介護保険制度における指導及び監査について

(厚生省全国老人保健福祉関係指導監査等担当係長会議資料)

5月12日付けで厚生省からサービス事業者等に対する監査・指導の指針が示されました。国→都道府県→市町村(保険者)→サービス事業者への指導・監査の流れを示したものです。

要点については介護保険情報3(ここ)をみてください。

(1)指導及び監査の基本的考え方について
介護保険に関する指導及び監査は、市町村(保険者)
指導においては、介護保険制度の保険者としての市町
村事務が自治事務であることを念頭に制度運営が健全
かつ円滑に行われるよう必要適切な助言指導につとめ
ることが重要であること。また、事業者の指導におい
ては、多様な事業者の自主性を尊重しつつ、介護サー
ビスが利用者本位の制度となること及び利用者の権利
擁護、苦情解決、情報開示、サービス評価などの利用
者支援の仕組みを前提として、「介護保険制度運営の
健全化」、「介護保険事業の継続性、安定性の確保」、
「全国的に整合性のとれた適正な保険給付の確保」、
「介護サービスにかかる指定基準の遵守状況」、「介護
サービス利用者の利益保護」などの観点から、国及び
都道府県は、市町村(保険者)、介護保険施設及び介
護サービス事業者(以下「介護サービス事業者等」と
いう。)に対して、定例的な指導に重点をおいて実施
する必要があること。
しかしながら、法律、政省令、指定基準等の違反、
介護サービス賞用の不正請求や不適切な介護サービス
の提供が明らかになった場合には、介護保険制度の信
頼維持及び利用者保護の観点から、厳正に行政監査を
実施する必要がある。

(2)都道府県に対する指導指針等について
都道府県知事が行う市町村(保険者)、介護サービ
ス事業者等に対する指導及び監査について、介護保険
法第5条の規定をはじめ、第24条、第76条、第83条、
第90条、第100条、第112条及び第197条の規定に基
づき実施することとなるが、これらの事務は、地方自
治法上においては自治事務と整理されていること。
このため、厚生大臣は都道府県に対して、地方自治
法第245条の4、第245条の5の規定に基づき「資料の
提出、技術的な助言、必要な指示、是正の要求、勧告」
とした関与を行うこととなることから、今回、「介護
保険市町村(保険者)指導指針上「介護保険施設等指
導指針」及び「介護保険施設等監査指針」について、
この「技術的助言」の一環として示すこととしたもの
である。なお、これらの指導指針の中に含まれる「主
眼事項・着眼点」は、現時点で指導目標として実施が
必要と思われるものを事項として整理したものである
こと。

(3)行政における役割分担について
ア 国の役割としては、制度の設計・管理に責任を有
する立場及び公費を拠出している立場から、全国的
に一定の指導及び監査の水準を維持するため、次の
業務を行う。
@都道府県に対し、自治事務として実施する介護保険
法に係る介護保険事務に関する指導
A市町村(保険者)に対し、自治事務として実施する
介護保険事業に対する指導
B都道府県の区域を超えて広範囲な活動を行う介護サ
ービス事業者等に対する指導
C特に重点指導が必要な介護サービス事業者等に対す
る指導
D緊急時の介護老人保健施設に対する行政監査(指定
介護老人福祉施設は老人福祉法、指定介護療養型医
療施設は医療法で実施)
イ 都道府県等の役割としては、公費を拠出している
立場、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われ
るよう、適正かつ効率的な保険事業運営及び適正な
保険給付等の確保を図るため、次の業務を行う。
@市町村(保険者)に対し、自治事務として実施する
介護保険事業に関する指導
A定例的な介護サービス事業者等に対する指導
B介護サービス事業者等に対する指定基準違反、不正
請求等の行政監査
C緊急時の介護老人保健施設に対する行政監査(指定
介護老人福祉施設は老人福祉法、指定介護療養型医
療施設は医療法で実施)

(4)指導指針等の内容について

ア 指導指針
@国は各都道府県、政令指走都市、中核市等(以下
「都道府県等」という。)に対し、介護保険事務に関
する「指導指針」を示し、それに基づき、都道府県
等が指導を実施。(国も合同指導の場合に参画)
A指導指針は、地方分権及び規制緩和等を踏まえ、ま
た民間事業者も多く参入することから、法律事項、
政省令及び解釈通知等の事項を基本に法的根拠等を
明確にした指導事項とした。
B具体的な「指導指針」の内容としては、指導の目的、
指導の方針、指導の実施方法(実地指導、集団指導、
書面指導)を規定するとともに、指導のポイントと
なる「主眼事項・着眼点」を含めたものとした。
イ 監査指針

@国は各都道府県等に対し、不正等への厳正な対応を
図るため「監査指針」を示し、それに基づき各根拠
法律に沿って行政監査を都道府県で実施。なお、国
は、大規模な不正請求等の場合に合同で指導を実施。
A具体的な「監査指針」の内容としては、不正等の事
実の把握、解明と適切な措置(行政処分、経済上の
措置)について規定。

