| Mozart con grazia > ピアノ連弾 > ソナタ ニ長調 |
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K.448 (375a) 2台のピアノのためのソナタ ニ長調
■作曲 1781年11月 ウィーン |
完成された唯一の「2台のピアノのための」ソナタ。
弟子のアウエルンハンマー嬢(23才)と11月23日の演奏会で一緒に弾き、大成功を収めた。
アウエルンハンマー邸で催されたその演奏会には、トゥーン伯爵夫人(47才)、ヴァン・スヴィーテン男爵(47才)などが集まり、モーツァルトがこの演奏会のために作曲したというこのソナタは大好評だった。
トゥーン伯爵夫人マリーア(Maria Wilhelmine Thun-Hohenstein, 1747-1800)はウィーンで自立し始めたモーツァルトの重要なパトロンであり、演奏会のためにピアノフォルテを貸してくれていた。
鍵盤楽器にようやくフォルテピアノが登場した頃であり、それを持っている家は限られていた。
モーツァルトはトゥーン伯爵や実業家アウエルンハンマー氏のところに足繁く通い、その新しい楽器の可能性を貪欲に追求していた。
右の写真はモーツァルトが晩年に使っていたフォルテピアノ(アントン・ヴァルター製)である。
この年の3月に父に宛てた手紙には
トゥーン伯爵夫人の家ではもう二度食事をしました。 そして毎日のように出かけて行きます。 この夫人はぼくが今までに見たいちばん魅力のある大好きな婦人です。 そしてそこへ行くと、とても大事にされます。 ご主人は相変らずの変り者ですが、親切な、誠実な騎士です。と書いている。 夫のフランツ・ヨーゼフ(Franz Joseph Reichsgraf Thun-Hohenstein, 1734-1800)もモーツァルトの良き理解者であり、のちの「交響曲リンツ K.425」の作曲に深い縁があることでも知られている。 手紙の中で「ご主人は相変らずの変り者」と書いてあるのは、彼が「磁気催眠術」で有名なメスマー博士(Franz Anton Mesmer, 1734-1815)の熱心な信奉者であり、磁気療法に凝っていたからである。柴田治三郎編訳「モーツァルトの手紙(上)」岩波文庫 p.238
ぼくはほとんど毎日、食事のあと、アウアンハンマー氏の家に行きます。 お嬢さんときたら、まるで化物です! ところが、うっとりするような弾き方をします。 ただ、カンタービレの本当のこまやかな、歌うような味わいが欠けています。 何でもかんでも撮(つま)むように弾いてしまうのです。と書いている。 この頃、モーツァルトはなかなかザルツブルクに(父のもとへ)帰ろうとせず、ウィーンで自分の才能を発揮できる機会を真剣に探し求めていた。 自分の天賦の才能を武器に成功の道を夢見るのは若者として当然の特権であり、それは今も昔も変りない。 そして、大方の親はそれを危ぶみ、安全な道を勧めようとすることも。 モーツァルトにとって、それは音楽的才能であり、誰にも負けない自信があった。 この年はモーツァルトが完全にウィーンで自立することを決心した重大な転機の年であることはよく知られている。 5月16日には同「手紙(上)」 p.287
最愛のお父さん、信じて下さい。 ぼくが理性の命ずることをお父さんに申し上げるのに、男としての強さをありったけ必要とするのです。 しかし、たとえ乞食をする身になっても、あのような主人には、もう仕えたくありません。と書いているが、しかし、すぐ19日には次の「事実上の独立宣言」が書き送られたことを考えると、父と子の間にもはや妥協の余地はまったくなくなってしまったことがわかる。同「手紙(上)」 p.263
お父さんがいつまでもそんな風に考え、そんな風に書くなら、ぼくは金輪際立ち直れないでしょう。 正直なところ、お手紙のただの一行にもお父さんを見いだすことができません! もちろん一人の父親は見られます。 でも、自分自身の名誉と自分の子供たちの名誉を気にかけている父親、愛情に満ちた最上の父親、つまりぼくのお父さんは見いだされません。 しかしそれはすべて夢だったのです。 お父さんも今は目覚めていらっしゃいます。彼の理解者がいる一方で、無関心な人々や、逆に邪魔をする人もいたであろう。 これも世の常である。 今や父レオポルトも邪魔をする側に回ってしまったことを青年モーツァルトははっきり自覚したのであった。 彼が遊び回っているとか、弟子のアウエルンハンマー嬢と結婚するかもしれないとかの噂がザルツブルクの父の耳に届いていた。 7月13日の手紙には同「手紙(上)」 pp.265-266
