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セレナード 第6番 ニ長調 K.239

「セレナータ・ノットゥルナ」

  1. Marcia : Maestoso ニ長調 行進曲を組み込んだソナタ形式
  2. Menuetto ニ長調 メヌエットとトリオ
  3. Allegretto ニ長調 ロンド形式
〔編成〕 2 vn, va, cb; 2 vn, va, bs, timp
〔作曲〕 1776年1月 ザルツブルク

楽器編成は2群に分かれ、第1オーケストラはヴァイオリン2、ヴィオラ、コントラバスの独奏群、そして第2オーケストラは、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、バス(チェロ)、トランペットなしのティンパニだけという稀な用例となっていて、それらが互いに交替するバロックのコンチェルト・グロッソの形式。 独奏のバスはチェロではなく、コントラバスが用いられていて、第2オーケストラのバスと重なり、より鋭さが増している。 さらに、ティンパニが効果的に響き、曲全体に力強い推進力となって働いていることにも新鮮な驚きがある。 ザスローは次のように解説している。

この曲の特別な音色は、少なくとも部分的にはティンパニから生まれている。 ティンパニは、2本のトランペットにバス音を添えるという通常の役割から解放され、異例な活躍を見せる楽器へと昇格させられている。
[全作品事典] pp.295-296
管楽器が登場しないこともこのセレナードの特徴である。 彼のザルツブルク時代のセレナードを並べてみると、

楽章数編成作曲年と目的関連する行進曲
第1番 ニ長調 K.100 (62a)管と弦1769年、大学の祝典用?
第3番 ニ長調 K.185 (167a)
「アントレッター」
管と弦1773年フィナールムジーク
ウィーンで作曲
K.189 (167b) ニ長調
第4番 ニ長調 K.203 (189b)管と弦1774年K.237 (189c) ニ長調
第5番 ニ長調 K.204 (213a)管と弦1775年フィナールムジークK.215 (213b) ニ長調
第6番 ニ長調 K.239
「ノットゥルナ」
弦と
ティンパニ
1776年の謝肉祭のため?なし
第7番 ニ長調 K.250 (248b)
「ハフナー」
管と弦1776年K.249 ニ長調
第8番 ニ長調 K.286 (269a)
「ノットゥルノ」
弦と
ホルン
1776年なし
第9番 ニ長調 K.320
「ポストホルン」
管と弦1779年フィナールムジーク?K.335 (320a) ニ長調
となっていて、楽章数が少ないこと、楽器編成、行進曲を組み込んでしまっていることなどの点でこの作品は異質な存在であり、室内楽曲のようである。 同様に「夜の」という意味の「ノットゥルノ」が付いた第8番も異例であり、どちらも複数のオーケストラのかけ合いによって曲を進めるという点で共通する。 よく知られているように、「小さい夜の曲」という意味の「アイネクライネ・ナハトムジーク」が彼のセレナードの最後に登場するが、それも4楽章から成る弦楽四重奏であり、フィナール・ムジークの式典的性格を持った(日中に演奏される)セレナードに対して「夜のセレナード」には別の意味があり、モーツァルトはその違い(区別)を心得ていたのだろう。

1776年1月
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この「夜のセレナード」が書かれた動機はわかっていないが、この年の謝肉祭(1月6日から数週間)のために作曲されたものと推測され、ザスローも「違いない」と確信しているようである。 自筆譜はパリのフランス学士院図書館にあり、父レオポルトの手で「Serenada Notturna」と書かれたあとにモーツァルト自身が「1776年、ヴォルフガンゴ・アマデーオ・モーツァルト、生名ジャナイオ」と記してあるという。 ただし、最近のプラートによる筆跡研究では「Serenada Notturna」という文字はモーツァルトの死後に別人が書いたものであるといい、この曲の「ノットゥルナ」というタイトルについては信憑性が疑われているという。

曲は行進曲を含む3つの楽章から成る。

音響と旋律法の点で、モーツァルトの初期の作品中最も魅惑的な一曲であって、われわれは3つの楽章に補充を加える要求を感じない。 3つの楽章とは、《堂々たる》テンポの行進曲、コンチェルティーノだけのためのトリオを持つメヌエット、そして愛らしい、フランス式の主題を持つロンドである。
[アインシュタイン] p.290
冒頭の行進曲はくっきりしたリズムとファンファーレの断片の連続で、きびきびした印象であるが、野外での行進曲というより音楽通の聴衆に向いている。 伴奏弦のピチカートのささやきと消音されたティンパニの連打とが交唱する効果が素晴らしい。
中間のメヌエットではロンバルディアのリズムなどと呼ばれている逆付点リズムによる優雅で堂々とした曲想で進行する。 トリオに移行する際にト長調に突然変化するあたりはハイドン風の冗談ともいわれる。 独奏楽器だけの静かで伸びやかなトリオが優美で、まさに室内楽の雰囲気である。
終楽章ロンドの主題は陽気なコントルダンス風。 第1ヴァイオリンが歌い出そうとすると、すぐに他が合奏でどんちゃん騒ぎをして、それを何度も繰り返しながら劇が進んでいくような印象がある。 それは当時のザルツブルク人の気質を表わしているという。
ロンドには二つの間奏曲がある。 一番目はきわめてこわばったメヌエット・リズムの短いアダージョで、これが二番目の全く素朴なひなびたアレグロの導入部のように感じられる。 両者ともに異質物であって、ザルツブルクの聴衆によく知られていた引用楽句であったにちがいない。 この引用楽句の解釈がつけば、この作品の目的についてもっと正確な知識が得られるかもしれない。
[アインシュタイン] p.290
このような冗談めかしたロンド楽章には短調の陰りもなく、明るい合奏協奏曲の楽しみを与えてくれながら、あっという間に終る。 全体を通して短い曲の中に様々な工夫が盛り込まれ、かつ無駄な音が一つもないというモーツァルトならではの作品である。

〔演奏〕
CD [DECCA POCL-6027] t=13'03
マーク指揮 Peter Maag (cond), ロンドン交響楽団 London Symphony Orchestra
1959年、ロンドン
CD [ORFEO C 301 921 B] t=13'16
ベーム指揮ウィーン・フィル
1969年、Salzburg Festival
CD [PHILIPS PHCP-10102] t=12'51
イ・ムジチ I Musici
1972年7か9月、スイス
CD [ポリドール F35L-21020] t=13'20
ホグウッド指揮
1983年
CD [POCG 50023] t=13'16
オルフェウス室内管弦楽団 Orpheus Chamber Orchestra
1985年3月、ニューヨーク州立大学、Performing Arts Center
CD [PHILIPS 420 201-2] t=12'42
マリナー指揮アカデミー
1986年
CD [TELDEC 27P2-2240] t=16'11
アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
1987年
CD [ERATO WPCS-11108] t=13'02
コープマン指揮アムステルダム・バロック管 Ton Koopman (cond), The Amsterdam Baroque Orchestra
1988年9月、アムステルダム、フランス改革派教会
CD [WPCS-21106] t=13'02
※上と同じ
CD [ミュージック東京 NSC163] t=12'47
グッドマン指揮ハノーヴァー・バンド
1990
CD [NONESUCH AMCY-19010] t=14'54
クレラメータ・バルティカ Kremerata Baltica
1999年10月、ハンブルク、St. Johannis-Kirche Harvestehude

〔動画〕

〔参考文献〕

 

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2019/01/06
Mozart con grazia