(5)指導の実施方法について

ア 指導方法
指導方法としては、介護サービス事業者等を指導内
容に応じたグループに分け、保険給付等対象サービス
の取扱い、介護報酬の請求、制度改正内容等について、
講習等の方法により指導を行う「集団指導」とサービ
ス事業者等で実地指導の必要がないか、集団指導が未
実施となっているサービス事業者等に対して、簡便な
面談方式により指導を行う「書面指導」とサービス事
業者等の事業所において実地に行う「実地指導」を効
果的に組み合わせて効率的、重点的に実施するものと
すること。

イ 実地指導の実施回数等
実地指導は、介護保険施設については、原則2年に
1回、介護サービス事業者(但し、みなし指定の介護
サービス事業者を除く。)については、原則3年に1回、
実地にヒアリングの方法により指導を行う。
なお、複数の事業を実施している事業者の場合には、
原則として、同一敷地内にある施設、事業所について
は、同時に指導を実施し、異なる場所にある場合は、
個々の事業所ごとに指導を実施すること。

(6)介護保険法における都道府県と指定都市等との
連携について

ア 介護老人保健施設関係

介護保険法において、介護老人保健施設については、
都道府県が「許可」等に関する権限を有しているとこ
ろであるが、「指導監査」の権限については、都道府
県以外に、指定都市、中核市、保健所設置市、特別区
(以下「政令市等」という。)も有しているところであ
る。
このため、政令市等が実施した指導監査において、
許可取消し等を含む行政処分が必要となった場合に
は、当該政令市等では権限がなく行政処分を実施でき
ないことから、都道府県との間において、十分な連携
を図る必要があること。
具体的な連携の方法としては、都道府県の介護老人
保健施設開設許可等の担当と政令市等の指導監査担当
が同時に実地の指導監査を行うとともに相互のヒアリ
ング事項の調整、指摘事項の整理などの工夫を行う必
要があること。

イ 指定介護老人福祉施設関係

指定都市及び中核市が行う特別養護老人ホームの指
導監査に当たっては、介護保険法の指定介護老人福祉
施設への指導監督権限を有する都道府県が行う指導と
同時に実施するなど、都道府県と指定都市及び中核市
が十分な連携を図る必要があること。

ウ 指定介護療養型医療施設関係

都道府県が行う指定介護療養型医療施設の指導監
査に当たっては、医療保険各法及び老人保健法に基
づき地方社会保険事務局及び都道府県が行う指導監
査の担当部署や、医療法に基づき都道府県、保健所
設置市及び特別区が行う医療監視の担当部署とも連
携の上、その円滑かつ効率的な実施を図る必要があ
ること。

(7)重点的な指導の実施について

ア 市町村(保険者)の指導

平成12年3月の課長会議において指示した「適正な
被保険者の資格管理」「適正な要介護認定・要支援認
定」「適正な保険給付」「適正な会計処理」等の重点的
な指導を行うとともに、特に次の事項について指導の
徹底を図る必要があること。
@苦情の処理
介護サービスの利用者からの苦情・相談等に対する
対応については、介護保険制度を健全に維持する上で
大変重要なものであることから、市町村(保険者)の
苦情処理体制の整備、迅速かつ適切な処理、国民健康
保険団体連合金及び都道府県との連携等について、十
分な指導の徹底を図られたいこと。
A広報等について
市町村(保険者)が介護保険事業を円滑かつ適切
に運営していくためには、地域住民の方々の介護保
険制度に対する十分な理解が極めて重要であること
から、制度の趣旨及び内容について積極的に広報等
を市町村(保険者)が行うよう指導の徹底を図られ
たいこと。

