K.535a

３曲とも４分の２拍子。ピアノ譜で伝えられてきた。新全集の改訂作業の過程で、ブダペスト国立図書館にピアノ用の写譜「24のコントルダンス」が発見され、ここの I はその第１番、II は第10番イ長調、III は第６番ハ長調に当たることがわかった。しかし「24の」うち第１番から第16番は真作でないと判明。したがってこの３つの田園舞曲のピアノ譜はモーツァルトの作ではないことになる。
ただし「24の」なかにはモーツァルトの真作も含まれており、写譜「24のコントルダンス」については新全集は「同時代の筆写楽譜による」と副題をつけた上で巻末付録に掲載したという。

よく知られているように、モーツァルトは宮廷作曲家の職務として多くの舞曲を書いており、この「３つの田園舞曲（コントルダンス）」は1789年にウィーン新聞に広告が出ているというから、1788年初め頃に田園舞曲「雷雨」（K.534）や「戦闘」（K.535）などとともに作曲されたが失われ、なぜか別人の手になるピアノ譜のみが残ったと考えられなくもない。しかし自作目録には何の手がかりもない。この1784年以降の作品を記録した「目録」はモーツァルトは旅先にも携行し、その都度書き込んでいたというが、なぜか記入漏れになった作品がかなりある（［磯山］p.191）。「雷雨」と「戦闘」は自作目録に記載されているが、この「３つの田園舞曲」についてはモーツァルトは記入し忘れたのだろうか。

〔演奏〕
CD [キング KICC 6039-46] t=2'29
ボスコフスキー指揮 Willi Boskovsky (cond), ウィーン・モーツァルト合奏団 Vienna Mozart Ensemble
1964-65年（エリック・スミス編曲）