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三重奏曲 ト長調 K.Anh.66

  • Allegro 3/4
〔編成〕 vn, va, vc
〔作曲〕 1789年かそれ以降 ウィーン

断片 100小節。 97小節(展開部の途中)までは全パートが書かれてある。 この曲の成立について従来は、アインシュタインが

われわれから見ると、それは一つの傑作の開始であって、モーツァルトが、彼にとっては数時間の努力にすぎぬと思われる、この作品の完結をなしえなかったことは不可解である。 しかし彼がこの作品を変ホ長調ディヴェルティメント(K.563)のために捨てておいたということが真実らしく思われる。
[アインシュタイン] pp.199-200
と述べているように、1788年9月頃、経済的にどん底の状態にあって、さかんに盟友プフベルクから借金していたので、この曲を借金のお礼と将来の担保として作りかけたが、それを途中で放棄し、かわりに第2メヌエットまで付け加えた大曲 K.563 を書いて、献呈したものと思われていた。 しかしその後、タイソンにより上記の時期と推定され、死によって中断したものとされた。 そうなると変ホ長調 K.563 との関係はなくなり、モーツァルトは別な理由で弦楽三重奏曲を必要としたことになるが、死の年までプフベルクに借金を続けていたので、やはり動機としてはフリーメーソンの同志へのお礼のためかもしれない。
ケッヘル番号は K.563 の直前の K6.562e に置かれていたが、このような事情から 562e という番号は意味がなくなった。 そもそも二重番号は(ケッヘル第6版の番号を廃棄する方向で)なくなる見通しであり、この作品の作品番号(整理番号)には Fr1789g が併記されている。

「3つの弦楽器という編成は、作曲家にとって特別なチャレンジを意味するものであった」(ヴォルフ)と言われ、

四重奏なら、和音を構成する3つの音のうち1つが重複されるため、和音をさまざまに配置することができる。 しかし3つの楽器では、配置が格段に限定される。
(中略)
だからこそモーツァルトは、3つの弦楽器だけで立派にバランスのとれたスコアを書くことを、魅力的な挑戦と見なした。 彼は1788年に、ディヴェルティメント変ホ長調K563によって、事実上、弦楽三重奏曲という新ジャンルを創出する。
[ヴォルフ] p.227
そしてその後にこのト長調の三重奏曲が書かれたが、断片のまま残されることになった。 これもモーツァルトが父レオポルトに言った「作曲はしましたが、まだ書き下ろしていません」という作品の一つだったのだろうか。 しかし断片ながらも作品の価値としては、「完成された前作(K.563)にも太刀打ちできるものである」(ヴォルフ)と評価は高く、またアインシュタインの言うように「一つの傑作の開始」であることは間違いなく、したがって完成されなかった(書き下ろされなかった)ことが惜しまれる。 自筆譜(ケンブリッジ・フィッツウィリアム博物館所蔵)を調べると、インクの色の違いにより作曲に2つの段階があったことが見てとれるといい、モーツァルトが弦楽三重奏曲というジャンルに意欲的に取り組んでいたことがしのばれる。 その内容について[ヴォルフ](pp.227-231)が詳しい。

〔演奏〕
CD [KKCC-4123-4] t=4'11
オランダ・ソロイスツ・アンサンブル
1992年

〔動画〕

〔参考文献〕
Home K.1- K.100- K.200- K.300- K.400- K.500- K.600- App.K Catalog

2019/08/26
Mozart con grazia