Mozart con grazia > アリア > 「お前に別れを告げる、いとしい人、さようなら」
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アリア「お前に別れを告げる、いとしい人、さようなら」 K.Anh.245 (621a)

編成 B, 2 vn, va, vc, bs
作曲 1788年 ウィーン

ケッヘル初版では K.Anh.245、第3版から K.621a とされ、現在に至っている。 39小節からなる作詞者不詳の謎の小品であるが、おおよそ以下の通りである。
まず、作曲については友人のゴットフリート・ジャカンとの約束があったと思われている。 1787年秋、「ドン・ジョヴァンニ」初演のためにプラハ滞在中、その約束が間に合わないことを(10月15日の手紙で)伝えていた。 初演は29日にあり、大成功だった。 余裕ができたせいか、11月4日の手紙では

帰ったらすぐに例のアーリアをすぐ歌えるように、お渡ししよう。
だが、これはぼくたち二人だけの話。
柴田治三郎訳「モーツァルトの手紙(下)」 岩波文庫 p.133
と約束している。 モーツァルトはプラハで大歓迎されていた。 そして彼を説得し、数ヶ月滞在を延ばしてオペラをもう一つ書いてもらおうとしていたらしい。 モーツァルト自身もその申し出を嬉しく思っていたが、なぜか引き受けようとせず、11月13日にプラハをあとにした。 17日にウィーン着いてみると、15日に宮廷作曲家グルックが世を去っていた。 その後任としてモーツァルトは宮廷音楽家の称号を与えられたが、よく知られているように、年俸はグルックの半分にも満たなかった。 そして「ドン・ジョヴァンニ」はほとんど上演されず、どん底の生活に追い込まれていった。

この曲について、未亡人となったコンスタンツェはのちに(1799年)ジャカンの作(ゴットフリートが声部を、モーツァルトが伴奏のパートを書いた共作)だと言ったが、自筆譜もあり真作と認められている。 また、かつては最晩年の1791年プラハでの作とされていたが、タイソンにより1788年と推定された。 自作目録に記録がないのはジャカンとの約束のせいか。 なお、モーツァルトが「その生涯の残りの陰鬱な時期に、アリアの分野において、彼の歌手たちのために好意で」作曲したことについて、アインシュタインは

もし「ティートの慈悲」(K.621)の時期に属する、バスのための小さなアリア「わたしはお前を引きとめない、おお恋人よ、さらば」がなかったとしたら、あのような好意からの作曲に身をゆだねたモーツァルトの人の好さが悲しまれることであろう。 コンスタンツェは全く不当にも、右のアリアに偽作の疑いをかけている。 しかしこのアリアは実感された素朴さのためにこそ、モーツァルトのアリア作曲の連続を、どんな名人芸的アリアよりも繊細に、立派に終結するのである。
浅井真男訳「その人間と作品」白水社 pp.508-9
と、この曲の真価を(もちろん真作であることも)認めている。 成立時期についてのタイソンの研究により内容を修正しなければならないとしても、その評価そのものの価値は少しも変わらないだろう。 さらに、成立時期が見直されたことから番号も530番近くに位置づけられるものと思われる。

歌詞
Io ti lascio, oh cara, addio,
vivi piu felice e scordati di me.
Strappa pur dal tuo bel core
quell'affetto, quell'amore,
pensa, oh Dio, che a te non lice
il ricordarsi di me.
  あなたを残して行く、愛する人よ、さようなら
しあわせになり、私のことは忘れて下さい
その美しい心から、私たちの愛
私たちの恋を取り去って下さい
考えて下さい、ああ、あなたには
私を思い出すのは許されないことを
 
石井 宏訳 CD[RCA BVCC-715]

演奏
CD[RCA BVCC-715] t=4'51
シュトゥッツマン Nathalie Stutzmann (contralto), スピヴァコフ指揮 Vladimir Spivakov (cond), モスクワ・ヴィルトーゾ室内管弦楽団 Moscow Virtuosi
1994年7月、ノイマルクト、ライトシュタードル
CD[L'oiseau Lyre 458 557-2] t=5'33
スカルトゥリーティ Roberto Scaltriti (Br), ルーセ指揮 Christophe Rousset (cond), Les Talens Lyriques
1996年7・8月、パリ、ワグラム・ホール
 


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2007/07/01
Mozart con grazia