Mozart con grazia > ヴァイオリン曲 >
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ヴァイオリンのためのアダージョ ホ長調 K.261

  • Adagio 4/4 ソナタ形式
〔編成〕 solo vn, 2 fl, 2 hr, 2 vn, va, bs
〔作曲〕 1776年終 ザルツブルク

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調(K.219)の第2楽章の代替として、同僚のヴァイオリン奏者ブルネッティのために書いたというのが定説になっている。
1777年9月23日、モーツァルト(21才)は母マリア・アンナ(57才)と二人で就職活動のためパリを目指してザルツブルクを旅立った。 父レオポルト(58才)と姉ナンネル(26才)にとって、これはマリア・アンナとの最後の別れとなった。 彼女は翌年7月3日パリで客死し、帰らぬ人となるからである。 二人が旅立ってすぐ、父はミュンヘンの宿泊先の息子に手紙を書き送っている。 そのうち、1777年9月25日と10月9日の手紙で、レオポルトが「ブルネッティ用のアダージョ」と言及しているのがこの曲であるとされている。

1777年9月25日
ところでカマス色の灰色のズボンを置いていってしまったね。 もしほかに機会がなければ、このズボンは、『アントレッター音楽』、いくつかの『コントルダンス』、ブルネッティのために作られた『アダージョとロンドー』、それにまだほかにも私の手に入るものがあればそれと一緒に配達夫に渡そう。
 
1777年10月9日
管楽器用の宮廷音楽の楽譜がまだそっくりあり、それにブルネッティ用のアダージョの楽譜もあります。 というのは、この1曲は彼にはすこし技巧的すぎたからです。 たぶん、これは私が小さな五線紙に書いて、少しずつ送りましょう。
[書簡全集 III] p.43, p.105
ここに書かれた「アダージョ」というのがこの曲であり、また9月25日の手紙で「ロンドー」とあるのは K.269 だと思われているのである。 アダージョの方には「1776年」と記され、またアダージョとロンドーの2曲が「作品99」として出版されたことから一組の作品と扱われることが多い。 しかしモーツァルトがこの2曲を同じ時期に、同じ目的・意図で書いたかどうかはわからない。 ザスローは、作曲された時期には特に異論を述べていないが、同じ目的かどうかについて否定的で、「2作品がひとまとまりとして意図されたとするのは問題外であり、調性の関係もそれを許さない」と言っている。 そのうえで、このアダージョはヴァイオリン協奏曲第5番イ長調(K.219)の緩徐楽章として当てはまる唯一の作品であると認めている。 しかし、アインシュタインは、レオポルトの「1777年10月9日」の手紙を踏まえて、次のように言っていた。
1776年末、ヴァイオリニストのブルネッティのために、まえのは「彼にとって気取ったものでありすぎたので」、モーツァルトが《大至急で》あとから作曲した新しい中間楽章も、その情のこまやかさと魔法のような音響の微光にもかかわらず、原曲のアダージョの単純さと《無邪気さ》には到達していない。
[アインシュタイン] p.382
よく知られていることだが、モーツァルトは演奏者の力量に合わせて作曲するのは珍しくなかった。 たとえば、テノール歌手アントン・ラーフのためのアリア「もし私の唇を信じないなら」(K.295)について「ぼくは、よく仕上がった服のように、アリアが歌い手にぴったりと合うのが好きです」と言っているように。 この曲もブルネッティに合わせて書き直したのだろう。 なお、後の『コシ・ファン・トゥッテ』(K.588)の「ああ、ご覧、妹よ」の響きがあるとも言われている。
しかし、アインシュタインには、「イ長調コンチェルトの光輝、情のこまやかさ、機智」の点でこのホ長調アダージョはその代替曲として物足りないと言うのである。 この点ではザスローも同じ意見を述べている。
このアダージョが、『協奏曲第5番』の本来の緩徐楽章よりも「技巧的」でないかどうかは、難しい問題である。
(中略)
このアダージョは静かに歌うような調子で始まるが、すぐに音楽的に複雑になり、半音階的な旋律(和声ではない)がある程度以上導入される。 現代人の耳には魅力的であるが、K.219のもとの緩徐楽章より優れているとも思えない。 ともかくこのアダージョがもとの楽章よりも短いことは明白であり、これがブルネッティの要求であったのかもしれない。
[全作品事典] p.190

〔演奏〕
CD [BMG 74321 21278 2] t=8'08
スーク (vn), プラハCO
1972
CD [POCL-3632/3] t=7'32
藤川真弓 (vn), ヴェラー指揮 Walter Weller (cond), ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 Royal Philharmonic Orchestra
1980年、ロンドン
CD [グラモフォン 415-958-2] t=8'03
パールマン Itzhak Perlman (vn), レヴァイン指揮 James Levine (cond), ウィーンフィル Wiener Philharmoniker
1985年6月、ウィーン
CD [claves KICC-9308/10] t=7'42
グッリ Franco Gulli (vn), ジュランナ指揮 Bruno Giuranna (cond), パドヴァ室内管弦楽団 Orchestra da Camera di Padova
1989年5月、パドヴァ
CD [POCL-4178/9] t=6'34
スタンデイジ Simon Standage (vn), ホグウッド指揮 Christopher Hogwood (cond), エンシェント室内管弦楽団 Academy of Ancient Music
1990年8月、ロンドン
※スタンデイジ使用のヴァイオリンは、ストラディヴァリ1708年製「ダンクラ」のコピー(1987年ディヴィッド・ルビオ製作)
CD [Virgin Classics, 7243 5 61576 2 0] t=5'48
ハジェット Monica Huggett (vn, cond)指揮, Orchestra of the age of enlightenment
1991年3月、ロンドン
CD [PHCP-11026] t=3'57
ボッティ (tp), 他
1995
編曲

〔動画〕

 

〔参考文献〕


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2013/10/06
Mozart con grazia