低所得者対策等)の給付対象は訪問介護だけで、ほかのサービスは対象になりません。それぞれの制度の給付対象をしっかり確認しておく必要があります。複数の公費の場合はそれぞれ給付対象が違っていることが多いし、合計欄が足りなくなるので、明細書が2枚以上必要になるわけです。

公費を適用していく順番は決まっています。下の表を参照してください。生活保護法の「介護扶助」は介護保険の給付対象すべてについて100%給付ですので、これより下位はありません。

☆公費とは?

公費負担は公衆衛生関係(結核予防法など)と、社会福祉関係(生活保護など)の2つに大別されます。

保険優先公費の一覧(適用優先度順)
項番 制度 給付対象 法別番号 資格証明等 公費の給付率 負担割合 介護保険と関連する給付対象
結核予防法「一般患者に対する医療」 結核に関する治療・検査等省令で定めるもの 10 患者票 95 介護保険を優先し95%までを公費で負担する 医療機関の短期入所療養介護、および介護療養施設サービス(食費を除く)
結核予防法「従業禁止,命令入所者の医療」 従業禁止,命令入所者に対する医療 11 患者票 100 介護保険優先利用者本人負担額がある 従業禁止者の訪問看護、居宅療養管理指導
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律「通院医療」 通院による精神障害の医療 21 患者票 95 介護保険を優先し95%までを公費で負担する 訪問看護
身体障害者福祉法「更生医療」 身体障害者に対する更生医療(リハビリテーション) 15 更生医療券 100 介護保険優先利用者本人負担額がある 訪問看護,訪問リハビリテーション,医療機関の通所リハビリテーション、および介護療養施設サービス
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律「一般疾病医療費の給付」 健康保険と同様(医療全般) 19 被爆者手帳 100 介護保険を優先、残りを全額公費 介護老人保健施設サービスを含め医療系サービスの全て
特定疾患治療研究事業について「治療研究に係る医療の給付」 特定の疾患のみ 51 受給者証 100 介護保険優先利用者本人負担額がある 訪問看護,訪問リハビリテーション,居宅療養管理指導,及び介護療養施設サービス
先天性血液凝固因子障害等治療研究事業について「治療研究に係る医療の給付」 同上 51 受給者証 100 同上 同上
特別対策(低所得者対策等)

低所得者の利用者負担の経過措置

障害者施策利用者への支援措置

56

57

受給者証 97 介護保険を優先し残りの7%を公費で負担する 訪問介護
生活保護法の「介護扶助」 介護保険の給付対象サービス 12 介護券 100 介護保険優先利用者本人負担額がある 介護保険の給付対象

☆記入例:ここでは、特別対策(低所得者対策等)を例にとって説明します。

低所得者特別対策は、給付対象が訪問介護のみです。ある事業所が訪問介護と訪問入浴介護のサービスをおこなったとします(地域は甲地)。

黄色でマーキングしている部分が公費にかかわる部分です。

訪問介護のみが公費対象単位数になります。G公費単位数に5460を記入、公費請求額は《G公費分単位数xH単位数単価》x(公費給付率-保険給付率)−L公費分本人負担の計算です。(ここで《 》は少数点以下切り捨て)。

当然利用者負担額は、公費請求分と公費分本人負担額を足した分少なくなります。

電卓だとやや大変です。エクセルのシートを使ったほうが簡単でしょう。


☆ で、複数公費の場合は・・・

公費を適用していく順番は上の一覧表のとおりです。。
請求明細書の枚数は組合せにより、以下の表のようになります。なお、ここで生活保護の単独請求というのは、介護保険の被保険者でない生活保護受給者へ介護サービスを提供した場合も、この請求書で請求するためです。

組み合わせ

明細書枚数

記載方法
保険+生活保護 1枚 保険請求と併せて生保の請求額を公費請求額欄で計算
生活保護の単独請求 1枚 生保の請求額を公費請求額欄で計算
保険+公費負担、生活保護 2枚 1枚目で公費負担の請求額計算を行い、2枚目で生保の請求額を計算
保険+公費負担併用 1枚 公費負担医療の請求額を公費請求額欄で計算
生活保護+公費負担併用 2枚 1枚目で公費負担の請求額計算を行い、2枚目で生保の請求額を計算

基本的には1種類の公費と同じ手順をふみます。計算をサービス種類ごとにおこなって、後で集計すればよいだけの話です。厚生省の参考資料にはものすごく難しそうな図が出ていますが、これは無視した方が精神衛生に良いです。

2種類の公費の場合、サービス種類によって次の4つのパターンがあります。

公費の給付対象のパターン

計算式(省略しています)

公費1請求分

公費2請求分
介護保険給付のみ

なし

なし
介護保険給付と公費1の給付対象

(公費1給付率−90%)

なし
介護保険給付と公費2の給付対象

なし

(公費2給付率−90%)
介護保険給付と公費1かつ公費2の給付対象

(公費1給付率−90%)

(公費給付率−公費給付率)

ここで、生活保護だけは電卓の計算がほとんど必要ありません。なぜなら生活保護は、介護保険の給付項目全てに対して100%給付だからです。つまり、原則としては、利用者負担分を生活保護の欄に移動すればよいわけです。公費2が生活保護なら、公費1種類の場合と計算の手間は変わりません。

ということで、私のエクセルのワークシートも、1種類の公費のみ対応としています。かなりの部分がこれで間に合うのでは?と思っていますが・・・・・

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☆エクセルワークシートで公費を計算するときの注意:
@公費の給付率を入力してください。プルダウンメニューから選びます。
A計画単位数、公費分本人負担をそれぞれ公費の給付対象のサービスに入力します。
B公費分単位数の欄にはデフォールト(何もしないとき)はF給付単位数がそのまま入っています。これでは計算が合いませんから、給付対象でない欄にすべて0を入力してください。
C100%給付の場合、利用者負担に1円がつく場合があります。これは公費のほうに加算してください。

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