ヴェーバー家から引っ越すことは、もう以前から考えていたことで、きっと実行されると思います。 フォン・アウアンハンマーの家に泊るはずだったなどとは、誓って申しますが、ぼくの全然知らないことです。 ・・・フォン・モル氏は、なぜか知りませんが、人の悪口を言う人で、特に変だと思います。 いずれぼくが反省して、そのうちザルツブルクへ帰るだろう、ぼくがここを離れないのは、ただ女のためだ、と言っています。 フォン・アウアンハンマー嬢の話では、あの人がどこへ行ってそれを言っても、妙な答を受け取るそうです。 なぜあの人がそんなことを言うのか、どうやら想像がつきます。 あの人はコーツェルホの大の贔屓だからです。 なんという馬鹿な!と書いている。 それらを否定するために、モーツァルトは必要以上にアウエルンハンマー嬢の容姿を悪く言っているのであろう。 上の手紙よりもっとひどいことを書いている手紙もある。 しかし、この「2台のピアノのためのソナタ」にはそんなことを思わせるところは一つもない。 それどころか、レヴィンが「手紙(下)」 pp.5-6
アンダンテは、第1ピアノが主要主題を提示すれば、第2ピアノが8小節の独奏パッセージによって後半を開始するというように、演奏者の間で滑らかな対話が交わされる。 演奏者にも聴き手にも等しく提供する否定しがたい爽快な気分以外に、この作品は25歳のモーツァルトが長らくみずからの品質保証の徴(しるし)としていた丁寧なレトリックや、内容と形式の完璧な均衡を示している。と高く評価しているように、フォルテピアノという楽器で最高のパフォーマンスを引き出す作品に仕上げている。 アウエルンハンマー嬢とはこのほかにも何度も一緒に演奏もしているし、さらに、金のためとは言いながら、彼女のためにソナタ集も作っているので、彼のピアノの弟子の中では特別な存在のように見える。ザスロー編「モーツァルト全作品事典」音楽之友社 p.375
終始《ガラント》である。 オペラ・ブッファのための理想的なシンフォニアの形式と主題を用いている。 その明朗さを曇らせる一片の影もない。 しかし両パートの均斉のとれた配分の技術、戯れる対話、装飾音型の精緻さ、そして楽器の音域の混合と十分な利用における音響感覚などのいっさいが、ぶきみなほど老練なので、一見《表面的》で娯楽的なこの作品が、モーツァルトが書いたもののうちの最も深く、最も熟した楽曲の一つとなっている。といい、「到達しがたい唯一無二の作品である」と絶賛している。 第1楽章主題はクリスチャン・バッハのピアノ協奏曲の主題と類似しているといわれ、これについてアインシュタインは浅井真男訳「その人間と作品」白水社 p.372
疑いもなく、1777年に発表されたヨーハン・クリスティアーン・バッハのピアノ・コンチェルト(op.13, II)の冒頭を想起している。と説明している。浅井真男訳「その人間と作品」白水社 p.195
さらに1784年6月、この曲をウィーン駐在のザルツブルク宮廷顧問官プロイヤー邸で開かれた演奏会では弟子のプロイヤー嬢(16才)と演奏していることも知られている。 この曲の演奏は、やはり男女のペアが似合っているように思う。
■演奏
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CD[POCL-9421] t=22'39 アシュケナージ Vladimir Ashkenazy, フレージャー Malcolm Frager (p) 1964年11月、ロンドン |
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CD[POCG-3407-8] t=24'09 エッシェンバッハ Christoph Eschenbach , フランツ Justus Frantz (p) 1972-74年、ベルリン |
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CD[PHILIPS-422-516-2] t=24'05 ヘブラー Ingrid Haebler, ホフマン Ludwig Hoffmann (p) 1978年2月、スイス |
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CD[VALOIS V4621] t=23'01 バドゥラ=スコダ Paul Badura-Skoda, デムス Joerg Demus (p) 1988年3月、ウィーン |
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CD[ALCD-1073] t=25'40 渡辺順生 Yoshio Watanabe, 崎川晶子 Akiko Sakikawa (fp) 2004年9月、相模湖交流センター |
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