Mozart con grazia > ヴァイオリンのための曲 >
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ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364 (320d)

  1. Allegro maestoso 変ホ長調 4/4 ソナタ形式
  2. Andante ハ短調 3/4 展開部のないソナタ形式
  3. Presto 変ホ長調 2/4 ロンド風の自由なソナタ形式

〔編成〕 vn solo, va solo, 2 ob, 2 hr, 2 vn, 2 va, bs
〔作曲〕 1779年晩夏 ザルツブルク

協奏交響曲 sinfonia concertante というジャンルが当時パリやマンハイムで流行していたので、モーツァルトは並々ならぬ関心をもっていたが、残念なことに、完成されたのはこの1曲のみ。 しかし自筆譜は消失し、作品の成立について何もわからない断片が残るのみである。 このジャンルでほかには、完全に失われた K.Anh.9 (297B) と、やはり断片で残る K.Anh 104 (320e) がある。 なお、この「sinfonia concertante」は「協奏交響曲」と訳されているが、実は「交響曲」ではなく、オーケストラを伴奏にして複数の独奏楽器の名手が自慢の腕を披露する「協奏曲」のことであり、この曲では独奏のヴァイオリンとヴィオラが対等に名人芸を競う。

ヴィオラはニ長調で記譜されているから、半音高く調律すべきであり、従って普通とちがった弦を使わなくてはならないだろう。 ヴィオラはより明るく、より輝かしく響いて、オーケストラのヴィオラ群からくっきり浮き出なくてはならない。 カデンツァは書き上げられている。 それは格別の造形性と簡潔と美に満ちている。 後世にとっての一つの模範であり、警告である。
ヴァイオリンとヴィオラのためのこの二重コンチェルトは、モーツァルトがヴァイオリン・コンチェルトで追求したものの頂点でもある。
[アインシュタイン] p.379
いつどこで作られたかは推測するしかないが、この年の1月15日、夢破れて帰郷したモーツァルトはザルツブルク宮廷楽団のためにこの曲を書いたと思われ、おそらく大司教の目前で大都会パリやマンハイムの最新の流行を見せつけ、溜飲を下げたい気持ちもあったのだろう。 そして演奏会ではモーツァルト自身が指揮しながら輝かしい響きでヴィオラを弾いたに違いない。 そのときヴァイオリンを弾いたのは「大司教コロレドの寵愛を受けていたブルネッティであり、ブルネッティには難しくてヴィオラを弾くことはできなかったろう」と石井宏は評している。
ヴィオラに対するこのような特別な扱いは、独奏にさらにチェロを加えたイ長調 K.Anh 104 (320e) にも共通している。
変ホ長調で弾いているヴァイオリンとは違い、開放弦を使ってニ長調で弾くヴィオラにはより多くの倍音が共鳴する。 こうして通常おだやかな音色のヴィオラに、より輝かしい響きを常とするヴァイオリンと平等な基盤の上に立つことになる。 モーツァルトはすぐれたヴァイオリン奏者であるとともにすばらしいヴィオラ奏者でもあった。 この二重協奏曲では2つの楽器をまったく同等に扱い、提示部でヴァイオリンに与えたものを、再現部ではしばしばヴィオラに与えている。
[全作品事典] p.192
ただし単にヴィオラを目立たせようとしたわけではないことは言うまでもない。 モーツァルト自身はただ名人芸を見せるだけの演奏を軽蔑していたからである。 その一例としてよく引き合いに出されるのは、1781年12月24日に皇帝ヨーゼフ2世の御前で行われたクレメンティ(29才)との競演である。
1782年1月16日、ザルツブルクの父へ
さて、クレメンティのことですが、この人は、律儀なチェンバリストです。 でも、それだけの話です。 右手が非常に達者に動きます。 この人の主な技能は三度でパッサージュを弾くことです。 ともかくこの人には趣味も感情もまったくなく、単に機械的に弾くだけの人です。
[手紙(下)] p.47
となれば、この曲でヴィオラ奏者はより難しい演奏が求められる。

