Mozart con grazia > ホルンのための曲 >
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ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407 (386c)

  1. Allegro 変ホ長調 4/4 ソナタ形式
  2. Andante 変ロ長調 3/8 三部形式
  3. Allegro 変ホ長調 2/4 ロンド形式
〔編成〕 hr, vn, 2 va, vc
〔作曲〕 1782年末 ウィーン

ホルンの名手ロイトゲープ(50才)のための第一作。 彼はザルツブルク宮廷楽団でホルンとヴァイオリンの奏者だったが、1777年からウィーンに移り住んでいた。 レオポルトはマンハイム滞在中の息子に次のように伝えている。

1777年12月1日
ロイトゲープさんは、現在、ヴィーンのさる郊外市にチーズ販売の権利つきのちょっとしたカタツムリ小屋のようなものを信用で買いましたが、おまえと私宛に手紙を書いてきました。 要するにおまえの出発したあとで、彼は私に、彼がチーズの商いでもっとお金がたまるまでじっといつものように辛抱してもらうのを条件に私に支払うことを約束し、おまえからコンチェルトを一曲ほしがっています。
[書簡全集 III] p.309
しかし彼のためにモーツァルトがコンチェルトを書くのは5年後のことであり、断片を除いて、完成されたホルンのための作品としてはこの曲が最初となる。 ただし、自筆譜は1847年3月にロンドンでオークションにかけられて以来行方不明になっているというので、この曲の成立について確実なことはまだ不明とも言える。 のちにモーツァルトは最晩年までにロイトゲープのためにホルン協奏曲を書き残しているが、それらがどういう理由でロイトゲープにとって必要なものだったのかよくわからない。 想像をたくましくすれば、晩年、経済的に苦しくなっていたモーツァルトを見かねて、ロイトゲープは作曲を依頼し金銭的な援助をしていたのだろうか? 最晩年の1791年6月、妻コンスタンツェがバーデンに保養に出ていた間、モーツァルトはロイトゲープの世話になっていたことはよく知られている。

この曲は、作曲者と演奏者の間の打ち解けた気分が反映され、全体に明るく陽気な音楽。 ナチュラル・ホルンという楽器の構造的な制約にもかかわらず、(普通はヴァイオリン2とするところを)ヴィオラ2として、ロイトゲープの豊かな音域に調和させるための工夫がなされ、弦は伴奏役となった(五重奏曲というより)協奏曲の性格がある。 ナチュラル・ホルンはハンド・ホルンともいうが、ロイトゲープはその難しい演奏に優れていた。

18世紀の管弦楽用ホルン---現代のフレンチ・ホルンの祖先---がときにハンド・ホルンと呼ばれる理由は、倍音以外の音を出すために、奏者が楽器の朝顔の中に手を入れる巧みな奏法を必要とするからである。
[全作品事典] p.320

アインシュタインは次のように辛口に評している。

1782年の末にヴィーンで、ザルツブルクのホルン奏者イグナーツ・ライトゲープのために書いた。 モーツァルトの機智のよいおもちゃになっていたこの人物のために書かれたすべての作品と同様に、この曲は半ばおどけたものと解される。 そしてアンダンテの中間楽章が、ホルンと第1ヴァイオリンのあいだの小さな愛の対話という非常に心のこもった楽曲でないとしたら、完全におどけたものになっていただろう。 両端楽章は独奏楽器の不自由さをからかっている。 特にロンド・フィナーレのユーモアたっぷりなファンファーレ・モティーフを聴くがよい。 それは室内楽の伴奏を伴う発育不良なコンチェルトで、カデンツァの機会さえ欠けていない。
[アインシュタイン] pp.270-271
そして「本来は室内楽に入るものではない」この曲に
アンドレとアルタリアの両出版社は、管楽セレナーデ(K.375)の2つのメヌエットの一つを挿入することによって、この曲に室内楽の刻印をおそうとしたがだめだった。
と続けている。 これはすなわち
初期の出版社たちはオリジナル版よりも編曲版で出版することを好んだ。 少なくとも2つの版(ホルンを第2チェロに置きかえたものと、クラリネット2、ホルン2、ファゴット2の六重奏曲の版)が現れた。 これらの版には「メヌエットとトリオ」楽章が挿入されており、一方は『セレナード変ホ長調』K.375から取られ、もう一方は『弦楽三重奏曲』K.563から取られている。
[全作品事典] p.320
という室内楽風の編曲であった。

〔演奏〕
CD [UCCD-9140] t=14'59 ; mono
ブレイン Dennis Brain (hr), グリラー Sydney Griller (vn), バートン Philip Burton (va), ハンプトン Christopher Hampton (vc), ギルバート Max Gilbert (2nd va)
1944年10月、ロンドン
CD [ANC 2014]
※上と同じ
CD [EMI CE33-5517] t=17'08
シュナイダー Bruno Schneider (hr), ヘバルト Erich Höbarth (vn), リーブル Thomas Riebl (va), フューリンガー Siegfried Führlinger (2nd va), エン Susanne Ehn (vc)
1988年、ノイマルクト
CD [KKCC-237] t=17'17
ミュージック・フロム・アストン・マグナ Music from Aston Magna : グリーア Lowell Greer (natural hr, after Haltenhof c. 1770), クァン Linda Quan (vn, Rogeri, Cremona, 1674), マーティン Anthony Martin (va, Kloz, Mittenwald, 1790), ミラー David Miller (va, Albani, Bolzano, 1687), オサリヴァン Loretta O'Sullivan (vc, Wamsley, 1731)
1991年7月、オリオン・ホール
CD [キング KICC 220] t=13'37
シュヴァイガー Wilhelm Schwaiger (Alpenhr), ザルツブルク・モーツァルト・アンサンブル Salzburg Mozart Ensemble
1997年頃
※演奏者、演奏年など詳しいことは不明。 アルペンホルンによる演奏が珍しい。

〔動画〕


編曲版

6重奏曲 (パルティータ) 変ホ長調
  1. Allegro
  2. Andantino
  3. Menuetto
  4. Rondo, Allegro
〔編成〕 2 cl, 2 hr, 2 fg, cb ad lib.
ホフマイスターによる。 メヌエットは弦楽三重奏のためのディヴェルティメント変ホ長調(K.563)の第2メヌエットを借用。

〔演奏〕
CD [MDG 301-0497-2] t=14'47
コンソルティウム・クラシクム
1997年
 


〔参考文献〕

 

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2013/12/24
Mozart con grazia