Mozart con grazia >ピアノ協奏曲集 >
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ピアノ協奏曲 第8番 ハ長調 「リュッツォウ」 K.246

  1. Allegro aperto ハ長調 4/4
  2. Andante ヘ長調 2/4
  3. Tempo di menuetto ハ長調 3/4 ロンド形式
〔編成〕 p, 2 ob, 2 hr, 2 vn, va, bs
〔作曲〕 1776年4月 ザルツブルク
1776年4月
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父レオポルトの弟子だったリュッツォウ伯夫人アントーニエ(Antonie Gräfin Lützow, 1738 -80, 旧姓ツェルニン)に。 リュッツォウ家は大司教コロレドの親戚にあたるザルツブルクの名家で、リュッツォウ伯爵(Johann Nepomuk Gottfried von Lützow, 1742 - 1822)はホーエンザルツブルク要塞の司令官。 アントーニエは彼の二番目の夫人だった。 ピアノを上手に弾いたので、モーツァルトは手加減せずに「自分のために書くのとほとんど同じように」書くことができたという。 また、アントーニエの兄ツェルニン伯爵(Prokop Adalbert Graf Czernin, -1777)はコロレド大司教の甥にあたり、宮廷ではヴァイオリン奏者としても知られていた。彼はそれだけでは物足りず、素人楽団の指揮もしていたらしい。 モーツァルトは彼のためにコントルダンス K.269b を書いている。

モーツァルト自身もこの曲をしばしば演奏していて、第1と第2楽章にカデンツァがのこっている。 1778年1月17日、旅先のマンハイムでは、宮廷副楽長フォーグラーがモーツァルトと知り合いになりたくて自分の方から訪問してきたという。 モーツァルトは彼を「哀れな音楽道化」と嫌っていたが、 そして自分の腕前を自慢したくて、この協奏曲を初見で弾いてみせたことを

食事の前にぼくの協奏曲(K.246)を初見で弾きまくりました。 第一楽章はプレスティッシモで、アンダンテはアレグロで、ロンドはそれこそプレスティッシモです。 低音は大抵書かれてあるのとは違った弾き方をし、時には全然別な和声や旋律などもつけます。 この速さでは、ほかにしようがありません。 目で追うことも、手で捕えることもできないのです。 本当に、これで何だというのでしょう? 初見で弾く、といってもこれは、ぼくから見れば、糞をするのと同じことです。 聴き手は(というのは、聴き手と呼ばれるに値する人たちのことですが)音楽とピアノの演奏を見た、というほかに言いようがありません。 聴き手はそのあいだ、ほとんど聞きも、考えも、そして感じもしないのです、弾き手と同様に。
[手紙(上)] p.112
と父に知らせている。 フォーグラー(Georg Joseph Vogler, 1749 - 1814)はマルティーニ神父の弟子で、作曲家であり理論家として通っていたが、モーツァルトにとっては何も学ぶべきものを持たない、単なるうぬぼれ家。 天才中の天才モーツァルトの前にこのように現れて、歴史に名前が残ることになったのは気の毒としか言いようがない。 その手紙の中でモーツァルトは非常に大切なことを書いている。
初見で楽譜を読むという技術とはどんなことでしょうか? 作品をあるべき正しいテンポで演奏することにほかなりません。 すべての音符、前打音その他を、書かれてある通りの適切な表情と味わいをもって表現し、それを作曲した人自身が弾いているかのように思わせることです。
モーツァルトは、フォーグラーにはよっぽど腹に据えかねたものと見え、2月4日の手紙には、その地で好きになったアロイジアが自分の難しいソナタ(K.279~284)を
ヴェーバー嬢はピアノも下手じゃないです。 ぼくがいちばん感心するのは、楽譜をとてもよく読むということです。 考えてもごらん下さい。 ぼくのむずかしいソナタをいくつも、ゆっくりですが音符を一つも落とさずに弾いたのです。 誓って言いますが、ぼくはぼくのソナタを、フォーグラーが弾くよりこの子が弾くのを聴く方が嬉しいです。
同書 p.114
「ゆっくりではあるが、音符を一つも落とさずに弾いた。フォーグラーが弾くより、アロイジアが弾くのを聞く方が嬉しい。」と率直に語っている。 また、同年2月23日の演奏会でピエロン嬢がこの曲を弾くことを楽しみにしていたという。

1778年6月11日のレオポルトの手紙によると、リュッツォウ伯夫人アントーニエは別の先生(シュピッツェーダー Franz Anton Spitzeder, 1735 -96)についてこの曲を教えてもらっていたが、あるときその練習に立ち会った人が皆「下手くそな演奏だった」と言い、彼女自身にもそれが分かったので、泣きながらレオポルトのところに戻り、自分の気まぐれを悔いて、ナンネルに練習をみてもらったという。

前作「変ロ長調 K.238」と次作「変ホ長調(通称ジュノム) K.271」と三部作を成し、合わせて出版(パリのシベールから)しようとした。 ウィーンに定住してからも、モーツァルト自身がこの曲を演奏する機会を考えていたことが知られているので、重要なレパートリーとして忘れられないものだったのである。 中間楽章のメランコリックな短調部分はモーツァルトならではの味わいがある。 そして終楽章もハ長調でありながら、独特の翳りがある。 そのロンドはウィーンの趣味に合っていたのだろう。

〔演奏〕
CD [LONDON POCL-9430] t=21'48
アシュケナージ Vladimir Ashkenazy (p), ケルテス指揮 Istvan Kertesz (cond), ロンドン交響楽団 London Symphony Orchestra
1966年
CD [deutsche harmonia mundi VD 77560] t=22'39
デムス Jörg Demus (pf), コレギウム・アウレウム Collegium Aureum
1970年6月
CD [TELDEC WPCS-10097] t=23'03
エンゲル (p), ハーガー指揮ザルツブルク・モーツァルテウム
1977年
CD [PHILIPS 32CD-180] t=23'22
ブレンデル (p), マリナー指揮アカデミー
1983年

〔参考文献〕

〔動画〕
[http://www.youtube.com/watch?v=ib5fn0aBaeI] (1) t=7'39
[http://www.youtube.com/watch?v=nYoOinTjIUI] (2) t=7'15
[http://www.youtube.com/watch?v=MqKxgkfKm5M] (3) t=6'52
V.Sofronitsky (fp)
fortepiano by Paul McNulty after Anton Walter
[http://www.youtube.com/watch?v=5Vk26k3dg8I] (1) t=7'18
[http://www.youtube.com/watch?v=tEHjRYvSOso] (2) t=6'46
[http://www.youtube.com/watch?v=eMxNbcK61iM] (3) t=8'23
Christian Zacharias (p), Gianluigi Gelmetti (cond), Radiosinfonieorchester Stuttgart
 


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2011/12/11
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