| Mozart con grazia > アリア > ああ、情け深い星たちよ、もし天にいて |
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K.538 アリア「ああ、情け深い星たちよ、もし天にいて」Aria for soprano "Ah, se in ciel, benigne stelle."
■編成 S, 2 ob, 2 fg, 2 hr, 2 vn, 2 va, vc, bs |
歌詞はメタスタージォの「中国の英雄 Regent in China」第1幕第2場から採られた。 アロイジア(ランゲ夫人)のために書いた最後のアリア。 自筆譜の研究で知られるタイソンは、1778年に作曲したものに手を加えたものと推定している。 彼女は、3月7日、ブルク劇場で催された予約演奏会でこのアリアを歌ったと思われている。 その演奏会に先だって、2月26日と3月4日にエステルハージ伯爵邸で演奏会が催され、そこでは、スヴィーテン男爵の監督のもとで、エマヌエル・バッハの「キリストの復活と昇天」がモーツァルトの指揮で演奏された。 事前に二回稽古があったので演奏が優れ、喝采を博したという。 そのときの歌手の中に、ランゲ夫人の名前もある。 このバッハの作品をモーツァルトは3月7日のブルク劇場での予約演奏会に取り上げたのである。 彼はプログラムを面白くするために、急遽この曲を(タイソンの言う「10年前の作品」を)用意して、アロイジアに間奏曲として歌わせたのかもしれない。
この曲がアロイジアのために書かれたものである以上、どうしてもモーツァルトの心情を詮索したくなるものであるが、彼女のために書いた以前のアリアと比べて、アインシュタインは次のような鋭い観察をしている。
われわれは、彼が1778年と1788年のあいだに彼女に捧げたアリアから、彼女の声と能力の性格を、あるいはむしろ、モーツァルトがその性格のなかに持ち込んだものを、正確に読み取ることができる。 マンハイムのアリアは温かみに満ちている。 ヴィーンのアリアのなかでは、モーツァルトはさらに、義姉アーロイージア・ランゲの声と特殊な歌唱技術を生かすやり方を考えている。 この声の持主の心の冷たさを、彼は意識しているのである。その上で、このアリアは「彼女に捧げた最後の犠牲」であるとし、[アインシュタイン p.98]
これは一つの《声楽コンチェルト》だが、その形成に関与しているのは、今度はただ驚くべき熟練者としてのモーツァルトだけである。 このことをわれわれは喜びたい。 なぜならば、このことこそは、あの宿命的な女性に対するいっさいの内的関係が当時終りを告げたことの、輝かしい証拠だからである。と結論づけている。 ただしこれは、アインシュタイン自身がどこかで溜飲を下げたいと思っていた、その気持ちの現れかもしれない。 よく知られているように、この頃、既にモーツァルトはウィーンの聴衆から見放されていた。 予約演奏会に人が集まらなくなっていたのである。 金儲けをするには外国へ行って演奏会を開くか、オペラを成功させるしかなかった。 しかし直前の「ドン・ジョヴァンニ」が成功にはほど遠いものだったことは事実である。 もし順調に演奏会を開催してゆけるなら、彼の好みの歌手たち(当然アロイジアも含め)を使わないはずがない。 彼にはこれで最後にしようという考えはなく、ただ、機会がこれで最後になっただけであろう。[アインシュタイン p.506]
■歌の内容
タタール国の王女リジンガは中国の宰相レアンゴに捕えられているが、宰相の息子とされているシヴェーノを愛している。 その後タタールと中国の間に和平がなり、彼女は中国の皇帝の跡継ぎと結婚させられることになる。 しかし騒乱の間に皇帝の血族の者が全員死んでしまったために誰が帝位を継ぐのか分からない。 シヴェーノはリジンガと別れなければならなくなることを心配する。小瀬村幸子訳 CD[WPCC-4860]
■詞
| Siveno Ah se in ciel, benigne stelle, La pietà non è smarrita, O toglietemi la vita, o lasciatemi il mio ben. Voi che ardete ognor sì belle Del mio ben nel dolce aspetto, Proteggete il puro affetto Che ispirate a questo sen. |
シヴェーノ ああ、情深い星々よ、もし天に 慈悲というものが失われていないなら、 どうか、私の命をお召しになるか 私の愛する人をこのまま私に下さるか、どちらかに。 いつもあのように美しく 私の愛する人の顔を輝かす星々よ、 守って下さい、真の愛を、 あなた方が授けてくれた真の愛を。
小瀬村幸子訳 CD[WPCC-4860]
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■演奏
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CD[UCCG 4118] t=7'45 シュトライヒ Rita Streich (S), マッケラス指揮 Sir Charles Mackerras (cond), バイエルン放送交響楽団 Sinfonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks 1958年9月、ミュンヘン |
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CD[WPCC-4860] t=7'51 グルベローヴァ Edita Gruberova (S), アーノンクール指揮 Nikolaus Harnoncourt (cond), ヨーロッパ室内管弦楽団 The Chamber Orchestra of Europe 1991年8月、グラーツ、ステファニエン・ザール、ライブ録音 |
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CD[GLOSSA GCD 921104] t=7'19 シーデン Cyndia Sieden (S), ブリュッヘン指揮 Frans Brüggen (cond), 18世紀オーケストラ Orchestra of the Eighteenth Century 1998年5月、オランダ、ユトレヒト |
ハインツ・ホリガー評
19世紀の初めにおいて、モーツァルトの器楽作品は余りにも声楽的であり、逆に声楽作品での声の扱いは余りにも器楽的だと繰り返し非難された。 器楽的であると同時に声楽的でもあるモーツァルトの熟練した書法は、2つのアリア K.538 と K.368 に明瞭であり、その独唱パートはオーボエと交換し得る。 もしモーツァルトが晩年にオーボエ協奏曲を作曲したなら、深遠な名人技と至高の抒情的な表情の完全な結合はこのようなものか、との印象を与えてくれる。佐々木節夫訳 CD[PHILIPS 32CD-679]
■演奏
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CD[PHILIPS 32CD-679] t=7'09 ホリガー Heinz Holliger (ob), シリトー指揮 Kenneth Sillito (cond), アカデミー室内管弦楽団 Academy of St.Martin-in-the-Fields 1986年6月、ロンドン |
■引用文献
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