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クラリネットのための曲集
クラリネットは18世紀の初めにニュールンベルクの木管製作者デンナーが発明した(ヴァルター編音楽辞典、1732年)という。 「遠くで聞くとトランペットのようだ」というので「小さいトランペット」の意味で「クラリネット」と呼ばれるようになったらしい。 当時のナチュラル・トランペットで高い音域を出すことを「クラリーノ奏法」といい、明るく輝かしい響きがある。演奏会用楽器として18世紀末には定着した。 現行のメカニズムは1843年(ベーム)からだが、音域が広く、柔らかい調子から鋭い調子まで、暗い表情からユーモラスな表情まで、その豊かな表現力と、そして名手シュタドラーのおかげで、モーツァルトは好んで使うようになる。 モーツァルトの美しい用法を見て、ハイドンも晩年には取り入れるようになったという。
以下クラリネットのための(クラリネットを含む)曲をケッヘル番号(第3版)順に並べるが、新全集に従った分類ではなく、単に「クラリネットの曲」を探すときにわかりやすいということで取り上げている曲がある。 音楽の素人にありがちなことと大目に見ていただきたい。
  1. クラリネット四重奏曲 変ロ長調
    ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第34番変ロ長調(K.378)の編曲。 編曲者不詳。 1799年。

  2. K.498 三重奏曲 変ホ長調 「ケーゲルシュタット」
    I. Andante 変ホ長調 II. Menuetto 変ロ長調 III. Allegretto 変ホ長調
    〔作曲〕 1786年8月5日 ウィーン
    ピアノ、クラリネット、ヴィオラの三重奏曲

  3. K.516c (Anh.91) クラリネット五重奏曲 変ロ長調 (断片)
    〔作曲〕 1787年春 ウィーン
    自筆譜は途切れ、後のページが失われた。 断片 93小節が残る。

  4. K.516d ロンド 変ホ長調 (断片)
    〔編成〕 Clarinetto in B, 2 Violini, Viola, Basso
    〔作曲〕 1787年 ウィーン
    Andante 変ホ長調。 断片8小節がピアノ協奏曲第26番(K.537)の草稿の裏に書かれていることから成立時期が推測されている。 前曲と対になると見られていたが、あるディヴェルティメントの草稿らしい。
    東京の前田育徳財団が所蔵する「モーツァルトの自筆スケッチ・シート」に「アンダンテ・ロンド」という表題で譜表が収められ、上記の楽器表示が書かれてているという。

  5. K.516e (Anh.89) ロンド 変ホ長調 (断片)
    Rondo for clarinet, 2 violins, viola, violoncello. (fragment)
    〔作曲〕 1787年 ウィーン
    Andante 変ホ長調の断片で、ケッヘル初版に「追加89」として載ったが、自筆譜はない。 テンポと調性が同じという理由で前曲K.516dに並んで置かれた。

  6. K.580a (Anh.94) アダージョ ヘ長調 (断片)
    Adagio for English horn, 2 horns, bassoon. (fragment)
    〔作曲〕 1783-85年 ウィーン
    Adagio ヘ長調。 提示部は2つの主題を持ち、展開部を欠くという変則的なソナタ形式の28小節の断片。 モーツァルテウムが所蔵する自筆譜には、28小節までは4つのパートがすべてモーツァルト自身により書かれてあるが、第2主題は旋律のスケッチだけしかない。 楽器についてはイングリッシュ・ホルンの記載があるのみで、その他の楽器指定はない。

  7. K.580b (Anh.90) 五重奏曲 (断片)
    Quintet in F for clarinet, basset horn, violin, viola, violoncello. (fragment)
    〔作曲〕 1789年9月 ウィーン
    Allegro ヘ長調、4分の4拍子。 ソナタ形式で書かれた断片 102小節。 シュタドラー兄弟のために。

  8. K.581 クラリネット五重奏曲 イ長調
    Quintet (Stadler-Quintet) in A for clarinet, 2 violins, viola, violoncello
    I. Allegro イ長調 II. Larghetto ニ長調 III. Menuetto イ長調 IV. Allegretto con variazioni イ長調
    〔作曲〕 1789年9月29日 ウィーン
    親友のシュタドラーのバセット・クラリネットを想定して書かれた。 モーツァルト自身が「シュタドラー五重奏曲 Stadler Quintett」と呼んだ。 初演は12月22日ブルク劇場で。初版は1802年オッフェンバッハのヨハン・アンドレ社が刊行。 通常のA管で演奏できるように手直しがされたと推定され、ベーレンライター新全集ではバセット・クラリネット用に復元された。 第1楽章の主題提示をアーベルトは「雲のない春の朝」と評した。

  9. K.581a (Anh.88) クラリネット五重奏曲または協奏曲 イ長調 (断片)
    Quintet in A for clarinet, 2 violins, viola, bass. (fragment)
    〔作曲〕 1789年9月 ウィーン?
    速度表示なし、4分の4拍子の断片 110小節。

  10. K.621b バセット・ホルン協奏曲 ト長調 (断片)
    Concerto in G for basset horn. (fragment)
    〔作曲〕 1791年 プラハ
    詳しいことについては野口秀夫氏の論文「協奏曲楽章 K.584b(621b) 〜バセットホルンとバセットクラリネット」1998
    詳細

  11. K.622 クラリネット協奏曲 イ長調
    I. Allegro イ長調 II. Adagio ニ長調 III. ロンド Allegro イ長調
    〔作曲〕 1791年9月29日〜10月7日 ウィーン
    ウィーン宮廷楽団のクラリネット奏者シュタドラーに。 自作カタログには正確な完成日が記入されていない。 「白鳥の歌」と呼ばれている。

その他、編曲版

モーツァルトの死後、1799年にオッフェンバッハのヨハン・アンドレ社から「3つのクラリネット四重奏曲、作品79」として出版されたもの


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2016/04/24
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