第1と第2楽章にはモーツァルト自身のカデンツァがある。 また、終楽章のコーダでは、後に「音楽の冗談」(K.522)で、熱演する田舎の楽隊のソリストと同じ音型を出しているとの指摘もある。

〔演奏〕
CD [TC-004] t=26'44
ハイフェッツ (vn), プリムローズ (va), ソロモン指揮RCAビクターSO
1956年
CD [PHILIPS PHCP-9629] t=30'30
グリュミオー Arthur Grumiaux (vn), ペリッチャ Arrigo Pelliccia (va), ディヴィス指揮 Sir Colin Davis (cond), コンセルトヘボウ Royal Concertgebouw Orchestra
1964年5月15〜21日、ロンドン
CD [ORFEO C 301 921 B] t=32'30
シュナイダーハン (vn), シュトレング (va), ベーム指揮ウィーン・フィル
1969年8月6日、Salzburg Festival
CD [BVCD-38039] t=29'25
マイヤー (vn), グラーフ (va), コレギウム・アウレウム合奏団
1978年6月
CD [東芝EMI TOCE-7795] t=31'03
ヨゼフ・スーク Josef Suk (vn, va), ノイマン指揮 Vaclav Neumann (cond), チェコ・フィル Czech Philharmonic Orchestra
1979年8〜9月プラハ
CD [DENON 33C37-7507] t=30'33
カントロフ Jean-Jacques Kantorow (vn), メンデルスゾーン Vladimir Mendelssohn (va), ハーガー指揮 Leopold Hager (cond), オランダ室内管 Netherlands Chamber Orchestra
1984年5〜6月、アムステルダム、ヴァールス教会
CD [claves KICC-9308/10] t=30'36
グッリ Franco Gulli (vn), ジュランナ Bruno Giuranna (va & cond) 指揮, パドヴァ室内管 Orchestra da Camera di Padova e del Veneto
1987年4月、パドヴァ
CD [POCG-1095] t=30'59
フィリップス Todd Phillips (vn), ギャラガー Maureen Gallagher (va), オルフェウス室内管 Orpheus Chamber Orchestra
1989年12月、ニューヨーク
CD [POCG-7117] t=30'59
同上
CD [PHILIPS PHCP-9270] t=31'06
ブラウン Iona Brown (vn), 今井信子 IMAI Nobuko (va), ブラウン指揮 Iona Brown (cond), アカデミー Academy of St Martin in the Fields
1989年6月27〜29日、ロンドン
CD [SONY SRCR-9275] t=32'07
リン Cho-Liang Lin (vn), ラレード Jaime Laredo (va), レッパード指揮 Raymond Leppard (cond), イギリス室内管 English Chamber Orchestra
1991年2月1〜2日、ロンドン、EMI Studio No.1, Abbey Road
CD [SONY SRCR 2595] t=30'54
五嶋みどり Midori (vn), 今井信子 IMAI Nobuko (va), エッシェンバッハ指揮 Christoph Eschenbach (cond), 北ドイツ放送交 Norddeutschen Rundfunks Sinfonieorchester
2000年9月、ハンブルク

〔編曲〕
CD [BVCF-5003] (3) t=5'23
ニュー・ロンドン・コラール
1984年

〔動画〕


 

弦楽6重奏

2つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、2つのチェロのための「協奏的大六重奏曲」
GRANDE SESTETTO CONCERTANTE for 2 viorins, 2 violas and 2 violoncellos after Sinfonia Concertante in E-flat

編曲者不明。 1807年ウィーンで刊行。 オリジナルの調性、テンポ、強弱、表情記号はそのまま保たれ、もとのスコアは厳密に守られているという。

〔演奏〕
CD [SONY SRCR 8541] t=28'24
ラルキブデッリ Vera Beths (vn), Gijs Beths (vn), Jurgen Kussmaul (va), Lucy van Dael (va), Anner Bylsma (vc), Lidewij Scheifes (vc)
1990年9月4〜6日、オランダ、ハールレムのルーテル教会

〔動画〕


 

〔参考文献〕

 

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2012/07/08
Mozart con grazia