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レチタティーヴォ「おお、大胆なアルバーチェよ」

アリア「この父の抱擁ゆえに」 K.79

O temerario Arbace - Per quel paterno amplesso
〔編成〕 S, 2 ob, 2 fg, 2 hr, 2 vn, 2 va, vc, bs
〔作曲〕 1765-66年 オランダ

以下の事情で、この曲は1770年2月か3月にミラノで書かれたと考えられていた。

1769年12月13日、13歳のモーツァルトは父に連れられて初めてのイタリアへの旅に出た。 ザルツブルクに帰郷するのは約15ヶ月後の1771年3月28日になるが、この間、ヴェロナ、ミラノ、ボローニャ、フィレンツェ、ローマ、ナポリ、ヴェネツイアなど、行く先々で神童ぶりを発揮するとともに、1763年6月から1766年11月までの西方への大旅行のときと同様の歓迎を受けた。 そしてまた、マルティーニ師に学ぶという貴重な体験もはたした。 この旅行では、モーツァルトは器楽曲の作曲を減らし、とりわけ声楽曲に専念した(オカール)という。 そしてこの曲は、そんな旅行の中で生まれたらしいというのである。 すなわち、1770年1月、ミラノに着いたモーツァルト父子は、芸術家のよき理解者として知られているオーストリア領ロンバルディア地方の総督フィルミアン伯爵(Karl Joseph Graf Firmian, 1759-82)の大歓迎を受けたが、3月13日、父レオポルトはザルツブルクの妻に

ヴォルフガングが、昨日フィルミアーン伯爵のお邸であった演奏会用に、アリアを3曲とヴァイオリン伴奏つきのレチタティーヴォを1曲作曲しなければならなかった。
[書簡全集 II] p.78
と書いていることから、アインシュタインは
  1. アリア「願わくは、いとしい人よ」 K.78 (73b)
  2. アリア「あまたの苦難に会いて」 K.88 (73c)
  3. レチタティーヴォ「おお、大胆なアルバーチェよ」とアリア「この父の抱擁ゆえに」 K.79 (73d)
  4. レチタティーヴォ「哀れなる私」とアリア「哀れ幼な子よ」 K.77 (73e)
と推測し、第6版もその説を支持し、この作品は K.73d という番号で位置づけられていた。 しかし新全集では作品の様式の違いから、「願わくは、いとしい人よ」と「おお、大胆なアルバーチェよ、この父の抱擁ゆえに」の2曲は1765年から66年の間にオランダで作曲されたと改めている。 1770年3月のフィルミアーン伯邸での演奏会用アリア4曲については諸説あり、はっきりしたことはわかっていないし、また2曲(K.78とK.79)の成立についても同様である。

詞はメタスタージオ『アルタセルセ Artaserse』第2幕第11場から。 アルタセルセとはペルシャの王セルセ(クセルクセス)の王子の名前である。 王位を狙ってセルセを暗殺した近衛隊長アルタバーノは二人の王子ダーリオ(兄)とアルタセルセ(弟)の間を引き裂く陰謀を企てる。 そうとは知らず、アルタセルセは投獄されたアルバーチェの裁きをアルタバーノに委ね、死刑が宣告されることになる。 王子アルタセルセにより裁きを下す立場におかれたアルタバーノこそが実は真犯人であり、またアルバーチェの父であった。 しかもアルバーチェは父が王セルセを殺害したことを知っている。 アルバーチェは「ペルシャの運命に幸いするなら、喜んで死に赴こう」と決意し、苦悩に満ちた心情を歌う。

Arbace
Oh, temerario Arbace! dove trascorri?
Ah, genitor, perdona eccomi a' piedi tuoi.
scusa i trasporti d'un insano dolor.
Tutto il mio sangue si versi pur,
non me ne lagno
e invece di chiamarla tiranna,
io bacio quella man che mi condanna.
アルバーチェ
おお、大胆なアルバーチェよ、お前は我を忘れてしまったのか?
ああ、父よ、あなたの足元にいる私を許してください
悲しみのあまり気が狂って行き過ぎたことはご容赦ください
すべての私の血が流されている間に、
私は不平を言うつもりはありません
不合理なことを非難するのでなく
私は私を殺そうとする者の手にキスしよう
Artabano
Basta, sorgi
purtroppo hai ragion di lagnarti
ma sappi, Oh Dio!
Prendi un abbraccio.
アルタバーノ
もうよい、立ちなさい
もう十分すぎるほどお前には不平の理由がある
しかし、納得せよ、おお、神よ!
お前を抱擁しよう
Arbace
Per quel paterno amplesso,
per questo estremo addio,
conservami te stesso,
placami l'idol mio,
difendimi il mio re.
Placami l'idol mio, ecc.
Per quel paterno amplesso, ecc.
アルバーチェ
父としてのこの抱擁により
この最後のお別れにより
あなたは身を守ってください
最愛の人を慰めてください
私の王を守ってください
最愛の人を慰めてください
父としてのこの抱擁により

〔演奏〕
CD [DECCA LONDON 417-756-2] t=6'37
テ・カナワ Kiri Te Kanawa (S), フィッシャー指揮 Gyoergy Fischer (cond), ウィーン室内管弦楽団 Wiener Kammerorchester
1980年12月、ウィーン
CD [Brilliant Classics 93408/5] t=5'17
European Chamber Soloists, Nicol Matt (cond)
2006年

〔動画〕

 

アリア「この父の抱擁ゆえに」 K.73D

メタスタージョ詞によるアリア「この父の抱擁ゆえに Per quel paterno amplesso」 K.79(K.73d)の初稿。 断片3小節。  


〔参考文献〕

 

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2013/02/10
Mozart con grazia