イ 介護サービス事業者等に対する指導

@介護サービス事業者等に対する指導に当たっては、
人員、設備及び運営に関する基準の遵守及び適切な
介護報酬の請求事務について十分な指導の徹底を図
るとともに、特に次の点に留意して指導に当たられ
たいこと。
なお、介護サービス事業者等の指導に当たっては、
不祥事の未然防止について万全を期する必要がある
が、万一不祥事等(事件、事故、不正請求及び不当
なサービス)が発生した場合は、速やかに関係各課
と調整の上、当室へ報告されたい。
(ア)介護サービスの取扱方針
介護保険施設等においては、介護サービスの提供
に当たって、緊急やむを得ない場合を除き、身体的
拘束その他入所者の行動を制限する行為を行っては
ならないとされていることから、特に利用者の権利
保護の観点に立ち、介護保険施設等として「緊急や
むを得ない場合」の判断状況等について十分な記録
等を行うなど、日常的な身体的拘束等が生じないよ
う指導の徹底を図られたいこと。
(イ)利用料等の受領
介護サービス事業者等の利用料等の受領について
は、人員、設備及び運営に関する基準等でその取扱
が定められているが、保険給付対象のサービスと明
確に区分されにくい「あいまいな名目による費用の
受領」が行われると、保険給付そのものの信頼を失
うこととなるので、適切な利用料等の受領が行われ
るよう指導の徹底を図られたいこと。
A介護保険制度に移行した「介護老人保健施設」及び
「指定介護老人福祉施設」については、平成12年度
の指導の対象としては、従来の手法による平成11
年度事業実績に対する指導と平成12年度の事業状
況の指導が考えられることから、上記の他、次の点
に留意して指導の実施に当たられたいこと。なお、
不正等が認められた施設については、行政処分等を
含め厳正な対応を行われたいこと。
(ア)施設運営関係
基本的には、平成11年度の事業実績について確
認を行うが、問題を生じた事項については、平成
12年度の指定基準等も考慮して指導を行うこと。
(イ)入所者処遇関係
平成12年度の介護サービスの適切な提供状況に
ついて指導を行うこと。
(ウ)会計経理関係
平成11年度の経理処理及び決算等が適切に行わ
れているか。また、平成12年度会計への移行は適
切に行われているかについて指導を行うこと。
ウ 老人保健施設実地指導実施状況の提出について
平成ll年度において、各都道府県等が実施した老
人保健施設に対する実地指導の実施状況を把握したい
ので、その実施状況を「老人保健法による老人保健施
設の指導について(昭和63年6月6日健医老第81号)」
の別紙様式2の様式に準じて作成し、平成12年7月末
日(必着)までに提出願いたい。

(8)地方厚生局における介護保険施設等の指導につ
いて

平成13年l月6日より全国7カ所に厚生省の地方支
分部局として地方厚生局が設置されることとなってお
り、介護保険法、老人福祉法及び社会福祉事業法等の
指導監査関係の事務について、その一部を業務移管し
分掌させることとしている。平成12年末までに地方
厚生局全体の組織体制、業務内容等が決定されること
から、決定され次第速やかに各都道府県、指定都市及
び中核市等に情報の提供を行うこととしているので留
意されたい。

■指定介護サービス事業者等に対する指導,及び監査に
おける経済上の措置(介護給付費の返還)フロー(標準例)

1指導による指摘に伴う自主返還措置

(1)都道府県は、指定介護サービス事業者等(以下
「事業者等」という。)に対する個別指導において介
護給付等対象サービスの内容又は介護給付費の算定
及び請求に関し不当な事実を確認した時は、当該事
業者等に対し、指摘を受けた事項にかかる自主点検
の指示を行う。この場合、指摘を受けた事項につい
て全要介護者等分の介護給付費明細書等関係書類を
対象に、原則として指導月前1年について自主点検
させ、その結果を都道府県に報告させるものとし、
返還すべき内容が確認されたときは、自主返還の指
示を行う。
(2)都道府県は、該当する保険者に対し、当該事業者
等の名称、返還金額等必要な事項を通知する。
(3)当該保険者は、上記都道府県の通知に基づき、当
該事業者等に対し、国保連合会に返還すべき保険給
付費の自主返還を指導する。
(4)当該事業者等は、国保連合会に介護給付費の不当
請求について自主返還する旨連絡し、介護給付費か
ら返還金額を控除するなど適切な方法により返還を
行う。併せて、要介護者等が支払った自己負担額に
過払いが生じている場合は、要介護者等に過払い分
を返還する。
(5)当該事業者等は、不当請求分にかかる自主返還が
完了したときは、都道府県及び当該保険者に、返還
の内容及び返還金額等について報告する。
なお、一定期問を経過しても返還が行われない事
業者については、都道府県は速やかに監査を実施す
る。

2監査による指摘に伴う返還措置

(1)都道府県は、監査の結果、介護給付等対象サービ
スの内容又は介護給付費の算定及び請求に関し不正
又は不当な事項が認められ、これにかかる返還金が
生じた場合には、当該不正又は不当事項にかかる全
要介護者等分の介護給付費明細書等関係書類を対象
に、原則として過去5年間について返還金を確定し、
返還の指示を行う。
(2)都道府県は、返還金額が確定したときは、当該事
業者等に対し「返還同意書」等必要な書類を提出さ
せる。
(3)都道府県は、該当する保険者に対し、当該事業者
等の名称、返還金額等必要な事項を通知する。
(4)当該保険者は、国保連合会に対して当該事業者等
に支払うべき介護給付費から返還金額を控除させる
よう依頼する。
これにより難いときは、国保連合金から当該保険
者に連絡するものとし、当該保険者は返還金額を当
該事業者等から直接当該保険者に返還させるよう措
置する。
この場合は、当該保険者から当該指定介護サービ
ス事業者等に「納付書」を交付する。
(5)当該保険者は、返還の対象となった介護後給付費
にかかる要介護者等が支払った自己負担額に過払い
が生じている場合には、当該指定介護サービス事業
者等に対して、当該自己負担額を要介護者等に返還
するよう指導する。
また、当該保険者に対しては、当該要介護者等あ
てにその旨通知するよう指導する。
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